東洋大学:約 30,000 人の学生が利用する教育 DX サービスに Google Cloud を採用、わずか 4 か月でローンチ

東洋大学:約 30,000 人の学生が利用する教育 DX サービスに Google Cloud を採用、わずか 4 か月でローンチ

Google Workspace の利用が Google Cloud 採用の決め手に

東洋大学では、「学生ひとり一人の成長を約束するため、デジタルを十分に活用した学修者本位の教育の実現を目指し、大学全体の教育の高度化と質保証を十全にする。」という基本方針に基づいて、「教育 DX 推進基本計画」を進めています。教育 DX は、デジタル技術を活用し、カリキュラムや学習のあり方を革新するとともに、時代に対応した教育を確立することを目的としています。

その一環として、「入学から卒業まで一貫した教育情報のデータ統合と AI 解析結果の最適活用~ “3万人のLearning Journey” の羅針盤~となる CLMS(CampusLifeManagementSystem)」と題した計画を進め、2022 年 3 月末に「東洋大学公式アプリ」をリリース。学生本位の教育、データを活用した学生支援の実現を目指し、大学からの重要な情報やキャンパスライフで困ったときに役立つ情報の提供しています。それに加え、学習や課外活動などさまざまな経験を柔軟に振り返る機能を提供しており、キャンパスライフのなかで、学生自身が次の行動・アクションを考えるきっかけを作ることや、他の学生が今考えていることは何かを「他者理解」「他者共感」の観点で共有しあうことが出来るようになっています。こうした新しい学生体験の価値創出のほかに、従来のアンケートでは取得しづらかった、学生の考えや意欲などを把握・分析することで、教育環境の改善に生かしています。このアプリの開発をきっかけに、データ分析基盤を、Google Cloud で構築しました。

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学長室学長事務課 課長の新山 文洋氏は、「従来はオンプレミスで運用している学務システムからデータを抽出し、分析して、教職員にフィードバックする方法でした。アプリの開発と並行してデータ分析基盤を構築し、約 3 万人がアクセスしても止まらない仕組みを、短期間、低コストで実現するためには、オンプレミスよりクラウドの方が最適と考え、Google Cloud を採用しました。」と話します。

Google Cloud を採用した理由の 1 つに、コミュニケーション ツールとして Google Workspace を既に採用していたこともあります。東洋大学では、Google Workspace が Google Apps と呼ばれていた 2010 年に、Gmail を導入しています。その後、 Google Workspace をより積極的に活用していく方針を検討し、2022 年 4 月より本格的な利用を開始しています。

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Google Workspace を導入した効果を、高等教育推進支援室 矢野 智子氏は、「私にとって、Google Workspace は業務を進めるにあたって欠かせないツールです。例えば、Google Chat を使って同じグループのメンバーとタスク管理をしたり、コミュニケーションしながらスプレッドシートやドキュメントを共同編集したりしています。また Google サイトを使って学内者向けのポータルサイトを作成したり、Google ドライブで資料を共有することでペーパーレス化を実現したり、部署を超えた情報共有も円滑になりました。」と話しています。

短期間での構築を可能にしたチームワークと、高い安定性を実現した Cloud Run

Google Cloud を採用したデータ分析環境は、オープンソースの UI 用 SDK である Flutter で開発された東洋大学公式アプリが、Google Cloud で構築されたデータ分析基盤につながる構成になっています。データ分析基盤は、主にアプリケーション サーバーとデータベース サーバーで構成され、実行環境に Cloud Run が採用されています。基盤構築時の最大の課題は、2021 年 12 月からスタートしたシステム構築を、いかに東洋大学公式アプリがリリースされる 2022 年 3 月末までの 4 か月間で完了するかでした。

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情報システム部 課長の田所 正史氏は、「限られた時間の中でシステムを構築することが必要だったので、時間との戦いでした。Google Cloud の素性の良さに加えて、グーグル・クラウド・ジャパン、アクセンチュア、東洋大学がワンチームで構築できたのでなんとか期日に間に合わせることができました」と話します。

今回、東洋大学公式アプリからデータ分析基盤までのシステム構築をサポートしたのは、Google Cloud グローバル サービス パートナーであるアクセンチュアです。Google Cloud を採用したデータ分析基盤の構築について、アクセンチュア アソシエイト・ディレクター テクノロジー コンサルティング本部 IT ソリューション Mobile App Studio 日本統括の佐藤 卓也氏は、次のように話します。

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「今回、特に驚いたのがサーバーレス型コンテナ実行基盤の Cloud Run の高い安定性でした。4 月の入学式では、当初 10 台のノードを設定していましたが、4,000~5,000 人の新入生が一斉にアクセスしてスパイクが発生したときに、約 5 秒で 59 台までスケールアウトしてシステムの停止を防ぐことができました。その後、約 3 分でもとに戻っています。話には聞いていましたが、実際に体験できた象徴的なシーンでした。短期間の開発のため、さまざまな課題もありましたが、東洋大学様にワンチームで目標に向かう雰囲気を作ってもらえたことがプロジェクト成功の最大のポイントでした。今後も日々進化する Google Cloud を活用することで、より高い価値を提供したいと思っています。」

BigQuery と Looker Studio で学生が求めているものをリアルタイムで把握

Google Cloud で構築されたデータ分析基盤では、データ ウェアハウスに BigQuery を採用。Google Analytics のデータやオンプレミスで運用されている既存の学務システム などから、必要な各種情報を CSV 形式で抽出し、 BigQuery に取り込んでいます。また、東洋大学公式アプリから収集されている学生のコメント、情報閲覧数や検索しているワードなどの学生行動データも BigQuery に取り込んでデータ分析に活用しています。

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データ分析基盤の効果を矢野氏は、「以前は、さまざまなシステムから必要なデータをダウンロードして、分析していたので、学生がキャンパス内で何を求めているか、どんな支援を期待しているかなど、毎日のように変化する学生の状況を把握するデータの分析は困難でした。現在は学生が何を求めているのかが、公式アプリを通じてリアルタイムに把握しやすくなりました。例えば、学生に海外留学への関心や意欲に関する問いかけ(アンケート)を公式アプリから行うと、翌日、翌々日には回答が集まります。集まった回答をその場で担当者間で Google Chat で共有し、留学支援策の検討をしたり、学生に対する情報提供の仕方を変えたりすることができるようになったのは大きな変化です。できる限り早いタイミングで、学生の回答に応じた次のアクションを提案するなど、学生からの反応を得た後に、そのままにしておかない、スピード感のある対応ができます。」

「また、公式アプリ内で学生が検索したワードを学内で共有していますので、学生が何の情報を探しているのかが、すぐにわかります。今後、学生に対してより角度の高い、ターゲッティングを意識した情報提供が可能になってくるでしょうし、キャンパス内の施設・設備に関する課題に気づくことが増えると考えています。分析には Looker Studio を利用していますが、Looker Studio は直観的に操作できるため、データ検索やデータに基づくコミュニケーションづくりに注力ができています。」と話します。

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