SOMPOシステムズ: Kubernetes、クラウドネイティブ技術を活用しプラットフォームを標準化

SOMPOシステムズ: Kubernetes、クラウドネイティブ技術を活用しプラットフォームを標準化
SOMPO グループの一員として、グループが掲げる「安心・安全・健康のテーマパーク」という構想の実現を IT 技術・ソリューションで支える SOMPOシステムズ株式会社(以下、SOMPOシステムズ)。同社では近年、サステナビリティの促進や開発力強化のためにクラウド ネイティブへのチャレンジを続けており、その一環として Google Cloud を基盤とした PaaS 環境の利用標準化を実施しました。この標準化の狙いや、Google Cloud の採用理由などについてお話を伺いました。

利用しているサービス:
Cloud RunCloud StorageCloud SQLCloud CDNCloud MonitoringGoogle Kubernetes Engine(GKE)

利用しているソリューション:
Application ModernizationAccelerate App Dev & Delivery

将来を見据えたクラウド ネイティブ化の促進に向けて Google Cloud を採用

SOMPO グループでは現在、「”安心・安全・健康のテーマパーク” により、あらゆる人が自分らしい人生を健康で豊かに楽しむことのできる社会を実現する」というパーパスを掲げ、国内外に向けて損害保険や生命保険、介護・シニア事業、デジタル事業など幅広くビジネスを展開しています。それらの事業を支えるシステム開発や保守運用を担当する SOMPOシステムズでは、デジタル トランスフォーメーションの推進や新規サービスの開発において、パブリック クラウドの積極的な利用を進めてきました。

同社における従来のパブリック クラウドの利用は、IaaS によるリフト&シフト。すなわち、オンプレミス環境のアーキテクチャをそのままクラウドに移行する方式が中心でした。しかし、5 年後、10 年後を見据えた場合に、その進め方のままでは立ち行かなくなるという危機感を持ったと、SOMPOシステムズ 取締役 常務執行役員の 中津 武典氏は語ります。

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「現在、我々がクラウド化に積極的に取り組んでいる理由は主に 2 つあって、ひとつはサステナブルなシステムを提供すること、もうひとつは開発力を強化することです。メインフレームとフロント サーバーだけで構成されていた昔と違い、今はシステム・サービス連携が多くアーキテクチャが複雑化し、管理するサーバーの数も日々増え続けています。リリースの頻度も高く月平均 200 件を越えており、リリースに向けたレビューやデプロイ、テスト、障害対応などを今後も従来と同じやり方で 1 つずつ手作業で行うことは決してサステナブルとは言えません。将来に向けて積極的にクラウド ネイティブを推し進め、高度化・自動化によって品質・生産性向上を加速させ、開発力を強化していく必要がありました。」

この危機感に対する解決策として取り組んだのが、全社的な PaaS 利用の推進でした。それまでの IaaS 中心のクラウド化から、PaaS 中心のクラウド化に舵を切った理由を、SOMPOシステムズ アーキテクト本部 クラウドアーキテクチャグループ統括部長の三ツ木 雄一氏は次のように説明します。

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「IaaS を利用して 1 つのビジネスを 1 つのサーバー内で完結させるというモノリシックな構成は、作りやすい反面、密結合であり耐障害性やスケーラビリティが低くなる傾向があります。PaaS を活用しマイクロサービス化することで、耐障害性やスケーラビリティを高めることができます。またマイクロサービスごとにローンチできるため、タイムリーかつ柔軟な修正が可能という点も強く出てきます。さらに、PaaS に加えて可観測性や CI / CD などの周辺機能を共通化することで、ビジネスに対してより素早くアプローチできるようになると考えました。」

PaaS 推進に向けた標準プラットフォームとして Google Cloud を採用する決め手となったのは、コンテナ オーケストレーションのスタンダードである Kubernetes の開発元であることや、フルマネージドなサーバーレス プラットフォームとして Cloud Run が利用できること、周辺環境の各種マネージド サービスが充実していることなどが挙げられると、SOMPOシステムズ アーキテクト本部 クラウドアーキテクチャグループ 課長 / ITS Specialistの関谷 雄太氏は語ります。

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「要件としてサーバーレスまたはコンテナが必須であるため、まずは複数のコンテナ製品に対して当社にとっての使いやすさとは何かという観点で比較検証を行い、その結果 Kubernetes にアドバンテージがあるとの結論に至りました。そのうえで、GKE(Google Kubernetes Engine)の使いやすさや、Cloud Run によって運用管理コストの削減が見込めること、Anthos Service Mesh のように将来の拡張性を考えた際の選択肢が充実していることなどを考慮して、最終的に Google Cloud に強みがあると判断しました。また、OSS をベースとした技術展開が行われていることで、比較的ベンダー ロックインのリスクが低いという点も評価しています。」

IT アーキテクチャ標準と実装ガイドラインの策定により、社内における PaaS 利用の基準を明確化

中津氏によれば、PaaS 推進の方針を決定した後も、実際の PaaS 利用は思うように進まなかったといいます。その理由として、PaaS や IaaS を使い分ける明確な基準がなかったことに加え、クラウド ネイティブのアプリケーションやアーキテクチャの理解が十分ではなかったことを挙げています。このような背景から、SOMPOシステムズが Google Cloud と連携して取り組んだのが PaaS を社内標準とするための IT アーキテクチャ標準の策定と、実装ガイドラインの整備、そして共通基盤の開発でした。

IT アーキテクチャ標準は、「どのような IT アーキテクチャを使って開発を行うべきか」を定義した損害保険ジャパン株式会社における標準仕様です。実装ガイドラインは、PaaS 製品を含む Google Cloud 製品を利用した開発や品質保持の実装方針等をまとめたものになります。いずれも年次単位で改訂を行うことにより、新規領域や新しい技術に適切に対応しています。これらの標準やガイドラインの策定において特に重視しているのはセキュリティと品質であり、FISC 安全対策基準に加え、Google Cloud チームをはじめとする社外のアドバイザーの意見なども積極的に取り入れているとのことです。

具体的なクラウド プラットフォームの利用標準としては、フルマネージドの Cloud Run の利用をメイン ストリームとして定めています。この方針について三ツ木氏は次のように説明します。

「クラウド プラットフォームにもさまざまなものがありますが、当社では 例えば Cloud Run によるオート スケーリング機能を利用することによる運用負担の軽減、またコンテナ技術の業界標準である Kubernetes による広く技術者の登用が可能であることを重視しました。GKE は Linux コンテナ以外に Windows コンテナを活用可能であり、過去採用したパッケージ ソリューションの移行も可能である点を高く評価しています。実際にどのプラットフォームを利用するのかは利用標準に示されたデシジョン フローに従うことで、案件ごとに明確に選択することができます。」

SOMPOシステムズでは、IT アーキテクチャ標準や実装ガイドラインの整備と並行して、クラウド環境における共通化すべき仕組みや機能をパッケージ化した共通基盤の開発も行っています。共通基盤では、ウイルス対策ソリューションや、データ中継システム、ジョブ管理システム、ログ管理、構成チェック、認証機構、CI / CD 基盤、クラウド運用サービスやコンテナ イメージ管理機能など、どのサービスにも必要となる機能を提供することによって、同じ機能の重複した開発を避け、それぞれのサービスに対する本来の開発に専念できる体制を整えます。

「共通基盤により全体最適化されたクラウド環境を活用することが可能です。全体最適には 3 つの目的があり、ひと つはセキュリティの確保、もうひとつは構築・運用の効率化、最後に品質の担保です。共通基盤によりシステム開発に初めてかかわる開発者も高品質かつ効率的に開発に注力することができます。今後も IT アーキテクチャ標準と実装ガイドラインを更改し開発力強化を推進します。」(三ツ木氏)

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クラウドを利用したシステム開発の要として、人材育成にも注力する

SOMPOシステムズでは、IT アーキテクチャ標準や実装ガイドラインの作成、共通基盤の開発と並んで、社内でのクラウド人材の育成にも力を入れています。人材育成への取り組みについて、中津氏は次のように説明します。

「クラウドを活用できる人材をどれだけ作ることができるかが、将来的なシステム開発の可能性を広げる要になると考えています。 SOMPO グループ全体で 1,000 人、SOMPOシステムズでは 774 人のクラウド人材を育てることを目標に掲げて組織全体でチャレンジしています。具体的なクラウド人材育成の活動としては、​​継続的な社内勉強会の開催、社外研修や Google Cloud が提供しているトレーニング プログラムの活用、損害保険ジャパン株式会社 DX 推進部門(内製開発チーム)への出向など、さまざまな施策を行っています。」

Google Cloud チームと連携した取り組みは、技術的なアドバイスや勉強会などによる情報共有に加えて、社内における意識改革の面でも大きな価値を生んでいると中津氏は続けます。

「Google Cloud チームからは、技術的なサポートだけでなく、Google の企業文化からも多くのことを学ばせてもらっています。例えば、心理的安全性に対する考え方、インシデントが発生した際にそれを将来に向けた学びに変える意識など、世界中のお客様に対して多数のクラウド サービスを提供してきた先駆的な企業ならではの文化は大変参考になります。」

Google Cloud ブログより

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