なぜアステラス製薬は「フルクラウド」を実現した? 2027年問題を解決した方法

なぜアステラス製薬は「フルクラウド」を実現した? 2027年問題を解決した方法

なぜアステラス製薬は「フルクラウド」を実現した? 2027年問題を解決した方法

全社横断的な基幹業務プラットフォーム「Apple」を構築

須田 真也氏(以下、須田氏):これまで「バリューチェーンのあらゆる領域でデータドリブンを目指す」戦略について副社長とともに説明しましたが、これは経営に関しても同じです。私も情報システム部門の立場から「データ駆動型経営」実現に向けて、2016年から基幹システムを刷新し、グローバルで統合するプロジェクトを進めてきました。

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基幹業務プラットフォーム「Apple」のプロジェクト実施期間

(出典:アステラス製薬)

それまで日本や米国、ヨーロッパの地域別に存在していた基幹業務システムとしてのSAPを「SAP ECC(ERP Central Component)」から「S/4 HANA」へバージョンアップを図ると同時にグローバルで統合し、さらにそのシステム環境を「Microsoft Azure」のクラウド基盤へ移行するプロジェクトです。いわばグローバル規模で「フルクラウド」を目指したわけです。

グローバルでマスターデータやオペレーションを共通化し、すべてのトランザクションを1カ所に集めることで、データを会社の資産として蓄積できます。そのデータを基に、今まで以上に精度の高い予測を行い、戦略的な意思決定につなげることが狙いでした。

加えて、人事や会計、調達、サプライチェーン・マネジメント(SCM)などのシステムをグローバルで統合したわけですが、その際、業界標準に近づけるためカスタマイズは極力抑えるようにし、業務をアウトソースし効率化を図ることも、このプロジェクトの目的としてありました。

SAPのバージョンアップ、グローバル統合、業界標準適合、アウトソースという4つを同時に1つのプログラムとして進め、しかもそれを日本や米国、ヨーロッパの3極の導入まで完了した製薬会社 は、世界でもまだ例が非常に少ないと聞いています。

この新基幹システムは、社内では「Apple」と呼んでいます。これは何かの略ではなく、「アダムとイブ」からインスピレーションを得て「新しい世界を始める」という意味を込めた呼称です。

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全社横断的な基幹業務プラットフォーム「Apple」の構築

(出典:アステラス製薬)

前倒しでの「SAP刷新」、経営層を説得できたワケ

須田氏:始まりからお話しすると、我々は2012年にシステム運用体制を地域別の運用からグローバル運用へ再構築しました。

その際、SAP ECCのカスタマイズ状況やアドオンの数を調査したのですが、非常に数が多く、そして年1回、四半期に1回程度しか使われていないアドオンがかなりの数に上りました。私はそれを早くやめたいと思っていたということが前提としてあります。

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