専門組織「クラウドCoE」が導く、SOMPOグループ全社のビジネス変革

専門組織「クラウドCoE」が導く、SOMPOグループ全社のビジネス変革

専門組織「クラウドCoE」が導く、SOMPOグループ全社のビジネス変革

「安心・安全・健康のテーマパーク」を掲げて、グループ全社のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し、次世代ビジネスの創出に臨んでいるSOMPOグループ。その一環としてSOMPOホールディングスは2つの宣言「クラウド・バイ・デフォルト構想」「クラウド人材1000名計画」を発出。これらの推進主体として、クラウドをオンプレミスの代替としてではなく、競争力や事業創出の源泉に位置づけ、クラウドネイティブな活用を実践するための専門組織「クラウドCoE(Center of Excellence)」を始動させている。本稿では、1年半に及ぶクラウドCoEの軌跡を通じて、SOMPOがとらえるクラウドの本質と実践に迫ってみたい。

最初期からクラウドに取り組んできたSOMPO

SOMPOグループにおけるクラウドへの取り組みの歴史は長い。2003年に損害保険ジャパンが日本におけるセールスフォース(Salesforce)のファーストユーザーの1社となるなど、SOMPOホールディングスの設立以前より、SaaS/クラウドの導入に先鞭をつけてきた。

そんなSOMPOが2020年度に宣言した「クラウド・バイ・デフォルト構想」は、政府がデジタル政策標準ガイドラインの付属文書として2018年6月に示した「クラウドファースト」の指針を受けてのものだが、実は、SOMPOのIT企画部ではすでに2017年時点でクラウド利用へ向けての運営要綱の作成に着手。以来、クラウドの動向に注視しながら環境づくりに取り組んできた経緯がある。

同社IT企画部の場合、ホールディングスのミッションとしてガバナンスや戦略の策定といった上流工程をメインに担う。当然、クラウドの環境づくりに割ける人的リソースは限られており、実際、当時はクラウドの活用と言っても、統制やグループ会社との調整の域にとどまっていた。運営においては、グループ内で先行している企業が作成した既存のルールを踏襲するしか術がなかったという。それでも調査すればするほど、メンバーたちのクラウドへの期待は高まり、「もっとグループ会社に貢献できるエッジの効いた施策に取り組みたい」との思いが部内で漂い始めていた。

取り組みを一気に加速させるべく、SOMPOは冒頭の2つの宣言を発出した。2020年度の「クラウド・バイ・デフォルト構想」と、2021年度からスタートした3カ年のIT戦略における「クラウド人材1000名計画」である。そして、これらを推進するのが、IT企画部に設立された「クラウドCoE(Center of Excellence)」である。

クラウドCoEの設立には、同組織の責任者を務める、IT企画部 企画グループ クラウドアーキテクトの土屋敏行氏(写真1)の存在が欠かせなかったという。損害保険ジャパン、SOMPOひまわり生命保険、セゾン自動車火災保険でクラウド構築からクラウドベースのシステム開発を手がけ、名立たる実績を残してきたキーパーソンである。これまでグループ会社がクラウドに取り組む際、IT企画部への問い合わせが絶えなかったが、常に相談に乗っていたのが土屋氏だった。


写真1:SOMPOホールディングス IT企画部 企画グループ クラウドアーキテクトの土屋敏行氏

ヒアリングで見えたグループ各社の共通課題

設立の経緯はこうだ。土屋氏を迎えたIT企画部は2020年上半期に、グループ各社のCIOおよび情報システム部門長にヒアリングして、ITにおけるさまざまな課題の徹底把握に努めた。そこで分かったのは、いずれの事業会社もホールディングスの支援を求めているということ。とはいえ、各社の業容は損害保険から生命保険、介護・シニア、ヘルスケア、リスクマネジメント、デジタルと多岐にわたるうえ、支援の要素もITインフラからアプリケーション、IT品質、プロジェクトマネジメントなどさまざまだ。業務面と技術面の両方から広範囲な知見が求められるため、ホールディングスの組織とは言え、IT企画部がこれらを網羅的に支援することは不可能に近いと思われた。

そこで、さらに共通項を探ったところ、各社のほとんどがITインフラの課題に直面していることが分かった。特にプライオリティが高かったのは当然ながらクラウドだが、進化の著しいこのテーマが、単なるITインフラ支援の領域を超えている。

そうした認識の下、IT企画部は支援すべき目的・機能・予算を明確化し、クラウド活用のためのグランドデザインを策定。それが経営陣の共感を得て、2021年4月に3カ年計画に基づく専門組織としてクラウドCoEが正式に発足した。新しいサービスをクラウド上で実装しようとする機運がグループ各社で高まっていて、基幹システムをリフト&シフトしようとする会社も増えつつあったタイミングだった。土屋氏はクラウドCoEの位置づけを次のように説明する。

「当社のトップが“クラウド・バイ・デフォルト”を宣言した背景に、経営的なスケールメリットを追求するのみならず、オンプレミスでは実現できないクラウドならではの変化対応力とスピード感への期待が込められています。それだけに、クラウドCoEでは、直面する課題への対応にとどまらず、ビジネスの拡充・成長・変革といった将来につなげることを目指しています。クラウドネイティブな活用の礎を築くための取り組みとなります」

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