AWSとSalesforceがリアルタイムデータ連携を強化 新たな顧客体験価値がビジネスの拡大をもたらす

AWSとSalesforceがリアルタイムデータ連携を強化 新たな顧客体験価値がビジネスの拡大をもたらす

データに基づく意思決定が可能な環境構築を

現在は、将来の予測が難しいVUCAの時代である。情報技術が進化し、コロナ禍によってわずかの間にワークスタイルや人々の購買行動も様変わりした。さらに、国家間の緊張関係も高まる一方であり、今もなお先行きが不透明な状況を迎えている。

こうした先の見えない世の中で、企業は自社のビジネスをドライブしていくにあたって何を拠りどころにしていけば良いのか。その1つの答えが“データ”であると、セールスフォース・ジャパン マーケティング本部 Sr Product Marketing Manager – Salesforce Platformの横井羽衣子氏は語る。「複雑な状況だからこそ、かつてのKKD(勘と経験、度胸)といった定性的な判断だけでなく、データという客観的なリソースに基づく意思決定がますます重要になるのです」(横井氏)

VUCA(※ 未来の予測が難しくなる状況)の時代に企業が意識すべきことは、作り手側の論理で製品を大量生産し販売するという従来型のビジネスモデルから離れ、デジタルや情報を駆使し、迅速に顧客ごとに個別最適化された体験をサービスとして提供していくことである。

「その際には、AIやロボティクス、自動化などの先端技術を導入するだけでなく、ビジネス戦略と共に組織全体の在り方を変革していく、すなわちデジタルトランスフォーメーション(DX)を実践する必要があります。その変革の基礎となるのが、情報が価値の中心となる環境、つまり高度な情報処理基盤を構築していくことです」(横井氏)

そういった“対顧客”を軸に置いた変革の中心として、具体的にはチーム間の連携が強化され、顧客との繋がりを深めて個別化された顧客体験を提供するための基盤を提供するのがSalesforceである。「Salesforceには、部門やシステム間がサイロな状態になることで 分散し、それぞれの組織で蓄積されていったデータを統合するための仕組みが用意されており、こうした機能を活用することで、Salesforce の環境を “シングル・ソース・オブ・トゥルース”のデータソースとし、ビジネス状況をタイムリーかつ適切に判断することを可能にする仕組みを提供しています」と、横井氏はデータドリブン型ビジネスを実践するにあたって、自社プラットフォームの優位性を説明する。

SalesforceとAWSが“連携”を強化

ビジネスをアップデートする際に考慮すべきもう1つの要素が、システムの俊敏性である。せっかくの連携基盤もローカル環境でモノリシック(一枚岩)なシステム内で動いているのでは、外部状況の変化やデジタル変革に対応できない。そこで有効なのが、パブリッククラウドの活用である。Salesforceも2016年にサービス提供基盤をパブリッククラウドに移行する決断を行い、そこからSalesforceとAWSのパートナーシップが始まっている。Salesforceは、サービスをパブリッククラウドにデプロイする「Salesforce Hyperforce」を発表しており、AWSの拡張性をSalesforceのサービスに取り入れると共に、両社で共同ソリューションの構築も進めている。

この連携に基づいた成果として、Salesforceが両社のサービスを活用しAWS上にオムニチャネルのコンタクトセンターを45日で立ち上げた事例のほかに、機能・サービス面でも「Salesforce CDP」と「Amazon Ads」の統合や、「Amazon SageMaker」からSalesforce CDPへのデータアクセスなどを実現し、データ連携やデータ活用の高度化を果たしている。

特にデータ連携機能として有効なのが、「Salesforce Connect」である。これにより、Amazon S3やAmazon DynamoDBのデータをSalesforceのアプリケーションに連携させることができるようになっている。

「Salesforce Connectを使うと、AWSのサービス上のデータをSalesforceのUI上でSalesforceのオブジェクトのように扱えるようになり、Salesforce の利用者はデータがどこにあるのかを意識する必要がなく簡単に参照、利用できるようになります。今後Amazon RDSなどより多くのAWSのデータサービスを含む新しいアダプタを追加していく予定です」(横井氏)

AWSとSalesforceのパートナーシップで今後も複数製品のリリースが予定されている(画面右はセールスフォース・ジャパン マーケティング本部 Sr Product Marketing Manager - Salesforce Platformの横井羽衣子氏)
AWSとSalesforceのパートナーシップで今後も複数製品のリリースが予定されている
(画面右はセールスフォース・ジャパン マーケティング本部 Sr Product Marketing Manager – Salesforce Platformの横井羽衣子氏)

柔軟なアプリケーション構築に適したDynamoDB

今回のパートナーシップの強化によってまず実現したのが、DynamoDB向けの連携コネクタだ。DynamoDBは、サーバーレスですぐに利用を開始でき、ビジネス規模に応じて自動でスケールできるDBである。AWSでは従来のERPやCRMシステムで使われている「リレーショナル型」DB(RDB)をはじめとして、目的に応じた8種類のクラウド型のマネージドDBを提供しているが、その中でDynamoDBは非RDBであるNoSQL DBの中の「キーバリュー型」のカテゴリーに属する。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン Database事業本部 シニア事業開発マネージャー 大田浩氏はDynamoDBについて、「パフォーマンスが早く、高スループットで低レイテンシー、制限のない拡張性を備えています。ユーザー数が多いWebアプリケーションやEコマース(EC)システムに適しており、ビジネスの変化に対応する柔軟なシステム基盤が構築できるのが特徴です」と表現する。

昨今のアプリケーションの特徴として、「インターネットスケール」が挙げられる。閉じられた社内で使うためのERPやCRMなどとは異なり、SaaSやECなどはネット越しに使うためユーザー数が非常に多くなることが想定され、場合によっては100万ユーザーに達することもある。それに伴いデータ量もどんどん増え、利用するユーザーもグローバルとなり、かつマイクロ秒レベルの応答パフォーマンスが求められる。DynamoDBは、そういった厳しい要件に対応できるという。

「DynamoDBは、ユーザー数が増えても高いパフォーマンスを提供できます。その際に、サーバーレスでクラウドの仮想サーバーを自動でスケール/スケールアウトするので、どんなにアクセスが増えてもサービスのユーザーは継続してシステムを利用し続けることができるのです」(大田氏)

AWSの8種類のマネージドDBの中からDynamoDBを選択する際の指針としては、①スケーラビリティが求められる、②数ミリ秒のレスポンスタイムで高速処理を返す必要がある、③アクセスパターンがシンプル――なシステムであることが挙げられる。

「Amazon自身がユーザーで、プライムデーになると66時間で16.4兆回のアクセスがあり、1秒間あたり80万同時アクセスがありますが、それらのトランザクションを遅延なく処理できています。キャピタルワンも2020年から銀行業務をAWSに移行し、データの処理をDynamoDBで行っているなど、多様な業態でユーザー数が多いグローバルなサービスで利用されています」(大田氏)

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