職員の「相棒」として ChromeOS を採用した 鹿児島県・肝付町の取り組み

職員の「相棒」として ChromeOS を採用した 鹿児島県・肝付町の取り組み
今後 20 年間で人口が半減するという、深刻な人口減少問題を抱える鹿児島県肝付町。人口減少に伴い職員数も減っていくことが見込まれるなか、「待つ行政」からデジタル活用で職員が積極的に地域へ出ていく「出向く行政」へとシフトするために、柔軟な働き方の実現に着手しました。職員の業務端末として ChromeOS を導入することで、行政機関としての高いセキュリティを確保しながらリモートワークを推進し、町の課題解決につなげる基礎を確立しています。

利用している Chrome Enterprise サービス: Chrome EnterpriseChromebook

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人口減少の町で、持続可能な行政運営実現に必要だったのは「どこからでも仕事ができる環境」

肝付町は、人口減少、少子高齢化への対策として、早期からデジタルを活用して地域の持続的な成長を目指すさまざまな取り組みを打ち出してきました。国が 2016 年に「官民データ活用推進計画」を定めたことも受け、時代の変化に即した自治体 DX の指針として「肝付町情報化基本計画」を立案し、2020~2023 年度の 4 か年計画で取り組んでいます。この基本計画の中では行政サービス向上に向け、デジタル活用による職員の柔軟な働き方の推進が大きなテーマになっています。デジタル推進課 課長補佐の中窪悟氏は次のように話します。

「人口減少に伴い職員数も減少が想定される中、職員の移動負担軽減や地域サービス向上のため、職員は庁舎外でも仕事をし、地域と接点を増やす必要があります。そのためには、庁舎を離れて仕事できる環境が必要でした」

肝付町では従来、いわゆる「α(アルファ)モデル」で三層分離を実現してきました。シンクライアント端末で LGWAN 系ネットワークに接続し、インターネット利用は画面転送で対応。インターネットに接続できる外部使用向け端末もあったものの数が限られ、リモートワークは「特別なもの」と考えられていました。「従来の端末は、調達してから実際に利用できるまでの時間とコストがかかっていました。柔軟な使い方を実現するには、設定やシステム変更がしやすく、端末のTCO(総所有コスト)も抑えられる端末が必要だったのです」(中窪氏)

職員と地域の結びつきをサポートするツールに ChromeOS を採用

2020 年末、自治体内ネットワークとインターネットの接続、及びクラウド活用を認める「β’(ベータダッシュ)モデル」が登場したのをきっかけに同町でも移行を決め、柔軟なリモートワークを可能とするクラウドを中心としたゼロトラスト セキュリティの環境整備に乗り出します。その環境の柱になる新たな端末として着目したのが ChromeOS です。

「職員が減少する状況下で、セキュリティを高めたうえで調達しやすく、管理負担も少ない端末への移行は必須でした。その点、ChromeOS デバイスは、Chrome Enterprise Upgrade (ChromeOS を管理するためのライセンス)と共に使うことで、端末配備の作業がほぼ不要で管理面・費用面の負担が軽減されるのはもちろん、セキュリティ性が高いのも魅力です。Google Workspace と BeyondCorp Enterprise(Google が提供するゼロトラスト ソリューション)を併せて導入することで、多様なベンダーのツールを組み合わせることなく、業務とゼロトラストを Google のソリューションのみでシンプルに完結できるところも高く評価しました」(中窪氏)

2021 年 7 月頃から、まずはデジタル推進課で ChromeOS の検証を開始。パフォーマンスやセキュリティについても検証した上で、2022 年 4 月に ChromeOS の採用を正式決定しました。

ChromeOSと創る新しい環境が、端末の管理負担削減と職員の働き方改善に大きく貢献

2022 年 7 月に 300 台の Chromebook (ChromeOS Flex 含む)と Chrome Enterprise Upgrade を導入し、12 月から一部のシンクライアント端末と置き換えて運用を開始しました。従来は端末の初期設定作業を外部業者に委託していましたが、C hromeOS デバイスであれば、デジタル推進課の職員だけで約 300 台の端末を簡単に設定でき「専門知識やスキルがなくても設定には僅かな時間しかかからず、時間的なコストも大きく削減できました」と中窪氏。コスト面においても、従来は 1 台あたり端末購入と外部に委託する端末の初期設定作業・保守メンテナンス費用を合わせて 5年間で 40 万円程度だったものが、ChromeOS デバイスは端末本体の 10 万円を切る価格のみでトータルコストが大きく削減され、管理にかけていた人的コストも確実に減っていると一松氏は話します。

また、ChromeOS 導入により、職員の働き方も変わり始めたといいます。これまで役場の外で業務を行う場合は、外部使用向けの共有端末を借り出さなければなりませんでした。しかし、導入後は役場内外を問わず、いつもと同じ端末で自分の職場環境を持ち運べるようになりました。

「ChromeOS デバイス片手に移動する職員をよく見かけるようになり、リモートワークも自然に行える環境に変わっていきました。業務で使用するツールが Google Workspace に統合されたことでログイン等も手軽になり、共同編集の便利さを評価する声も上がり、ペーパーレスのメ リットも生み出しています。以前の OS から ChromeOS への移行もスムーズでした」と一松氏。

「ChromeOS 導入を機に、“従来の延長” ではなく “新しい環境” になったという意識を大切にし『会議資料の印刷はそもそも必要なのか』といったペーパーレスの意識変革などにも力を入れていきたいですね」(中窪氏)

ChromeOS は持続可能な地域づくりを進める肝付町職員の「相棒」

「今回の導入によって、シンクライアント端末とさまざまな業務ツールを組み合わせるスタイルから、Google のソリューションだけで完結するエコシステムに変わりました」と中窪氏。これにより職員に対して「DX への転換期」だというメッセージを発信でき、意識変革に好影響が生まれる手応えを感じています。

業務のデジタル改革はそれ自体が目的ではなく、あくまで「地域との協働を促進し、持続的な地域づくりを行う」という目的の実現に向けた手段であり、ChromeOS もそのためのツールであると中窪氏は強調します。

「ChromeOS デバイスは、職員のフットワークを軽くさせるもので、地域に出ていくことが増えるであろう職員の “相棒” として最適だと感じています」(中窪氏)

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肝付町では職員だけでなく、議員にも町が管理する ChromeOS デバイスを配布しており、Google Meet を用いた Web 会議などデジタル活用による働き方の改革を進めていく予定です。肝付町の未来づくりを支えるツールとして、ChromeOS の活用を更に広げていくと、中窪氏は力を込めて語りました。


 

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肝付町
鹿児島県南東部・大隅半島の太平洋側に位置する肝付町は、2005 年に 2 つの町が合併して誕生した。広い町域には JAXA(宇宙航空研究開発機構)のロケット打ち上げ施設・内之浦宇宙空間観測所があることでも知られる。デジタル化の着手も早く、2009 年に町内全域で光ファイバー網を整備。その利活用も含めたデジタル活用推進の基本方針として 2011 年に策定した情報化基本計画を改定し、現在は自治体 DX の推進計画としている。

 

(導入台数)
Chromebook
約 300 台

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インタビュー担当者様
鹿児島県 肝付町役場
デジタル推進課 課長補佐
中窪悟氏

 

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