ZOZO:A/B テストの結果 Recommendations AI により ZOZOTOWN 全体の注文金額、注文数、商品閲覧数で 101% 以上の効果を達成

ZOZO:A/B テストの結果 Recommendations AI により ZOZOTOWN 全体の注文金額、注文数、商品閲覧数で 101% 以上の効果を達成

ZOZO:A/B テストの結果 Recommendations AI により ZOZOTOWN 全体の注文金額、注文数、商品閲覧数で 101% 以上の効果を達成

1,500 以上のショップ、8,500 以上のブランドで、常時 90 万点以上のアイテムを提供し、毎日 2,600 点以上の新着商品を掲載(2022 年 6 月末現在)している日本最大級のファッション EC ZOZOTOWN を運営する株式会社ZOZO(以下、ZOZO)。膨大な商品の中から、ZOZOTOWN の利用者に「おすすめアイテム」を推薦するための仕組みに Recommendations AI を採用しています。推薦システムの導入プロジェクトについて、推薦基盤ブロックのブロック長、およびエンジニアに話を伺いました。

利用しているサービス:

Recommendations AIBigQueryApp EnginePub/SubDataflowCloud BigtableGoogle Kubernetes EngineGoogle Tag Manager

Recommendations AI の導入で AI / ML の全社的な取り組みを推進

ZOZOTOWN をはじめ、日本最大級のファッション コーディネート アプリの WEAR、身長と体重を選択するだけで理想のサイズが購入できる MS(マルチサイズ)、ブランド古着のファッション ゾーン ZOZOUSED など、ファッションとテクノロジーをかけ合わせたサービスの提供により、時代の先端を走り続けている ZOZO。商品取扱高は 5,088 億円、年間の購入者数は約 1,041 万人にのぼります(2022 年 3 月末現在)。

ZOZO の強みを推薦基盤ブロックの佐藤 優羽氏は、「長年培ったファッション領域における経験や実績、ノウハウ、知見が差別化のポイントです。また、常に最先端のテクノロジーを採用して、ファッションとテクノロジーをかけ合わせた研究に取り組んでおり、ZOZOTOWN をはじめとする、すべてのサービスでデータ連携によるシナジー効果が得られることも強みの 1 つです。ファッションに理解のある社員が多いことも、洗練された UI やトレンドに応じた企画力などにつながっています」と話します。

テクノロジーの分野では、AI / ML の全社的な取り組みを推進。推薦や検索、マーケティング オートメーション、不正検知など、さまざまな領域で活用されています。商品画像とコーディネート画像や商品情報を表すテキスト、ユーザーの行動履歴などの膨大なデータが蓄積されているデータ基盤を持っていることも強みの 1 つ。自社で ML モデルの構築からシステム開発、リリース、運用までをワンストップで実現できます。こうした技術を、テックブログやオープンソース コミュニティに発信することで、技術力をアピールするとともに人材の採用にもつなげています。

推薦基盤ブロック ブロック長の寺崎 優希氏は、「推薦基盤ブロックの上に ML・データ部があり、現在 30~40 名のエンジニアがいます。それ以外にも、生産側の需要予測などの分析で AI / ML を使っているチームも合わせると 60~70 名になります。現在は ML の領域ごとにチームが構成されているため個別最適な状態になっていますが、チーム横断で利用する ML 基盤を構築することで全体最適化を目指しています。ML 基盤の構成要素の一つとして、推薦システムで利用する ML モデルに Recommendations AI を採用しました」と話しています。

自社開発の推薦モデルとの A/B テストで Recommendations AI を採用

Recommendations AI の導入は、2019 年 4 月より検討を開始し、12 月に採用を決めています。導入の背景として、ZOZOTOWN の商品をユーザーごとにパーソナライズしていくという方針が全社的に進んでいたことが挙げられます。ZOZOTOWN では「おすすめアイテム」や「人気ランキング」、「最近チェックしたアイテム」などさまざまな見せ方で商品をアピールしています。

寺崎氏は、「ZOZOTOWN でのパーソナライズを進めるにあたり、ホーム画面や商品詳細面など様々な商品の表示枠を分析し、パーソナライズを行う枠の優先順位をつけていきました。その結果、まずは商品詳細面の『おすすめアイテム』枠から着手していくことになりました。この枠で使われている推薦ロジックはルールベースをもとに独自に開発した仕組みを利用しており、ユーザーごとにパーソナライズされている状態ではありませんでした。」と話します。

ビジネス的な課題としては、ZOZOTOWN の推薦商品表示に ML モデルを導入してユーザーごとのパーソナライズをすることで、ユーザー体験を向上させる余地が十分に残っていたもののタイミング的に実現できていなかったことが挙げられます。一方、システム的な課題として、研究領域において深層学習を使って推薦していく仕組みが 2019 年ごろから広く利用されるようになっていましたが、独自に開発すると時間と工数、コストがかかることから ZOZOTOWN では導入できていませんでした。

佐藤氏は、「深層学習ベースの推薦技術を検証したいと考えていましたが、同時にスピード感をもってルールベースのリプレイスも進めたいと考えていました。ML モデルやサーブのシステムを自社で開発すると時間とコストがかかるので、すでに他社での導入事例がある Recommendations AI の採用を検討しました。検討にあたり、自社開発の推薦モデルとの A/B テストを実施して Recommendations AI の採用を決めています」と話します。

自社開発の推薦モデルと Recommendations AI による A/B テストは、2020 年 6 月より開始。途中でテストを中断した時期があったり、何度も試行錯誤をしながら、スマートフォン用サイトの ZOZOTOWN に Recommendations AI を導入した推薦システムを 2022 年 6 月に展開、パソコン用サイトの ZOZOTOWN には 2022 年 8 月に展開しました。Recommendations AI を採用した理由を佐藤氏は、次のように話しています。

「A/Bテストの結果、自社開発の推薦モデルと比較して Recommendations AI は、推薦経由の商品閲覧数 217.03%、注文金額 262.21% と効果を十分に実感できました。ZOZOTOWN 全体の指標としても、注文金額 101.29%、注文数 101.69%、商品閲覧数 105.76% という A/B テストの結果になりました。フルマネージド サービスなのでシステムの管理が不要で、運用コストが下がることが Recommendations AI を採用した理由でした。」

開発規模に対して少ない開発人数と開発期間で推薦システムを実現

Recommendations AI では、商品情報とユーザー イベント情報の 2 種類のデータが必要で、まず商品情報は BigQuery に対する更新情報を App Engine で取得して Pub/Sub に取り込み、Dataflow で Recommendations AI と Cloud Bigtable に書き込んでいます。

また、ユーザー イベント情報は Google Tag Manager を使ってウェブのユーザー イベント情報を抽出し、Recommendations AI に取り込みます。ユーザーからリクエストが来たときには、Google Kubernetes Engine(GKE)にデプロイされている推薦 API を介して、ユーザーが閲覧している商品に対して推薦する商品 ID を Recommendations AI から取得します。その商品 ID をもとに、Cloud Bigtable に登録された商品情報を返す構成になっています。

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