マーケターがコマースメディアに生成AIを活用

  • 2023.07.28
  • AI
マーケターがコマースメディアに生成AIを活用

2022年末にOpenAIが発表した「ChatGPT」は現在、大きな注目を集めています。その登場以来、私たちは人工知能(AI)が生成する広告、映像、記事など、ChatGPTの優れた利用例を数多く目にしてきました。

生成AIは既に検索エンジン最適化(SEO)や創造的作品にイノベーションを起こしましたが、小売業界ではどうでしょうか。人々はオンラインチャットを通じて次に買いたいものを見つけられるようになるのでしょうか。実際にショッピングはビジュアルを重視したインタラクティブな体験となっており、AIは今のショッピングジャーニーを向上させることで普及していくでしょう。

コマースデータ(購買に関するデータ)とインテリジェンスを融合したデジタル広告の新たなアプローチであるコマースメディアは、ショッピングジャーニー全体で消費者を的確にターゲティングし、広告主にコマースの成果を向上させる手段を提供します。コマースメディア内で、生成AIモデルをどのように活用できるかを考えると、マーケターが顧客体験をさらに充実させる機会は増え続けています。

この記事では、ChatGPTを支えるテクノロジーを利用してマーケターがどのようにコマースメディア戦略を強化できるのか、また消費者にとって多様なカテゴリーにわたる最終的なショッピングジャーニーがどのようなものになるのかを紹介します。

マーケターがコマースメディアに生成AIを活用

データアクティベーション(データの活用)

デジタル広告の登場以降、AIは大量のデータのアクティベーションを可能にしましたが、コマースメディアに生成AIを利用すると、特にコマースデータのアクティベーションに注力できるようになります。コマースデータに基づく大規模言語モデル(LLM)を利用し、より正確でパーソナライズされた製品の検索結果を効率的に提供することで、キャンペーンによるコンバージョンを増加させ、より高い投資対効果(ROI)を導き出せるようになります。

広告主は、小売業者が蓄積してきた豊富なオフラインデータがオンラインに活用されることを期待しています。自然言語処理を通じて店舗内にChatGPTを導入すれば、顧客サービスの問い合わせ対応が容易になり、顧客体験の改善と同時に、店舗で収集できるデータがさらに充実します。

最適化と効率化

ChatGPTベースのアシスタントが消費者のためにオペレーションを合理化するように、マーケターもコマースメディアパートナーと協力して、このテクノロジーを活用できます。これによってキャンペーンがさらに合理化され、最適化できます。

コマースメディアとChatGPTは、ナビゲーションの精度向上に役立ちます。ChatGPTは、パターンを特定して予測する従来のAIモデルとは異なる生成AIであるため、アイデアやストーリーだけでなくビジネスプロセスをも創出できます(有名な「Dall-E」も生成系AIの一つですが、Dall-Eはテキストプロンプトから画像やビジュアルを創出することに重点を置いています)。

これらの生成AIでは、消費者が情報を追加すれば、結果をさらに改善して正確なレコメンドを得られるようになります。同様に、コマースメディアは最近の購入履歴とショッピング行動に基づいて製品レコメンドを提供することに焦点を当てています。両チャネルとも「提案」を生成しますが、ChatGPTの場合は、コマースメディアに倣って、顧客との関連性が高いレコメンドを作り出す必要があるということを知っておく必要があります。

オペレーションの規模

ChatGPTを顧客サービスに利用すれば顧客体験を改善できるように、マーケターとその代理店がテクノロジーパートナーと協働する際にも同じことが言えます。生成AIは自動化されたキャンペーンを構築し、ターンアラウンドタイム(成果が出るまでの時間)を短縮する可能性を広げます。

またコマースメディアは、ノンエンデミックブランド(その小売店に商品を卸していないブランド)が最終的な購入時点に近い場面で広告を出すことを可能にします。リソース不足で製品カテゴリーにあった製品説明を記述する余裕がない、あるいはこれまで検討したことのないような製品ページに広告を載せたいといったようなノンエンデミックブランドでも、生成AIを利用すれば、効果的な広告を創出できる可能性があります。

生成AIは、AI経由で生成された製品画像を利用できるため、ブランドや小売店は製品カタログの写真に関わる制作コストを削減できます。

生成AIはどのように顧客体験を変容させるか

コマースメディアとChatGPTに共通するテーマは最終消費者に充実した体験を提供することであり、AIを利用して実店舗で得られる体験をオンラインで再現し、顧客体験を改善します。

全体として見れば、ChatGPTは人とAIの対話という相互の関わりを通じて、消費者がコマース体験の中で可能な限り多くの価値を得られるようにするものです。その例を2つ挙げます。

小売業:新しいタイプの個人客

コマースメディアは既にAIを利用してデータアクティベーションを行っていますが、生成AIはデータアクティベーションの規模を拡大して消費者をより深く理解し、パーソナライズされたショッピングレコメンドを提供し、さらに顧客が買い物中に抱くさまざまな疑問を解決に導くことを可能にします。

「テキストからビジュアルへ」のAIを利用すれば、AIが顧客のフィードバックに基づいてビジュアルを創出し、さらに複製してくれるため、消費者は自分が探しているものを表現しやすくなります。例えば、消費者とそのAIパーソナルショッパーが、消費者の求める冬のコートのビジュアルについて共有すれば、AIは小売店やブランドのカタログを検索し、最も似合うものを探すことができます。

旅行業:AI利用の旅行代理店

コマースメディアの中でChatGPTが役立つのは小売業だけではありません。旅行業のような垂直業界にも適用可能です。例えば、消費者はChatGPTに旅行計画を立ててもらうことができます。消費者のインプットをChatGPTが更新および編集し、彼らが探しているものが見つかるまで検索結果を精緻化していくのです。しかも、多数のリンクをクリックする必要はありません。

まとめ

ChatGPTは人とテクノロジーの間にあるギャップを縮めました。ただし、マーケターは今、テクノロジーを通じて消費者との接点を増やしているものの(テクノロジーを使うことで消費者から遠ざかるということはないのです)、カスタマージャーニーのあらゆる側面で人が介在する必要があります。

現時点で生成AIは大規模に拡張するには高価過ぎますが、マーケターがコマースメディアパートナーと協働し、生成AIをキャンペーンに活用する機会を模索することができるので、可能な限り積極的に取り入れていくべきでしょう。

ZDNet より

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