デジタル変革を成功へと導く鍵とは?–英鉄道会社のCDIOに聞く
LNERは、利用客の旅のあらゆる行程での急所を押さえ、対処することを目指している。しかもこういった変革を、レガシーなシステムやプロセスが依然として多くを占めている業界で成し遂げる必要がある。Gonzalez氏によると、使用されているテクノロジーの中には、30年以上の歴史を持つものも多いという。
Gonzalez氏は「鉄道業界ではいまだに、信じがたいほどの量の紙の書類やスプレッドシートが使われている」と述べた。
「われわれの仕事は、機械学習(ML)やオートメーション、統合システムといったものが、われわれの業務や利用客のエクスペリエンスをいかに根本から変革できるかに目を向けることだ」(Gonzalez氏)
同氏は、これには業務の遂行方法や、利用客へのサービス提供方法の改善に向けたテクノロジーの活用方法に焦点を当てることも含まれていると述べた。
これはデジタル変革の綿密な青写真として明確化され、同氏の言葉を借りるとLNERの北極星として、「遂行すべき重要な物事に皆が集中できるようにするもの」だという。
同氏はCDIOとして、困難な問題の解決に向け、従来の鉄道のプロセスや統制に縛られず、イノベーションや、クリエイティブなソリューションの創出に取り組めるだけのスキルを有した38人の専門家で構成される強力な委員会を編成した。
同氏は「何かにトライし、失敗しても許しが得られやすい鉄道会社というのは極めて珍しい存在だ」と述べた。
2020年以来、デジタル推進部局は大企業や新興企業パートナーのエコシステムを組み合わせることで、60を超えるツールをローンチするとともに、15件の概念実証(PoC)トライアルを実施してきている。
こういったトライアルの1つが、ドイツ最大の鉄道会社であるDeutsche Bahnとともに開発した駅構内用のアバターだ。
LNERはニューカッスルでのトライアルで、利用客が駅構内に設置された専用ブース内でアバターと自由に会話できるようにした。このアバターは、LNERの予約システムに接続されているため、利用客は最新のサービス運営状況を知ることができるようになっていた。LNERはトライアルの成功を受け、より広範囲な展開に向けた最終的なソリューションの準備に取り組んでいる。
また同社は、Gonzalez氏が表現するところの「ドアからドアへの」サービスとしてのモビリティーアプリに向けて取り組んでもいる。これにより利用客は最新の旅の状況を把握した上で、タクシー会社や、レンタカー/レンタサイクルといった専門業者の手配が行えるようになる。
同氏は、「これによって、すべての旅程が確実にシームレスなかたちで統合されるようになる」と述べ、「つまり利用客は、自らが中心にいることを実感し、プロセスに問題が発生した場合に、われわれが正そうとしている物事を確実に把握できるのだ」と続けた。
LNERはこの運用を影で支えるためにMLテクノロジーに大きく投資している。そしてGonzalez氏のチームはいくつかの大きな概念を実装済みであり、それらは本番環境に移行する段階になっている。