誰もがパートナーになれる NFT のエコシステムへ

誰もがパートナーになれる NFT のエコシステムへ

誰もがパートナーになれる NFT のエコシステムへ

NFT(Non-Fungible Tokenの略)が2021年から急激に注目を集めている。NFT、すなわち非代替性トークンとは、唯一無二であることの証明ができるブロックチェーン技術を使ったデジタル資産を指す。この技術を使い、ファンやコレクターが公式ライセンススポーツのNFTを購入、取引、共有できるよう、NFTエコシステムを開発しているのがCandy Digital(本社:米ニューヨーク)だ。「日本の文化が大好き」と親日家の一面ものぞかせる同社CEOのScott Lawin氏に、創業までの経緯やNFTの魅力、日本市場での展開など話を聞いた。

ブロックチェーンと出合い、デジタル資産の可能性に注目

――まず、これまでの経歴を教えて下さい。

 私はちょっとユニークなキャリアの持ち主で、マサチューセッツ工科大学(MIT)で建築を学んだ後、金融業界に入りました。最初に入社したのがゴールドマン・サックスです。ヘッジファンドやプライベート・エクイティ投資事業に携わり、テクノロジーと金融の接点にあるビジネスに焦点を当て、新しい市場や金融商品を開発してきました。金融業界にいる時はよく日本にも訪れました。

私はテクノロジーがどのように新しいマーケットを開拓し、技術によって、新しい市場がどうなるか、あるいは新しい市場をどう作るか、ということに常に興味があったのです。

私の元同僚で、現在私たちの主要投資家の1人でもあるMike Novogratz氏がブロックチェーンや暗号資産エコシステムを展開するGalaxy Digitalを立ち上げました。彼とのビジネスを通じて、2016年にビットコインとブロックチェーン技術に出合いました。その技術を深く理解していくうちに、デジタル資産の所有権という考え方がいかに強力だということに気づいたのです。それが現在のCandy Digitalに繋がっています。

 

Scott Lawin
Candy Digital
CEO
マサチューセッツ工科大学(MIT)卒業後、Goldman Sachsに入社。ヘッジファンドやプライベート・エクイティ投資事業などに12年間携わった後、Fortress Investment Groupにてリクイディティマーケット/ヘッジファンドCOO、Moore Capital ManagementにてCOOを務めるなど、金融やVC業界でさまざまな役職を歴任。2021年にスポーツライセンスのアパレル商品・グッズの製造や流通などを手掛ける企業Fanatics、Michael Rubin、Mike Novogratz、Gary Vaynerchukらが出資しCandy Digital設立。CEOに就く。

――Candy Digital設立のきっかけを教えて下さい。

 パンデミック中にブロックチェーンで何が起きているか調査したことがきっかけです。機関投資家がブロックチェーン投資、特に仮想通貨に慣れてきて、新たにデジタル所有権という可能性が広がっていることに注目したのです。

そこで私たちは、消費者とブロックチェーンやデジタル資産の所有権が繋がるのはどこかと考えたとき、芸術、音楽、文化、スポーツなどの既存のコンテンツが重要な役割を果たすと気付いたのです。

文化やスポーツは、人々が熱狂する既存のコンテンツであり、そのコンテンツにはコミュニティが存在します。私たちは特にスポーツに注目しました。世界中に何十億というスポーツファンがいて、特定のチームや選手に対して非常に情熱的なコミュニティがあるので、私たちはそこに焦点をあててビジネスを展開しようと思ったのです。

――どのような製品を展開していますか?

 アメリカの野球でいえば、デジタル・コレクターズという従来のトレーディングカードに似たデジタルカード、ジャージやサイン入りボールなどのデジタルでの記念品や衣類、重要なイベントの記念品、ゲームを観戦した際のプレミアがつくようなデジタルチケットなどのコアな製品があります。また、アメリカ野球殿堂博物館とのコラボによる殿堂入り選手において、2022年殿堂入りICONシリーズ”も始めました。

このように、ファン体験の点と点を結ぶことが、このテクノロジーが進化する先で最もエキサイティングなことだと考えています。

Image: Candy Digital

NFTの魅力は永久資産であること。グローバル展開を視野に入れ、日本市場にも注目

――NFTに特に注目した理由とNFTの魅力について教えて下さい。

 私自身がコレクターだからです。私たちのビジネスに携わる人々にとって重要な事の1つは、自分自身がファンであり、コレクターであるということです。自分のアイデンティティを語るものを集め、コミュニティと繋がることは、人間のDNAに深く刻み込まれます。

美術品、レコードなど、収集した物には確かな価値がありますが、個人的な特別な感情の価値もありますよね。なぜ特定のチームを追いかけるかというと、両親が大ファンだったからファンになった、というようなストーリーが実は多いのです。

NFTはブロックチェーン上に存在し、仮想的な資産に対する独自の所有権を提供すると同時に、同じ志を持つ人たちと繋がる機会も提供します。

NFTのもう一つの魅力は、永久資産だということです。デジタル・アーティストはデジタル作品を制作し、それをNFTとして販売すれば、利益の一部を受け取り、その後の2次市場では、そのデジタル作品の取引に応じてロイヤリティを稼ぎ続けることができます。そういう点から、NFTの経済性は、従来のアートや記念品の市場、オークション市場よりもずっと民主的なのです。

Image: Candy Digital

――御社のビジネスパートナーを教えて下さい。

 まずスポーツから始めました。MLB(メジャーリーグベースボール)とメジャーリーグ選手会が、最初のパートナーでした。野球が米国や世界的に重要なスポーツであることを考えると、これらは現在、私たちのビジネスの中で最も大きな部分を占めています。

MLB以外のスポーツ分野では、レスリングのWWEやNASCARのレースチーム、Track Titans、アメリカ野球殿堂博物館とパートナーシップを結んでいます。

また、大学スポーツのカレッジフットボールとバスケットボールの最初のプロジェクトも行っています。

2021年、大学スポーツの選手が自分の名前を画像や肖像に使用できるようにするための改正がありました。若いアスリートがファンと繋がり、人々が彼らのキャリアをフォローできるようなデジタル資産を作成する機会は、スポーツ以外の分野でも非常にエキサイティングだと考えています。

スポーツ以外ではNetflixとエンターテイメント及びメディアの2つの分野でパートナーシップを結んでいます。Netflixの独占パートナーであり、「Stranger Things」という番組に関する最初のプロジェクトを一緒に行っています。2022年5月には、デジタル写真販売大手Getty Imagesとの契約も発表しました。デジタル写真のNFTの収集を通じて、アーカイブを市場に投入する予定です。

――日本を含めグローバルに展開する予定はありますか?

 世界中のスポーツリーグやスポーツチーム、コンテンツ所有者と現在話し合いをしています。私たちのビジネスに国境はありません。世界規模で興味深いチャンスがたくさんあります。既存のパートナーであり、グローバルに展開しているNetflixの例を挙げると、私たちとの最初のプロジェクトでは世界70カ国、15万人が参加しました。

日本の市場でいえば、大谷翔平選手はアメリカ野球界で最も輝いている選手の1人です。彼のデジタル・コレクターズアイコン、デジタルカードは、高い売り上げを記録しています。日本だけでなく アメリカの野球コレクターにも大谷選手への関心が非常に高いです。そういう点を鑑みると、日本には大きなチャンスがあると思っていますので、日本のリーグやチームとも話し合いをしています。

Image: Candy Digital

――日本ではどのようなパートナーシップを求めていらっしゃいますか?

 ビジネスパートナーを考える上で最も重要なことは、ファンにとって本当に価値のある、重要なものを作ることができるかということだと思います。なぜなら、デジタル資産は永遠に生き続けるからです。

誰もがコレクターになれるようなエコシステムの構築も視野に入れ、デジタルの所有権を物理的なアイテムや体験にも繋げたいとも考えています。そのために、複数のチャネルとパートナーを組み、実現する予定です。

今後のビジネスにおいてもライセンスコンテンツと知財に重点を置いていくことになると思います。スポーツだけでなく、他のメディアやエンターテインメント、またはカルチャーの部分におけるパートナーとも、引き続き拡大のチャンスがたくさんあると考えています。

日本のアニメは世界的にも人気がありますので、アニメの分野も検討していますし、ゲームやゲーミフィケーションといった分野にも、興味深い展開があると考えています。

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