これまでの慣習を捨て、新しい働き方を追求。地域の課題解決に向けた発想を生み出す環境づくりのために、 網走市が ChromeOS を導入

これまでの慣習を捨て、新しい働き方を追求。地域の課題解決に向けた発想を生み出す環境づくりのために、 網走市が ChromeOS を導入
北海道北東部、オホーツク海沿岸に位置する網走市は、2024 年に現庁舎から新庁舎への移転を予定しています。移転と同時に職員が庁舎内外どこにいても働きやすい業務環境を確立するため、若手グループによる ChromeOS 活用の実証実験をスタートしました。地域の課題解決に向け、そのベースとなる新しい働き方の実現に取り組んでいます。利用している Chrome Enterprise サービス: Chrome EnterpriseChromebook

業務上の非効率を解消し 1 人 1 台インターネット接続端末の活用を進める

網走市役所では以前まで「α(アルファ)モデル」で三層分離を行い、業務用のシンクライアント端末をLGWAN 系ネットワークに接続する形で日々の業務に取り組んでいました。しかし、メールの添付ファイル無害化処理に要する時間が長かったり、働く場所が制限されていたりと業務に非効率が生じていたと、デジタル化推進室参事の山縣叔彦氏は話します。

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「メールを LGWAN 側で受信する前に添付ファイルは削除されてしまうため、いったんインターネット側に接続し無害化処理をしてからファイルを取り込む必要があります。この作業が 1 回 5 分程度かかり、しかも 1 日に何度も行うので、かなりの時間を浪費していました」

加えてシンクライアントの処理速度が遅く、とくに多くの職員が業務を開始する朝の始業時にはフリーズすることもありました。さらに、端末はネットワークに有線接続されているため、庁内にいても自席から離れているとメールが確認できず、不便を感じていました。

また、部署ごとにスケジュール管理アプリが異なり、部署をまたいでスケジュール調整を行う場合は電話で日時をすり合わせていました。リモートワーク向けの端末も用意されていましたが、管理部署に足を運び、端末の空きを確認したうえで借りなければならず、端末の空きがなければリモートワークはできないという状態で、コロナ禍において社会情勢とのギャップを感じていたと語ります。こうした課題を前に、新たな端末導入に向けた取り組みをスタートさせます。人口減少、少子高齢化や社会保障費増加、人手不足、インフラや公共施設老朽化といった背景がある中、同市では 2022 年「関係人口創出」「市民サービス」「行政運営」「地域社会」の課題にデジタル技術を駆使して取り組み、持続可能なまちづくりを目指す「網走市 DX  推進計画」を始動しました。

この計画が動き出すきっかけとなったのは、2024 年 11 月に予定される新庁舎への移転です。「新庁舎建設に向けて若手の ICT 研究グループが設立され、リモートワークをはじめとする新しい働き方の提言書が出されました。その働き方を実現するためにも、1 人 1 台のインターネット接続端末が必須であることが明確になったのです」(山縣氏)

1 人 1 台のインターネット接続端末として ChromeOS の検証を決定

ICT 活用の新たな働き方に向けた課題を話し合う際、外部の専門人材として参与していた小林圭介氏が、Google の ChromeOS と Google Workspace によるデジタル化を提案。さまざまな角度から検討を重ねた結果、2021 年末、実証実験で ChromeOS の導入が決定しました。Google のツールを提案した理由を、小林氏はこう話します。

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「ChromeOS デバイスは起動が速く、バッテリーの持ちがよい点に加えて、端末費用や管理コストを低く抑えられ、端末にデータを残さないためセキュリティが強固である点が魅力でした。Google のツールは直感的に操作できるのでわかりやすく、共同編集機能を活用することで新たな働き方の推進もできると考えました」

提案を聞いた山縣氏は、ChromeOS や Google Workspace について Gmail や Google カレンダーなどすでに職員がプライベートで使い慣れているツールも多いことを評価。さらに、次の事実が決め手になったと話します。

「GIGA スクール構想で網走市をはじめ全国の多くの小学校や中学校には ChromeOS と Google Workspace がすでに導入されています。Google のツールを使っている子どもたちがゆくゆく社会で活躍してくれることを考えると、市が新庁舎に ChromeOS を導入する意義も大きいと考え、実際に検証してみることにしました(山縣氏)

実証実験で業務時間削減やペーパーレス化の効果を確認

実証実験は ChromeOS デバイス 16 台を導入し、2022 年 7 月にスタート。当初は若手 DX 研究グループのみを対象にしていましたが、同じ部署内のスケジュール調整での活用を検証するため、庁外での仕事や外部業者との打ち合わせが多い観光課の 9 人の職員全員も実証実験に加わりました。

「現在もまだ実証実験中ですが、Google カレンダーを活用してスケジュール調整が大幅に効率化されたことに加え、外部業者との打ち合わせで観光課職員が ChromeOS デバイスを開き、庁内外問わず Web 会議で、ペーパーレスで話し合っている光景を見たとき、導入してよかったと思いました。業務効率化はもちろん、リモートワークをはじめとする多様な働き方につながる期待をもっています」(山縣氏)

小林氏は「1 人 1 台端末でどこにいても情報を入力、確認でき、スケジュール調整も電話による確認がほとんど不要になりました。無害化処理の工数も削減され、1 カ月あたり 4、5   時間の時間削減を感じています。移転後に多くの部署で ChromeOS を活用すれば、全庁での業務時間削減の効果は相当なものになるのではないでしょうか」と話します。

端末の管理面では「ChromeOS デバイスと共に Chrome Enterprise Upgrade(ChromeOS  デバイスを管理するためのライセンス)を利用することで、実証実験用の 16 台の端末配備の作業は私 1 人で全て時間をかけずに完了させることができました。数百名の全職員向けに設定作業をする必要が出てきた場合も、Google 管理コンソール(管理画面)から一括で設定作業を進められるので、負担が大きく軽減されます」と山縣氏。

現在 16 台の ChromeOS デバイスも本番稼働に向けて管理部門などに徐々に導入を広げ、最終的には全職員への導入を進めていくといいます。

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市民サービス向上につながる発想を生み出す土台として

2023 年度いっぱいまで続く実証実験の先を見つめて、山縣氏は「ChromeOS の導入で働き方の意識が大きく変わってほしいという思いがあります」と語ります。たとえばドキュメント等の使用でペーパーレス化が進むことは望ましいことですが、それ自体が目的ではありません。

ChromeOS デバイスで資料を共有し、共同編集しながら会話をすることで新しい発想が生まれ、それが地域の住民にも還元されていくことこそが、網走市が目指す新しい働き方です。

「これまでの慣習的な働き方を一度捨て、いつでもどこからでもアクセスできる環境を使って情報共有とコミュニケーションを深め、市民サービス向上のために何ができるのかを考えるきっかけになることを期待しています」(山縣氏)

新庁舎への移転を契機に、DX 推進計画の具現化につながる新たな働き方の追求を始めた同市の今後に注目です。


網走市
北海道北東部、オホーツク海沿岸に位置する網走市は、人口約 3 万 3000 人の都市。漁業が盛んであると同時に、北海道有数の農業地帯としても知られている。また観光都市としても有名で、冬の流氷や、網走監獄などの名所を有する。

Google Cloud ブログより

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