クラウドへの移行でありがちな10の失敗(上)

クラウドへの移行でありがちな10の失敗(上)

 クラウド戦略は1つのミスが大きな失敗につながることがある。ありがちな失敗のポイントを見ていく。

 クラウドの登場前と登場後でITやビジネスは根本的に変わった。基本的にクラウドはプラスの変化をもたらした。しかし使い方を間違えると痛い目に遭う。ビジネスの足を大きく引っ張るばかりか、長期的な競争力を損なうことにもなりかねない。

現在のビジネス環境は変化が目まぐるしく、何かあったときのリスクは大きい。クラウドの適切な利用が不可欠だ。クラウドでありがちな10の失敗を確認しておこう。

1. 計画が不十分

クラウド戦略を詳細に定めていない企業はいずれ問題に直面する恐れがある。「クラウドへの移行は現実味のある体系的なアプローチで臨むことが不可欠だ」と、仏コンサルティング企業Capgemini傘下のCapgemini Americasでセンター・オブ・エクセレンスのトップを務めるWilliam Peldzusシニアディレクターは言う。

クラウドに移行するときには戦略的な思考が極めて重要だとPeldzus氏は言う。「アーキテクチャー面の設計や準備を事前にきちんと行っておけば、問題の発生を防げる可能性が高まる。準備が不十分な状態で問題が起きれば、トラブルシューティングやデバッグで数日や数週間、数カ月といった期間を要することにもなりかねない」

少しずつ前進を重ねていくこともクラウドの成功につながるとPeldzus氏は言う。計画から移行までの個々の過程で起きた小さな失敗から学ぶことも重要だ。「一足飛びにクラウドを導入して、対応方法はその場で考えるというやり方ではうまくいかない」と同氏は注意を促す。

2. 移行は1回のみのプロセスという誤解

クラウドへの移行は1回のプロセスですべてが完了するわけではない。「複雑な問題が絡み合っていて、継続的に取り組んでいくことになる」と、コンサルティング企業Accentureでクラウドファースト部門を率いるKarthik Narain氏は言う。

クラウドへの移行について、開始日と終了日が明確に定まっている一般的なプロジェクトと同じようなものだと誤解しているITリーダーは多い。Accentureが1月に発表した調査結果によると、クラウドへの移行が既に完了したと考えている企業は32%ある。しかし、こうした企業がクラウドの価値を十分に引き出せているとは限らず、隙があることが考えられる。「パブリッククラウドやプライベートクラウド、エッジなど、多彩な形態でクラウドを戦略的に活用している企業に比べると、コスト削減にばかり意識が向いている企業は競争が不利になる可能性がある。実際、当社の調査結果を見ても、効率化だけを考えている企業よりも、クラウドを戦略的に捉えている企業の方がコスト削減効果はむしろ大きい」(Narain氏)

3. クラウドにかかるコストの見通しの甘さ

クラウドに移行すれば直ちにコストを削減できるとの誤解も多い。「現実にはクラウドへの移行にはかなりのコストがかかる。すべてのコストを洗い出して全体像を把握しておかないと、会社にとって大きな打撃となる可能性がある」と、米出版社John Wiley & SonsのAref Matin最高技術責任者は言う。

クラウドへの移行がその後のコスト削減につながることも多いとはいえ、綿密な計画は不可欠だ。それに、計画を立てておいたとしても、クラウドへの移行を進める中で隠れたコストが出現し、増えていくのは避けられない。「プロジェクトが始まる時点で、全体を網羅した包括的なクラウド予算を確保しておく必要がある」(Matin氏)

クラウド移行のコストはさまざまな形で現れる。既存のデータセンターの撤去費用のように明白なコストもあるが、そこまで歴然としていない費用の方が多い。Matin氏はその例として、従業員のリスキリングとアップスキリングのための費用や、適切なクラウド人材を確保するための費用、組織改編の費用を挙げ、「こうした費用すべてについて計画で考えておく必要がある」と話す。

次回(4月12日公開)に続く

CIO Magazine より

クラウドカテゴリの最新記事