Volkswagen と Google Cloud、機械学習を利用して高エネルギー効率の自動車の設計を実現

Volkswagen と Google Cloud、機械学習を利用して高エネルギー効率の自動車の設計を実現

Volkswagen と Google Cloud、機械学習を利用して高エネルギー効率の自動車の設計を実現

Volkswagen は、美しく高性能でエネルギー効率の高い自動車のデザインに日々取り組んでいます。設計者は何度もデザイン案を作成して評価し、フィードバックを統合し、さらに洗練させるというプロセスを繰り返します。

たとえば、自動車の空気抵抗は、エネルギー効率を考えるうえで最も重要な要素の一つです。設計者は複数のデザインの抵抗係数を推定して実験を行い、よりエネルギー効率の高い解決策を導き出します。このフィードバックのループが低コストで高速であればあるほど、設計者の能力を発揮できます。

しかし、抵抗係数の推定には物理的な風洞実験や計算量の多いシミュレーションが必要で、高コストで時間のかかる作業であるという問題があります。これは、フィードバック サイクルのボトルネックになりうる問題です。

Volkswagen と Google Cloud は、この問題を解消すべく、機械学習(ML)を使用して、高速かつ低コストで抵抗係数を推定することを検討する共同研究プロジェクトを立ち上げました。今回の投稿では、このプロジェクトで直面した課題と実施したアプローチを紹介します。

プロジェクトの基本方針はシンプルでした。まず、既存の自動車のデザインとそれぞれの抵抗係数のデータセットを集めます。そして、さまざまな自動車の、機械学習に適したモデリングを作成します。次に、抵抗係数を予測するディープ ラーニング モデルを学習させ、最終的にそのモデルを使って、どんな新しいデザインでも抵抗を効率的に推定できるようにします。

自動車のデザインを 3 次元で表現する

設計ソフトウェアは、物理的な物体を「面」「辺」「頂点」の 3 種類のオブジェクトで構成される 3 次元の三角形メッシュとして再現します。下の図 1 は、Audi S6 のメッシュを示したものです。「面」とは、自動車のドアの窓のような平らな面のことです。「辺」とは 2 つの面が接する部分(ドアの側面など)、頂点は 2 つ以上の辺が接する部分(ドアのコーナーなど)のことです。

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図 1: 頂点、辺、面を強調した Audi S6 のメッシュモデル(ShapeNet より)

とはいえ、自動車のボディはさまざまな形をしています。Volkswagen Golf の場合、エコノミー モデルと SUV の Tiguan では形が大きく異なります。また、1 台の自動車に大きく滑らかな面と繊細なデザインが施された形相の両方が存在します。そのため、ポリゴン メッシュの種類は非常に多くなります。

機械学習モデルは、しっかりと一般化されたルールを形成するために、一貫したモデリングが必要です。ポリゴン メッシュのばらつきが大きいと、モデルに欠陥が生じ、結果的に大きな誤差が生じる可能性があります。

ですから、自動車の形状を捉えつつ、機械学習モデルに適したシンプルなメッシュを作成する方法が必要でした。

デジタル シュリンク ラッピングで自動車をモデリングする

私たちは、各自動車のモデリングを一から作り上げるのではなく、3D メッシュに「シュリンク ラッピング(包装)」という手法を利用しました。この原理はキュウリの真空パックとよく似ています。キュウリをビニール袋に入れ、徐々に空気を抜いていくと、袋がキュウリを包み込むように形を変えていきます。

Google Cloud のアプローチも同様で、ビニール袋に相当する単純な形状のベースメッシュから始めて、ターゲット メッシュの形状になるまで変形させます。ベースメッシュは自動車を簡略化したもので、ターゲット メッシュはその時点でデザインしている特定の自動車のことです。このようなメッシュは、Tensorflow Graphics と trimesh ライブラリを用いた定義、管理、そして学習用の機械学習モデルに渡すことが可能です。

私たちの「シュリンク ラッピング」手法は、主に 2 つのメッシュ間の距離の尺度(面取り距離)を繰り返し最小化することで実現します。メッシュを標準化して、結果のメッシュの滑らかさなど特定の品質を保持することも可能です。この反復最適化は、つまりは真空ポンプであり、メッシュの頂点を徐々に縮め、自動車の複雑な形状にできるだけフィットさせるというものです。シュリンク ラッピングにより、よりきれいな、Google Cloud の推定タスクに適したメッシュを生成できます。このような手順の一例を図 2 に示します。

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図 2: Audi S6 のベースメッシュをターゲット メッシュにシュリンク ラッピングする様子。

モデルの学習方法

自動車の 3D デザインについては、シュリンク ラッピングが重要な第一歩でしたが、他にも行うべき作業があります。次の課題は、機械学習アルゴリズムの構築とテストでした。

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