利用しているサービス:
Compute Engine, Cloud Storage など
人工衛星や AI など、最新テクノロジーの力で熱帯泥炭地の地下水位をコントロール
今や世界の最重要課題となっているサステナビリティ。Google Cloud は 10 年間にわたって、カーボン ニュートラルという観点からこの課題に向き合い、世界中の組織がカーボンフリーで持続可能なシステムに移行できるよう取り組んできました。そうした中、すでにいくつかの成果を出しつつあるのが、住友林業と IHI が立ち上げ、後に Recursive が加わることで大きく加速した「NeXT FORESTプロジェクト」です。このプロジェクトでは住友林業と IHI が培ってきた技術で、かけがえのない森林や熱帯泥炭地を守り、発展させることを目指します。手つかずの森林の保護だけでなく、既に人の手が入った森も修復し、管理・モニタリングすることで、環境・社会・経済を調和させることが本プロジェクトのゴールです。
住友林業では、地域住民への生活基盤提供も含めた経済的にサステナブルな植林事業と保護価値が高い森林の保全の両立が、ESG の観点において大きな意義を持つと考え、2010 年より、インドネシアでの植林事業を開始。しかし、その実現には想像をはるかに越えた熱帯泥炭地ならではの苦労があったと、住友林業 資源環境事業本部 副本部長 兼 脱炭素事業部長 加藤 剛氏は説明します。
「かつて水分が 9 割を占める泥炭土壌では植林のために排水する農林業を行っていました。しかし、当時の手法では地下水位をコントロールしきれず、過剰な乾燥の結果、度重なる消火困難な泥炭火災が起きました。実際、2015 年にはエルニーニョ現象による大規模な泥炭火災が発生しており、インドネシア全土で約 260 万 ha もの森林が消失。このとき発生した CO2 は日本の化石燃料由来の年間 CO2 排出量を超えたと言われています。泥炭火災を防ぐには地下水位が 40 cm よりも低くならないように管理するのが有効ですが、地下水位が高くなりすぎると植林木の生育が妨げられるため、年間を通して水位を適切に調整しなければなりません。」
泥炭土壌のボーリング調査の様子(左が加藤氏)
「IHI が培ってきた人工衛星を用いた地上情報のセンシング技術を用いることで、住友林業が確立した泥炭地管理モデルをインドネシア以外の世界中の熱帯泥炭地で活用できるのではないかと考えました。その実現に向け、まず手がけたのが、長らく培われてきた住友林業のノウハウから属人性を排除し、誰でも利用できるかたちにした汎用的な水理モデルの開発です。このとき、加藤氏が強くこだわっていたのが時間をかけずに実現するということでした。10 年かけて精緻な物理モデルを開発しても、その間に多くの自然が失われてしまったのでは意味がありませんから。そこで、AI 技術を用いて開発速度を高めるべく、SDGs に対する強い情熱を持つ優秀な人材を多数擁する、Recursive に声をかけ、我々のプロジェクトに加わっていただきました。」
地下水位予測システム イメージ