DXの勝ち組ニューヨークタイムズはどのような体制を構築したか?プログラマー445人の驚くべき内製化DX体制
当サイトでは、徹底したジャーナリズムのデジタルトランスフォーメーション(DX)によって有料サブスクリプション1,000万件を達成し、新聞紙の収入をはるかに超えるデジタル収入を得ているニューヨークタイムズに注目してきました。そして、その後の会社の方向性を大きくデジタルに転換し、社内改革を行うためのバイブルともいえる2014年の「New York Times Innovation Report」の日本語を翻訳を無料ダウンロードできるようにしています。
このレポートは、2014年に作成されたものですが、デジタル化(DX)が期待通りに進まない日本においては、むしろ、今読んで参考になるものです。
本記事では、その中で、デジタル化(DX)でカギとなる社内体制について書いています。
その特徴はいろいろありますが、特に大きいのは以下の2点でしょう。
特徴1. ソフトウェアを開発するIT企業のように、多数のデジタル人材を大量に雇用しデジタルプロダクトを内製化したこと
特徴2. 会社の中心的な製品(新聞、コンテンツ)の制作現場(ニュースルーム)にデジタル人材のチームを配置し、記者や編集者や制作者と密に連携して共同作業できるようにしたこと
多数のデジタル人材を大量に雇用しデジタルプロダクトを内製化
「事実は小説より奇なり」という言葉がありますが、「New York Times Innovation Report 日本語訳」の p61 に社内体制について、このような記述があります。
2014年の時点で「アナリティクス」チームに約30人、「デジタルデザイン」チームに約30人、さらに注目すべきは「テクノロジー」チームに「コードを書くエンジニア」が約445人もいたという事実です。2022年の現在においては、当時よりはるかに会社の売上規模も大きくなっているので、もっと多くのデジタル人材がいると思われます。しかも、これは基本的に「社員」なのです。
しかも「New York Times Innovation Report 日本語訳」の p94 に書いてあるように、トップクラスのソフトウェア開発者やWeb開発者やデータサイエンティストを雇用しているのです。
アメリカにおいては、社員によって技術者やデザインのチームを作るのは当たり前のことですが、日本企業の多くでは、このような仕事を会社の本業とはみなさず「外注」するのが当たり前です。これがデジタル化において、日本が大幅に遅れている原因のひとつになっていることは間違いありません。なぜなら、デジタルの世界においては「試行錯誤」「実験」が欠かせないもので、デジタルなプロダクト(例:ニューヨークタイムズの Cooking アプリ)のプログラムやデザインを毎日のように変更したり機能追加をしたりしつつ、その顧客(読者)の反応をアナリティクスチームによって捉えながら、プロダクトを改良し顧客を増やしていくものだらです。
会社の中心的な製品の制作現場にデジタル人材のチームを配置
上述のように大量のデジタル人材を雇用しているニューヨークタイムズは、その配置場所もなるべく、会社の中心的な製品、つまり、新聞やデジタルコンテンツなどを制作するニュースルームの記者や編集者や制作者との「壁」をなくすようにしています。これについては、「New York Times Innovation Report 日本語訳」の p61 に概念図があります。
上記の図の 1. のように、壁の向こう側に、デジタルデザインやテクノロジーのチームがいるのでなく、ニュースルームの記者や編集者や制作者とデジタル人材が一体化して共同作業するようにさせているのです。
レポートの p87 に以下のように印象的な文章があります。
「例えば、Sam Siftonは、彼のCookingプロダクトの経験において最も革新的な部分は、ソフトウェアデベロッパーと一体化していたことです。彼が質問をすると、デベロッパーはそれを聞き、解決策を探し始めます。プロトタイプは1か月ではなく午後に作成されます。」
いかにデベロッパーがニュースルームと一体化していたかがよくわかります。
デジタルへのトランスフォーメーションとは、単に会社の中心的な製品がWebやモバイルアプリで見れる、あるいは販売できるだけでは済まないのです。上述したように、デジタルネイティブに最適化する必要があり、常に顧客の反応をとらえて改良していく必要があるのです。そのためには、アプリを開発するデベロッパーやそのUX(ユーザーエクスペリエンス)のデザイナー、反応をデータでとらえて分析するデータアナリストのような人材は、いわゆるエンドユーザー部門の「現場」と一体化する必要があり、そのためには、必要に応じて組織をトランスフォーメーションする必要があるのです。
つまり、デジタルトランスフォーメーション(DX)を徹底して行うには、組織改革が必要、しかも、人材獲得や、その人事評価のしくみも変える必要があるため、経営レベルで取り組む必要があるのです。逆にいえば、経営レベルで取り組まないから日本のDXは進まない、といっても過言ではありません。そして、ニューヨークタイムズの経営レベルでの組織改革を、経営陣に対して提言したのが2014年の「New York Times Innovation Report」だったのです。
詳しくは「New York Times Innovation Report 日本語訳」をお読みください。