何よりもまず、生成 AI は生産性と業務効率を大幅に向上させます。あらゆるサービスやプロダクトが契約、利用規約、またはその他の合意から始まる金融サービスでは特にそうです。住宅ローン担保証券契約やさまざまな資産クラスにわたる顧客の持ち分など、複雑な情報を検出し、要約する点で生成 AI はとりわけ優れています。
しかし、それだけではありません。大規模言語モデル（LLM）などの基盤モデルは、テキストまたは言語でトレーニングされ、人間の言語と会話をコンテキストに合わせて理解します。こうした機能はとりわけ、顧客サービス、マーケティング、販売、コンプライアンス領域の高速化、自動化、拡張、改善に役立ちます。
生成 AI は従業員のアシスタントまたはコーチとなり得るもので、仕事が効率化され、最終的には戦略的で影響力の高い活動に集中できるようになります。たとえば、PaLM 2 に基づいて構築されたコードモデル ファミリーである Codey などのコーディング サポートおよびコーディング生成により、プログラミングの速度、品質、理解度が大幅に向上します。生成 AI を使用すれば、ソフトウェア開発者、リスクとコンプライアンスの専門家、支店やコールセンターにおける現場の従業員などを念頭に置く、業界で最も深刻な人材難に対処できます。
金融サービス業界向けの 5 つの実践的なユースケース
生成 AI は、企業や機関を支援する 3 つの主要な機能を提供しています。
- 会話形式でオンラインのやり取りを行う（例: 会話型ジャーニー、カスタマー サービスの自動化、ナレッジベースへのアクセスなど）
- 複雑なデータに直感的にアクセスできる（例: エンタープライズ検索、プロダクトの検出と推奨、ビジネス プロセスの自動化など）
- ボタンをクリックするだけでコンテンツを生成できる（例: クリエイティブ、ドキュメント生成、開発者の効率など）
特定のビジネス上の問題を解決する 1 つのユースケースを選ぶことから始めるのがよいでしょう。あなたのビジネスに影響を与え、所属組織の戦略に根差すユースケースにより、結果を簡単に測定できるようになります。
今回の投稿では、生成 AI の利用を開始するうえで役立つ 5 つのユースケースをご紹介します。
- 金融関連文書の検索と統合
銀行は行内の情報や文書の検索と要約に多くの時間を費やしており、そのために顧客に応対する時間が減っているのが実情です。
生成 AI を使用すれば、契約（例: 保険約款、クレジットメモ、引受、取引、融資、請求、規制）やその他の非構造化 PDF 文書（例: 「○○銀行の規制申告書の概要」）の情報を効率的に検索し、把握することができます。
たとえば、世界中の何千もの経済データやその他の統計を生成 AI が調査し、要約することで、銀行のアナリストはレポートを迅速に作成できます。また、魅力的な会話を促す包括的で直感的なピッチブックやその他のプレゼンテーション資料を生成 AI が作成することで、銀行の法人営業担当者は顧客とのミーティングの準備を首尾よく進めることができます。
このユースケース向けのアプリケーションを構築する方法について詳しくは、こちらのデモをご覧ください。
2. 高度な仮想アシスタント
場合によっては、既存の AI chatbot に事前にプログラムされておらず、カスタマー サポート エージェントに提供されているナレッジ ライブラリにも載っていない、特定の問題の答えを見つけるためのサポートを顧客から求められることがあります。たとえば、不正な取引を解決するためのサポートなどです。この種の情報は、通常の AI chatbot やナレッジ ライブラリでは簡単に入手できません。
そこで、顧客が必要な答えを得るのに役立つ生成 AI の登場です。大規模なデータコーパスから答えを見つけて要約し、カスタマー サポート エージェントを支援したり、既存の AI chatbot をサポートしたりできる優れものです。生成 AI を搭載した chatbot をより会話調にすることもできます。こうした機能は、カスタマー サービスの利用体験の向上に役立ちます。たとえば、こちらの動画は、生成 AI がどのようにクレジット カード詐欺の解決を迅速化し、顧客とカスタマー サービス エージェントの双方にメリットをもたらすかについて解説しています。
3. 資本市場調査
グローバル市場とリスクについて十分に理解できるよう、投資会社は企業の多様な報告書や申告書、記録、レポートのほか、複数の形式からなる複雑なデータを分析し、迅速かつ効果的にクエリを実行してナレッジベースを充実させる必要があります。
資本市場では、生成 AI ツールは投資アナリストのリサーチ アシスタントとして機能します。このアシスタントは、何百万ものイベント記録（例: 決算説明会）、業績報告書（例: 10-K / 10-Q）、コンセンサス推定、マクロ経済レポート、規制当局向けの申告書、その他の情報源を精査し、重要な情報を迅速かつインテリジェントに特定して要約できます。
ボタンをクリックするだけで、10-K フォーム、リサーチ ペーパー、サードパーティのニュース サービス、財務報告書などの複雑なドキュメントから貴重な情報を抽出し、要約できます。こちらの動画で、その方法の詳細がご覧いただけます。
4. 規制コード変更コンサルタント
金融サービス業界では、世界中で毎年新しい規制が登場する一方で、既存のルールが頻繁に変更されるため、新しい要件を解釈してコンプライアンスを確保するには手作業や反復作業による膨大な量の処理が必要になります。デベロッパーは、コードの変更が必要となるような基本的な規制要件やビジネス要件の変更を迅速に把握し、コード変更の自動化とコード リポジトリに照らしたクロスチェックを支援して、ドキュメントを提供することが求められます。
生成 AI は、回答が記載されている特定の場所へのリンクを含んだ回答の要約を提供することで、コード変更を必要とする基本的な規制要件やビジネス要件の変更に関するコンテキストをデベロッパーに提供します。また、人間も関与したうえでのコード変更の自動化、コード リポジトリに照らしたコードのクロスチェック、ドキュメントの提供にも役立ちます。
たとえば現在、デベロッパーは、数千ページにわたるドキュメントを含むバーゼル III（国際的な銀行規制）の要件を満たすために、広範囲のコード変更を行う必要に迫られています。生成 AI を利用してバーゼル III の関連領域を要約すれば、デベロッパーはそのコンテキストを理解し、このフレームワークでコードの変更を必要とする部分を特定して、バーゼル III のコーディング リポジトリに照らしたコードのクロスチェックを実行できます。
5. カスタマイズされた金融関連のレコメンデーション
既存の ML ツールは、所与のパラメータに基づいて特定の顧客セグメント向けのマーケティングやセールス オファーを予測することはできるものの、こうした分析情報の迅速な運用化は必ずしも容易ではありません。
たとえば、特定の金融関連のレコメンデーションが記載されたマーケティング メールやアプリ内メッセージの作成には時間がかかる場合があります。生成 AI は、会話調の言葉を使用し、大規模な 1 対 1 のメッセージのやり取りをユーザーに合わせて行うことで、創造的なプロセスを支援できます。これは顧客体験、維持率、クロスセルの向上に役立ちます。
ビジョンから実践へ
金融サービス リーダーは、もはや生成 AI を試験運用するだけに留まらず、最も革新的なアイデアの構築やロールアウトにすでに着手しています。
たとえば、ドイツ銀行は、Google Cloud の生成 AI と LLM を大規模にテストし、金融アナリストに新しい分析情報を提供することにより業務効率と実行速度の向上を実現しています。銀行業務や金融アナリストのタスクの実行にかかる時間を大幅に短縮し、生産性を高めることで従業員を強化するチャンスは確かに存在します。
また、MSCI は Google Cloud と連携して、気候分析に重点を置いた投資マネジメント業界向けの生成 AI によるソリューションを推進しています。
Dun & Bradstreet は最近、生成 AI の取り組みに関して Google Cloud と協力し、複数のアプリケーションにわたってイノベーションを推進する旨を発表しました。
使ってみる
生成 AI は単なる新しいテクノロジーにまつわる流行語ではなく、企業が価値を創造するための新しい手法といえるものです。生成 AI は依然として導入の初期段階にありますが、金融サービス機関の運営方法に革命をもたらす可能性を秘めています。
生成 AI の使用を一足飛びで開始する方法について詳しくは、電子書籍「生成 AI のエグゼクティブ ガイド (英語)」をダウンロードのうえご確認ください。
