日本特殊陶業 : 生成 AI とBigQuery を駆使して構築する効率的な統合データ基盤を構築

日本特殊陶業 : 生成 AI とBigQuery を駆使して構築する効率的な統合データ基盤を構築
Niterra グループ 日本特殊陶業株式会社(以下、日本特殊陶業)はスパークプラグをはじめとした内燃機関用関連商品、並びにニューセラミック商品の製造および販売を手がける、国際的な総合セラミックスメーカーです。

同社は、これまでも Google Cloud を有効活用されてきましたが、より優れたサービス提供を目指し、 BigQuery を中心とした統合データ基盤を同社内で展開しました。この統合データ基盤を、よりユーザーに有効活用してもらうため、生成AIによる SQL の記述支援を実現しています。

今回は日本特殊陶業グローバル戦略本部 DX 戦略室の寺嶋拓弥氏からのお話を伺い、その取り組みと成果について詳しくご紹介いたします。

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利用している Google Cloud サービス:BigQuery、Vertex AI Codey API、Cloud Run、Dataplexなど

利用しているソリューション:データ分析

Google Cloud 導入前の課題

以下がクラウド上のデータ分析基盤を導入する前に、当社が直面していた課題となります。

データ可視化と分析ツールの不統一性: 社内には多くのデータ可視化、分析ツールが導入されていましたが、これらのツールは機能や使い勝手にばらつきがありました。また、多くのツールはデータをローカルにダウンロードする為だけに使われており、データをプログラムで整形して利活用を行う文化が育っていませんでした。

開発スキルの不足と外部ベンダー依存: 分析用のデータ処理やダッシュボードの開発を都度外部の開発ベンダーに発注するケースが多く、社内に開発スキルを持ったメンバーが少ないといった課題がありました。これにより、今手元にあるデータの見方を少し変えてみる、粒度を変えてみるなどの検証を容易に行うことのできない状況が発生していました。

ライセンス管理とデータの取得手法の非効率性: システム独自でライセンス管理をしているものも多くあり、権限設定、ライセンスの更新、ユーザー棚卸作業などに多くの時間を要していました。また、多くのシステムはオンプレミス環境に構築されており、海外拠点からのデータの取得は国内の担当者に都度共有してもらうなど、非効率な業務フローとなっている領域も存在していました。

Google Cloudの選定理由

弊社は2014年より Google Workspace をグループウェアとして導入しており、部門のメーリングリストによるドライブのアクセス権限管理など、Googleアカウントを使用した権限管理が実現されていました。これにより、既存のユーザーアカウントやプロセスの再設定が不要となり、 Google Cloud を導入ハードルが低い状態で使い始めることができました。

また、BigQuery の高い処理能力とスケーラビリティも、選定の決め手となりました。大規模なデータセットの高速な分析が可能であり、ビッグデータ処理の要求に応えることができます。これは、我々のデータ分析ニーズに対応するために不可欠な要素でした。

さらに、Looker Studioを使ったデータの可視化が可能であることも選定理由となりました。

Google Cloud アーキテクチャ

日本特殊陶業のデータソースは、オンプレミス、データセンター、クラウド、工場など、多岐にわたる場所に存在しています。これらのデータを統合するには、適切なネットワーク経路と、スケーラブルで使い勝手の良い汎用的なデータ連携メカニズムが必要でした。

データ連携には Datastream の他に Cloud Storage や Cloud Workflow など、Google Cloud の多彩なサービスを組み合わせる事によって、イベントドリブンかつサーバレスなデータ連携の仕組みを実現しています。

データの有効活用を推進するため、エンドユーザー向けの公開ポータルサイトは Cloud Run を用いて実装されており、データカタログの参照には Dataplex 、SQL 生成には Vertex AI など、さまざまなサービスとの連携が行われています。

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導入効果とメリット

Vertex AI を導入したことにより、社内のデータ分析と可視化に関するハードルを大幅に下げ、各事業部門がデータ分析を簡単に実施できる環境を整備したことがメリットだと感じています。また、Vertex AI の SQL 生成機能は、SQL だけではなくコード説明も生成してくれるため、SQL の作成プロセスをユーザーに理解させ、スキルを高める効果もあると期待しています。

この機能は、当初英語のカラム名を指定してプロンプトを記載する形で公開予定でしたが、開発ベンダーである株式会社センティリオンシステムの高い技術力により、BigQuery のカラムに対する柔軟な質問や説明項目の質問が実現しました。例えば、「情報システム部員の名前一覧表を作りたい」と質問すると、システムは’情報システム部’を部名称カラムの要素として適宜認識し、対応する SQL クエリを生成してくれます。

また本件が社内での生成 AI サービスの第一弾となっており、社内で生成 AI 活用に興味を持った部門との協業に繋がるなど直接的な効果だけでなく、会社全体の成長に寄与するといった効果もありました。

今後の展望とGoogle Cloudへの期待

今は単一のテーブルに対してのクエリを生成するのみとなっていますが、テーブル同士を組み合わせて使うような SQL のコード作成や BigQuery ML のモデル作成など高度な分析もこの機能によって実施できるようにしていきたいと考えています。

Google Cloud への期待としては BigQuery における生成 AI 関連サービスの充実を期待しています。当社と同じように BigQuery を全社データ基盤としている会社は多いと思います。そこに対して様々な生成 AI 活用テンプレートを用意することで活用が進むのと考え、期待をしております。

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Google Cloud のコメント

現代のビジネス環境において、データ分析と可視化の障壁を低減し、各事業部門がデータ活用を容易に行える環境を整備することは戦略的に不可欠な要素です。生成 AI を積極的に活用することで、組織内でのデータ活用が促進され、さらにスキルレベルの差を埋めることで、持続的な競争優位性を築く手助けを行えると考えております。

BigQuery や Vertex AI など Google Cloud のマネージドサービスを最大限に活用して頂き、日本特殊陶業の課題解決に貢献できることを心より喜ばしく思います。

(Google Cloud Customer Engineer : Shunsuke Ito)


 

日本特殊陶業株式会社
日本特殊陶業はセラミックスを核としたコア技術で、世界中の顧客の期待に応えてきました。今後は世界が抱える課題に向き合い、よりよい社会の実現に寄与するため、環境・エネルギー、モビリティ、医療、情報通信の4つの分野でセラミックスの領域を越えた技術開発、製品開発に挑戦します。

インタビュイー
日本特殊陶業株式会社
グローバル戦略本部 DX戦略室
寺嶋 拓弥

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