戦時に功を奏したウクライナのDX体制

  • 2022.07.29
  • DX
戦時に功を奏したウクライナのDX体制

戦時に功を奏したウクライナのDX体制

ウクライナはロシアの侵略に対し予想外の闘いを挑み、反撃すらしているが、これには、国を挙げて進めてきたデジタル化が功を奏し、デジタル戦争で優位に立っていることが大きく貢献している。

ゼレンスキー大統領の効果的なメッセージング、通信網やインフラのサイバー攻撃からの防御、オンライン資金調達、ロシア軍の動きや攻撃目標に関する情報収集や効果的な軍事攻撃を可能にしているのは、デジタル変革庁が進めるデジタルトランスフォメーション(DX)、軍の航空偵察部隊、そして米国や北大西洋条約機構(NATO)、欧州連合(EU)の支援を得て行ってきたサイバー防衛対策である。

ゼレンスキー大統領就任とともにデジタル変革庁が創設され、政府のサービスの完全デジタル化を目指してきたが、ロシア軍の侵略とともに同庁は即日デジタル戦闘部隊となり、迅速で有効な戦略を実施している。

アップルなどのビッグ・テックにロシアでのアプリのダウンロードや製品のアクセスの停止などを求め、要請文をツイートで公開するなどして、世論の圧力を強めた。その成果もあり、アップルやフェィスブックがロシアでの製品販売や事業を停止、METAはロシアの国営放送のフェィスブック・アカウントをブロックし、ツイッターはロシア国営メディアにリンクするツイートには内容に注意するよう警告をつけるようになった。

侵攻2日後には、民間から「IT戦士」をリクルートし、DDoS(複数の機器から一斉に一つのサーバーなどに攻撃をしかけサービスを停止させる)などのサイバー攻撃に対応したり、フェイク情報を流しているロシアのソーシャルメディア・アカウントの追跡を図っている。ボランティア戦士は30万人といわれ、防衛が中心だが、ロシアのウェブサイトにDDoSをしかけているという報道もある。

陸軍航空偵察専門部隊は、ドローンを駆使し、ロシア軍の戦車や補給車を効率的に攻撃したり、ロシア軍の動きに関する情報収集をしている。ドローン専門パイロットは50人余りいるとされる。トルコ製ドローンのほか、国内で設計製造されたドローンが探察や攻撃と目的別に非常に有効に活用されている。

同部隊は、2014年のクリミア侵略をきっかけに、ロシア軍の動きをモニターし、ドローン活用を可能にする情報収集システムDeltaをNATOの基準に沿って独自に開発してもいる。Deltaの有効性を認めたNATOはDeltaを戦場での西側の指揮統制技術と併用できるようウクライナ軍の訓練を行ってきた。

そして、有効なサイバー防衛対策がなされている。米国はウクライナの重要インフラを狙ったロシアのサイバー攻撃に対抗するため、17年以降少なくとも4000万ドルを投資し、訓練や技術支援も行ってきた。

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