[独自: DXの教科書] DXの勝ち組ニューヨークタイムズは何をしたのか?

  • 2022.08.03
  • DX
[独自: DXの教科書] DXの勝ち組ニューヨークタイムズは何をしたのか?

今年初めにデジタルサブスクリプションの購読者数が1000万人を超え、紙の出版からのデジタルトランスフォーメーション(DX)に成功したニューヨークタイムズが、2014年にデジタル化に向けた社内改革の提案をしたドキュメントが New York Times Innovation Report です。

“[日本語訳] New York Times Innovation Report - 全94ページ” をダウンロード NYT-Innovation-Report-20220721.pdf – 415 回のダウンロード – 20 MB

これは10人の改革チームが半年がかりで50のメディア企業、テクノロジー企業、および社内を含む300人以上からのヒアリングを行ったもので、このレポートをもとに上層部に対して5つの提言を行いました。

提言1. ニュースルームにオーディエンス開発チームを設置する
提言2. ニュースルームにアナリティクス(データ分析)チームを作る
提言3. ニュースルームに戦略チームを作る
提言4. ビジネス面では読者にフォーカスした部門と連携する
提言5. デジタルファーストへの移行を支援するため、デジタル人材の採用を優先する

この提言については、改革チームから発行人チーム(新聞社の新聞発行に関する最高責任者たち)に送ったメールを日本語訳したので、詳しくはそちらを読んでください。

“[日本語訳] ニューヨークタイムズの改革チームからの提案” をダウンロード NYT_Our-recommendation.pdf – 53 回のダウンロード – 243 KB

本記事では要点だけを書いておきます。

1.の「オーディエンス開発チーム」は、ニュースルームの記者や編集者が新しい読者を開拓するために、ソーシャルメディア、検索、Eメールなどの直接的なアプローチに関するニュースルームの戦略立案を担当します。また、記事をどのようにパーソナライズすればよいか、アーカイブをどのように活用すればよいか、といったアドバイスをしたり、記者や編集者にツール、テンプレート、トレーニングを提供します。

2.の「アナリティクス(データ分析)チーム」は、トップページのコンテンツはどれくらいの頻度で更新するべきか?読者がのデジタル・メディア・パッケージにどれだけ関心を寄せているか?定期的に発行している特集やコラムは、忠実なデジタルファンを獲得しているか?といったデータを収集・可視化し洞察を与えます。

3.の「ニュースルーム戦略チーム」は、モバイルでの利便性を高めるにはどうすればよいか?オーディエンス開発におけるベストプラクティスは何か?読者を獲得するために、他社はどのようにメールを利用しているか?パーソナライゼーションと編集者のニュース判断のバランスをとるには?読者によりよいサービスを提供するために、どのようにアーカイブを掘り起こせばよいのか?といったことを考え、業界の動向や自社の読者データを追跡し、コンテンツ管理システム、プラットフォーム比較、構造化データといった技術的な分野での優先順位を上層部に伝えます。

4.の 「読者にフォーカスした部門と連携」ということは、ニュースルームの記者や編集者が、テクノロジー、コンシューマーインサイトグループ、R&D、プロダクトなどと連携することを意味しています。要するに既存の記者や編集者が、プロダクトマネージャーやデベロッパーやデータサイエンティストなどのデジタル人材とコラボしてデジタルコンテンツを作っていくことを推進しているのです。

5.の「デジタルファーストへの移行を支援するため、デジタル人材の採用」ということは、デジタル人材の採用、強化、昇進をもっとうまくやることが、デジタルへのトランスフォーメーションにおいて、最重要であることを主張しています。

このニューヨークタイムズの提言から得られる教訓は

・デジタルトランスフォーメーション(DX)を実現するために、必要な組織改革をためらってはいけない
・デジタル人材を社内のコアな業務部門(ニューヨークタイムズの場合はニュースルーム)に配置し、業務部門とデジタルプロフェッショナルの緊密な共同作業を推進すること – たとえばレシピサイトの「NYT Cooking」はコンテンツ制作者とプログラマーが一体となって共同作業をしている
・必要なデジタル人材を採用し社内で評価されるようにすること – すなわちデジタルトランスフォーメーション(DX)のためには必要であれば人事制度を変えることも必要

ということでしょう。

要するに「デジタルトランスフォーメーション(DX)とは会社のトランスフォーメーションでもある」ということであり、このあたりが中途半端だと、日本企業で多くみられる「かけ声だけのDX」となり、トランスフォーメーションが成功しない、という悪い結果を招くのです。
ぜひ「ニューヨークタイムズは何をしたのか」ということを参考にしてください。

ニューヨークタイムズの「改革チームから発行人チーム(新聞社の新聞発行に関する最高責任者たち)に送ったメール」のダウンロードはこちらから

“[日本語訳] ニューヨークタイムズの改革チームからの提案” をダウンロード NYT_Our-recommendation.pdf – 53 回のダウンロード – 243 KB

ニューヨークタイムズの「Innovation Report」のダウンロードはこちらから

“[日本語訳] New York Times Innovation Report - 全94ページ” をダウンロード NYT-Innovation-Report-20220721.pdf – 415 回のダウンロード – 20 MB

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