[独自記事] 経産省のミスター「DX」が語るDXのツボ(1)

  • 2022.09.29
  • DX
[独自記事] 経産省のミスター「DX」が語るDXのツボ(1)

DXの事例を追っている時点で”後追い”。先例のないところに先手必勝で行くべき。

経済産業省 商務情報政策室 情報経済課
アーキテクチャ戦略企画室長
和泉憲明

自分の立場ですが、経済産業省の中で、いろいろな企業や国際機関と、ざっくばらんに情報共有できる立場にいます。
よく聞かれるのが、企業のトップクラスの方が「デジタルは100年に一度の大変革」とか言いながら「ピンとこないので、わが社にピッタリな事例はあるかね?」なんてことなのです。
そこで「ちょっと待ってください。貴方は明治維新などに例えていましたね。だけど、その人たちは過去のヨロイカブトの侍から学びましたか?」と言います。

「先例のないところに先手必勝で行くから変革や革命を達成するのであって、事例を追っている時点で”後追い”じゃないですか?」と。
固定観念と先入観というのが一番邪魔だと思うのです。
アイデアとは毎日同じことをやっていたら同じようなアイデアしか思いつかない。あいつがこういう仮説をたてたら、私はこういう仮説をたてるといった、仮説の交換みたいなことからコミュニケーションがよくなると思います。「DXレポート2.2」では「デジタル産業宣言」ということで、過去の成功体験ではないビジョンをだすことや、コストを積み上げて考えるのではなく提供する価値を中心に物事を考える、といった考え方のガイドラインを作りました。

デジタル変革とはどのようなものなのか?

過去の産業革命においても、実際にその場にいた人からすれば日常生活の変化であって、革命と思っていませんでした。アメリカの昔の道路は馬車が走っていましたが、それは10年もかからずにT型フォードの自動車に置き換わりました。

昔の通勤電車では人に迷惑をかけずに新聞を広げて読むか考えたりしたものですが、今は新聞を読む人はひとりもいなくなって皆さんスマートフォンをSNSを見たりゲームをしたりしています。

こういう変化は過去を振り返ると気づきますが、いまではスマートフォンでインターネットに24時間接続してビジネスがスケールする世界はいまでは当たり前ですが、10年前には他人事のようでした。しかし、この変化というのは、なかなか実感できないし、自分がグローバルなビジネス環境にいることにピンときてない人も多いと思います。

データを集めて成長するのがデジタル企業

ネットサービスにログインするときに、このような画像が出てくることがあります。これは、実はグーグルがはじめの頃は、文字認識のためのデータを集めるために作ったしくみなのです。ゆがんだ文字を表示して人間に認識させてみて、「どこまで人間が認識できるか」「認識できないか」というデータを収集しているのです。
いまは、画像がでてきて、「どこまで人間が画像を認識できるか」「認識できないか」というデータ収集に移行しています。要するに文字認識のフェーズは終えて画像認識にシフトしているのです。このようなことは日本企業にはできていません。このデータが集まれば集まるほどグーグルのAIは賢くなるのです。さらにグーグルは実世界のインデックス化も始めています。このような状況の中で「デジタル」というものが、どれだけ産業構造を変えられるか?


DXレポートでも「企業がデータとデジタル技術を活用してビジネスモデルを変革するとともに、競争上の優位性を確保すること」と書いたのですが、データで産業構造が変わる、ということにピンとこない方には、ぜひもう一度復習してほしいと思います。

(続く)

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