わずか数年で400億円も売り上げを伸ばしたカインズがホームセンターのDXで、 まず「顧客戦略」に着手した理由
その前は、いくつかのファンドさんが投資をしたような会社の役員をして、成長を作り上げていく仕事をしていました。ただ、僕はそもそも新卒でキヤノンという会社に入って、レンズのエンジニアをやっていたんです。そこから今は、ぜんぜん違う生き方になっているなと思っています。
それは置いておいて、カインズについてご説明します。カインズは、埼玉県の本庄早稲田に本拠を置くホームセンタービジネスをしています。
今4,600億円強の売り上げで、この数年間で売り上げが400億円ぐらい上がり、CAGR(年平均成長率)で、だいたい4.7パーセントぐらいだと思います。従業員数は13,000人とスライドにありますが、パートさん・アルバイトさんも加えるとだいたい2万人の会社と考えていただければと思います。
次に、カインズがどのように成長してきたのかについて。今33期が終わったところですが、一番最初の十数年はホームセンターとして成長してきました。日本型のホームセンターと言って、通常のDIY用品だけでなく大型・大容量の商品もあり、主婦のみなさんも来られるような日本型ホームセンターを立ち上げたのは40年ぐらい前ですね。
その頃は「いせやホームセンター」という名前でした。第1期はそこから10年後ぐらいですね。カインズとして独立した時はある意味、景気もどんどん伸びている時期ではあったので、郊外型のホームセンターを金太郎飴みたいにチェーンストア展開していく。要するに、店を増やすと利益が上がるというモデルだった時代が、ホームセンターとしての成長(を支えた要因)です。
この時の成長のドライバーは、いかに店をきちんとした場所にきちんと作り上げていくか、ということでした。ただ景気もそのうち良くなくなってきて、店舗を新しく出しても、ROI(投資収益率)が返ってこない状態、収益性が低い状態になってきました。
カインズは第二の創業期と呼んでるんですが、その時にオリジナル商品を出すことによって収益構造を変えていきました。この頃は売り上げ成長はなかなかなかったんですが、収益成長はしていった時代です。このSPA化が第二の創業期ですね。
来店頻度の高いデジタル会員の獲得が「成長の押しボタン」
池照:第三の創業期として位置付けているのが、3〜4年前くらいに出した「IT小売企業宣言」から先になっています。ここで、ITと今まで持っていたチェーンストアの強みを掛け合わせて、新しい姿の小売ができないかということで、今事業を進めている最中です。223店舗とありますが、今は228店舗でオペレーションをしています。
前期の32期末の売上高は4,652億円になっています。ここから、カインズのデジタル戦略についてお話ししたいと思います。私が就任して一番最初にやったのは、デジタルの「デ」の字もないようなことです。
これは、今から3年前に作り上げた顧客戦略のチャートです。左側が非会員のお客さまで、右側の4つの象限に分かれているところが会員のお客さまです。右側の4つの四角を見ていただくと、デジタル会員、つまりリーチが可能かつ来店頻度の多い方は、来店頻度が少ないカード会員の方に比べて、5.8倍の売り上げの実績があります。
すごくシンプルなチャートですが、実はここにたどり着くまでにはまあまあ時間がかかりました。じゃあ、これをどういうふうにマネーにしていくか。デジタル会員を集めることが僕らの成長の押しボタンなんだと考えて、デジタル会員を増やしていくことにフォーカスしていったんですね。
右側はあくまで会員さまで、僕らの会員ではない方も来店して商品を買ってくれています。そこからデジタル会員に持っていくまでのストーリーをどうしていけばいいのかが、全体的な戦略の考え方になります。
未認知(顧客)は、4,487万人いると想定していました。認知してるけど未購入の方が2,600万人で、購入してくれているけど非会員の方が900万人。この未認知からぐるーっと回って、来店頻度の高いデジタル会員になっていただくにはどうしたらいいか。これだけが僕らの戦略なんですね(笑)。
塚本:シンプル。
池照:これ以外、何も考えていないということです。