中日新聞社: グループ各社の顧客データを集約した データ基盤をクラウド上に構築

中日新聞社: グループ各社の顧客データを集約した データ基盤をクラウド上に構築
株式会社 中日新聞社(以下、中日新聞社)では、地元企業や自治体などとの連携を通じて、価値ある情報やサービスを提供する構想 SCOOP(Services of Chunichi Open Operation Platform)プロジェクトを推進。その一環として、中日グループ各社がそれぞれ個別に顧客サービスを提供するのではなく、ワンストップでサービスを提供するための「中日カスタマー データ プラットフォーム」(CDP)を構築しています。この中日 CDP の構築プロジェクトについて、中日新聞社の取締役をはじめ、 中日CDP 構築プロジェクトメンバー、およびプロジェクト推進をサポートしたフューチャーアーキテクト株式会社(以下、フューチャーアーキテクト)の担当者にお話を伺いました。

利用しているサービス:
BigQueryCloud Data FusionCloud Composer, Cloud Functions

利用しているソリューション:
Data Warehouse Modernization

短期間で会員データを 1 つに集約する CDP を構築し、 BigQuery が使える Google Cloud を採用

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名古屋(愛知県)を中心に、東京、北陸、東海の 4 つの拠点で、中日新聞、東京新聞、中日スポーツなど 7 銘柄の新聞、合計約 272 万部(2022 年下半期)を発行し、個人定期購読者向けの会員ウェブサービス「中日新聞プラス」の登録者数が 45 万人(2023 年 1 月現在)に上る中日新聞社。新聞の発行だけでなく、国内外のアートを集めた美術展の開催や、女性だけの国際マラソン「名古屋ウィメンズマラソン」といった地域に密着した活動も展開しています。

取締役 経営企画担当の久野 哲弘氏は、「創業から 130 年以上、新聞社としての情報発信という仕事は変わっていませんが、いかに地域の皆さまに継続してサービスを提供していくかが重要です。既存の購読者を大事にすることはもちろん、年間 7,000 を超えるイベントや文化教室などで新たな価値を提供し、これらのサービスを利用していただくことで新規のお客様を増やしていくことも重要な取り組みになります」と話します。

そのためには、先述した中日グループが提供する各種サービスをはじめ、地域活性化のための活動にグループ各社のデータを統合して活用することが必要です。そこで各社の顧客情報を一元管理し、グループ全体で活用するためのデータ基盤となる CDP を構築することが急務だったのです。

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経営企画室秘書部の中尾 吟氏は、「以前は、グループ各社が必要なデータをそれぞれ集めてデータ分析を行っていたため、中日グループ全体としての状況を把握しにくいことが課題でした。各社のデータを統合し、1 つのデータ ウェアハウス(DWH)でデータ分析をし、全社で活用したいとの考えは、以前から多くの人が唱えていました。中日新聞グループ関連の催事などのチケット販売会社(株式会社ブギウギエンタテインメント、「Boo-Wooチケット」)が、2022 年 11 月のジブリパーク開業に向けて設立されたこともあり、さらに大量のデータが集まることが予想されたなか、この機を逃すと課題をずっと改善できないのではないかとの声が強まり、プロジェクトがスタートしました」と話します。

中日 CDP の構築は、2021 年末より検討を開始し、開発・運用基盤として Google Cloud を採用。 2022 年 4 月より CDP の構築を開始して、11 月 に本番稼働しています。Google Cloud を採用した理由について、中尾氏は次のように話します。「各社のクラウド サービスを比較検討した結果、短期構築が期待できること、データ分析に最適な BigQuery が利用できることなどを評価して Google Cloud の採用を決めました。また全社的に Google Workspace を利用していますが、Google アカウントでさまざまなシステムと連携できることも採用理由の 1 つでした。」

中日 CDP の構築は中日新聞社におけるグループ経営のスタート地点

中日 CDP は、グループ企業のうち 4 社の会員(Boo-Woo 会員、中日新聞プラス会員、中日ドラゴンズ ファンクラブ会員、中日文化センター会員)のデータを蓄積し、そのデータを使って顧客の動向を詳細に把握したり、効果的なマーケティング活動に利用したり、新たなサービスの創出に活用したりすることで、サービス間の相互送客、顧客サービスの向上や新規顧客開拓などの効果をグループ 内に還元するための仕組みです。登録された利用者の個人情報は、あらかじめ各社が共同利用することについて同意を得ており、その取り扱いには慎重を期すことはもちろん、安心してお客様にメリットを提供するサービスを目指しています。

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顧客動向の詳細な把握について、経営企画室 経理部 SCOOP プロジェクト BI(Business Intelligence)リーダーの大薮 寛之氏は、「以前は、中日新聞のお客様の構成を漠然としか把握できなかったのですが、コネクテッド シートを利用することで、居住地や世代、性別の観点や、人口比に対するリーチ率など、注力すべきセグメントを可視化できました。例えば、これまで新聞社の顧客の多くは高齢の男性だと想像していましたが、グループ横断でとらえると、女性が全体の約 3 分の 2を占め、若い人たちも多い ことがわかりました。また、行動・購買履歴から、ロイヤルティーの高いお客様のデータも可視化できたので、さらなる顧客満足度の向上に取り組むこともできます」と話します。

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また効果的なマーケティング活動への利用について、経営企画室 新規事業部 SCOOP プロジェクト MA(Marketing Automation)リーダーの本宿 達也氏は、「中日 CDP のデータを使い、メール配信システムで約 100 万人のメール配信可能な会員に毎週キャンペーン メールを配信しています。ポイントは、あえてターゲティングせずに、すべての会員にメールを配信することです。ゼロからのスタートだったので、さまざまな情報に対してメール受信者がどのようなリアクションをするのかを把握するためで、これにより、短期間に 100 人以上の新規会員を獲得できたり、子ども向けイベントの参加者が数時間で定員に達したり、アンケートに半日で 1,000 件以上の回答を得られたりといった効果がありました」と話します。

中日 CDP の全社的な効果を、久野氏は次のように話しています。「今後、中日グループとして、グループ経営の強化が必須です。これまでは、各社がばらばらにお客様にアプローチしてきましたが、グループ全体で相乗効果を発揮できる取り組みを推進しなければなりません。グループ経営の強化にはデジタルだけでなく、アナログな取り組みも必要ですが、その一環として中日 CDP を構築できたので、これをグループ経営実現に向けたスタート地点にしたいと考えています。」

7 か月で中日 CDP を構築、Google Cloud は初めての利用でも直感的に使える優しいシステム

今回の中日 CDP の構築は、フューチャーアーキテクトがサポートしています。フューチャーアーキテクトは、システム構築だけでなく、システムを構築して何をしたいのか、そのためには何が必要かといったグランド デザイン策定から中日 CDP 構築プロジェクトに参画しています。中日 CDP 構築パートナーとしてフューチャーアーキテクトを選定した理由について、中尾氏は次のように話します。

「フューチャーアーキテクトは、Google Cloud を採用したシステム構築の経験と実績を踏まえたソリューションとして全体構想をしっかりと提案いただいたたことが選定の最大の理由でした。グループ 4 社のデータソースをそろえるのは非常に煩雑な作業で、連携先システムの状況によりスムーズにいかない場合もあり、簡単には進まない工程です。それらの調整も含めて粘り強くサポートしてもらえたので本当に助かりました。」

中日 CDP のシステム構成は、DWH に BigQuery を採用し、データ連携には Cloud Data Fusion と Cloud Composer の 2 つを利用。単純なパイプラインには Cloud Data Fusion を使い、ワークフロー制御や外部システムとの連携には Cloud Composer を使っています。 BI ツールに関しては、スプレッドシートをベースにコネクテッド シートを採用。 MA に関しては、他社のメール配信サービスを利用しています。

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Google Cloud の導入効果を、フューチャーアーキテクト Technology Innovation Group DXチーム チーフアーキテクトの宮崎 将太氏は、「中日 CDP は実質 7 か月で構築しましたが、この規模の開発としてはかなり短期間でできたと思います。短期開発を実現できた理由の 1 つが BigQuery の採用です。スケジュールに大きく影響する性能テストで、10 分程度処理する必要のある複雑なクエリが、BigQuery ではまったくチューニングをしない状態で 1 分程度で完了しました。他 DB を使用した場合、同様のコンディションで処理しようとすると恐らくチューニングに数日は時間を要することになっていたかと思います。また、性能以外にも、標準 SQL にかなり近しいクエリが書けた点もスケジュールの短縮に寄与したかと思います」と話します。

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また、同社 Technology Innovation Group シニアコンサルタントの古草 晨人氏は、「BigQuery は、信頼性、安定性はもちろん、データ分析の構築・ 運用コストや価格性能比においても効果を発揮できます。コンソールの使い勝手もよく、細かな設定をすることなく性能を発揮できるのも魅力です。BI ツールとしてスプレッドシートをベースにしていますが、Google Workspace との高い親和性も Google Cloud のメリットでした」と話します。

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フューチャーアーキテクトのサポートについて、中日新聞社 経営企画室経営システム部次長 兼 新規事業部の仙波 功介氏は、「Google Cloud の利用は初めてで、知識ゼロからのスタートでしたが、直感的に使える優しいシステムでした。フューチャーアーキテクトには、環境設定や権限設定、ユーザー設定などの基本設定の段階から、本当に親身にサポートしてもらえました。今後も地域事業の取り組みや中日 CDP の機能強化などもあるので、同様のサポートを期待しています」と話します。

今後の展望について久野氏は、「社内にあるさまざまなデータを可視化して経営判断に生かすことも重要です。多くの社員がコードや SQL を記述するのはハードルが高いので、扱いが容易なツールを使い、各現場でデータを可視化できるようにと考えています。こうした取り組みがデータドリブン経営への第一歩であり、社内の意識変革も含めて、Google Cloud やフューチャーアーキテクトの今後のサポートに期待しています」と話しています。

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