AIによる風向き予測によりルフトハンザドイツ航空で定時運航の便数が増加

AIによる風向き予測によりルフトハンザドイツ航空で定時運航の便数が増加

AIによる風向き予測によりルフトハンザドイツ航空で定時運航の便数が増加

空港の運営は、風の強さと方向に大きな影響を受けます。ルフトハンザ グループも例外ではありません。特に厄介なのが、BISE と呼ばれる、スイス高原を北東から南西に横切って吹く冷たく乾燥した風です。この風は、フライト スケジュールに深刻な影響を及ぼすことがあります。たとえば、航空機が滑走路を変更せざるを得なくなり、結果として航空便の遅延や欠航が連鎖的に発生することがあります。特にチューリッヒ空港では、BISE の影響で発着便数が最大 30% 減少することもあるため、航空便の遅延と欠航が一層深刻で、このことはルフトハンザドイツ航空にとって巨額の収益減(および乗客の不満)の原因となっています。

このような風を事前に予測できれば、ネットワーク運用管理チームは、滑走路と時間枠をまたいで最適なフライト スケジュールを組み、スケジュールの混乱を最小限に抑えることができます。とはいえ、風の速度と強さをモデル化し、予測するのは非常に困難です。そこでルフトハンザドイツ航空は、Google Cloud に協力を求めました。

機械学習(ML)を活用すれば、空港と航空会社は、このような運航の妨げとなる気象現象をより的確に予測し、管理できるようになります。このブログ記事では、ルフトハンザドイツ航空が Google Cloud とともに Vertex AI Forecast サービスを使用して行ったテストをご紹介します。このテストでは、ヒューリスティックに基づく社内システムと比較して 40% 以上高い精度で BISE の発生時間を予測することができました。しかも、この大幅な改善は数日以内に達成されました。この規模と精度の ML プロジェクトには数か月を要することが多いにもかかわらずです。

1 Lufthansa.jpg

ルフトハンザ グループのデジタル運用最適化担当シニア ディレクターの Christian Most 氏は、「Googleは AI と機械学習の分野で感心するほど高度なテクノロジーと技量を持っているため、Google の専門家と協力して当社の技術と Google の専門知識を組み合わせれば、最高の成果を得られると確信していました」と述べています。

データセットの収集と準備

今回のルフトハンザと Google Cloud のプロジェクトの目標は、深層学習に基づく機械学習の手法を活用してチューリッヒのクローテン空港の BISE を予測してから、その予測がヒューリスティックに基づく社内ソリューションを上回るか確認し、本番環境における深層学習の手法の使いやすさと実用性を測定することでした。

深層学習に基づく手法には大規模なデータセットが必要なため、本プロジェクトでは、過去 5 年間にスイス国内の複数の気象台で収集された多数の気象センサー測定値からなるデータセット「Meteoswiss シミュレーション データ」を利用しています。このデータセットを使用することで、風向、風速、気圧、気温、湿度などの要素を 10 分刻みで測定したデータと、高度などの気象観測所の位置に関する情報を合わせて取得できました。BISE の予測に有用であると仮定したこれらの要素には、貴重な指標が含まれていることが判明しました。これについては後述します。

次に、収集されたデータに対して Vertex AI Workbench を使用した大規模なクリーニングと特徴量エンジニアリング処理を実行し、トレーニング用の最終データセットを準備しました。クリーニング段階では、欠損値が多すぎる特徴(行)やエントロピーの統計的テストに不合格となった特徴(行)を削除する処理が実行されました。風向は円形(0~360 度)の特徴であるため、この列(特徴)は、対応するサインとコサインの埋め込み値という 2 つの特徴に置き換えられました。次に、すべての気象台のデータを 10 分間隔で整理したうえで、10 分間隔で配置した各列に関連する特徴とセンサー測定値をすべて格納するという方法でデータセットを平坦化しました。

ターゲット変数である BISE は変数として直接利用できないため、「滑走路周りの追い風速度」という BISE の代理変数を考案しました。これは、あるしきい値を超えると、滑走路沿いに BISE が存在することを示すものです。

Google Cloud での風の予測

これでデータセットの準備が整ったわけですが、ルフトハンザと Google Cloud は、Google の AutoML を搭載した予測サービス「Vertex AI Forecast」のテストと調整を決定する前に、複数の選択肢を評価しました。こうすることで最適な結果を得られると考えたためです。Vertex Forecast では、必要な特徴量エンジニアリング、ニューラル アーキテクチャ探索、ハイパー パラメータ チューニングが可能です。このサービスは Google Cloud によって完全自動方式で管理されており、Kaggle の M5 Forecasting Competition では上位 2.5% のスコアを獲得しています。

続きは Google Cloud ブログ

事例カテゴリの最新記事