クラウド図鑑 Vol.25

概要

本稿では、Oracleのクラウドサービスの中で需要が多いと思われる「Oracle Database Cloud Service」と「Oracle Java Cloud Service」をとりあげるが、2015年9月の時点では、サービスが最終形でなく拡張中の部分があるため、両サービスのプレビュー的な情報として捉えていただきたい。現在Oracle は、積極的なクラウド戦略を打ち出しており、特に2015年6月には24種類のIaaS/PaaSのサービスを発表して、同社のPaaS/IaaSサービスの「Oracle Cloud Platform」を大幅に強化している。Oracleは、同社のERPやCRMなどエンタープライズ・アプリケーションのSaaSプロバイダーとしての歴史は10年以上と長く、むしろSaaSからPaaS、そしてIaaSという順番でクラウドサービスを拡充しているが、一方でIaaSのCompute(仮想マシン)サービスなどは、2015年10月2日の時点で日本では単体サービスとして未提供である。一方で最大手ミドルウェアベンダーとしてのPaaS系サービスは、データベースやJava以外にも、BI、ドキュメント、ビッグデータ、開発環境など多岐にわたるサービスを提供している。そしてPaaS系サービスで中心的となるのが、Database CloudとJava Cloudであり、オンプレミスのOracleデータベースとWeblogicミドルウェアと同じ環境を提供できるクラウドとして注目が高まると思われる。

Oracle Database Cloudの設定画面
Screenshot 2015-10-02 at 11.13.33
(クリックで拡大) 

URL   http://www.oracle.com/jp/cloud/paas/
2015年10月2日 株式会社クラウディット 中井雅也

機能

Oracleデータベースのサービスである「Oracle Database Cloud Service(以後Database Cloudと略)」は、オンプレミスのOracle Databaseと同じソフトウェアを、バージョンは「11g」「12c」から選択、エディションは「Standard Edition(11gのみ)」「Enterprise Edition(EE)」「EE High Performance」「EE Extreme High Performan(12cのみ)」から選択できる。CPUとメモリーのリソースは最大16CPUコア相当240GBメモリーまで設定、および必要なときにスケールアップが可能。SQL*Netによる全面的アクセスとroot OSとSYSDBA権限で細かくデータベースのコントロールが可能。Database Cloudは Oracle RACの構成が可能。構成の操作はプロビジョニング画面でRACのオプションを選択するだけだ。2015年9月時点ではOracle RACによるクラスタリングのオプション、Data Guardによるレプリケーションのオプションは今後の提供予定となっている。なおOracle Databaseのクラウドサービスのラインアップとしては、本稿では割愛するが下位にスキーマ、またはPDB(Plugable Database)によるマネージドサービス、上位にOracleのフラッグシップであるExadataを1/4ラック、1/2ラック、Fullラックで提供するExadata Serviceがある 。Weblogicミドルウェアのサービスである「Oracle Java Cloud Service」も、オンプレミスのWeblogicと同じソフトウェアを、バージョンは「11g」「12c」から選択、エディションは「Standard Edition」「Enterprise Edition(EE)」「EE with Coherence」から選択できる。CPUとメモリーのリソースは最大16CPUコア相当240GBメモリーまで設定、および必要なときにスケールアップが可能。また、OracleのSOAやBPMなどFusion Middleware製品群をJava Cloudに持ち込んで使用できる。データベースはDatabase Cloudを使用する前提となっている。これにより、Weblogicのアプリケーション実行基盤とOracleのデータベースによる、エンタープライズアプリケーション環境がクラウド上でマウスクリックの操作だけでオンデマンドで構築できる。Oracleの運用管理ソフトウェア「Enterprise Manager」でオンプレミスとクラウドを一元管理できる。Database Cloud、Java CloudともにベースとなっているOracle Linux 6にsshログインをしてコマンドで操作もできる。Eclipse, Netbeans, JDeveloperなどの開発ツールが使えるが、開発環境のクラウド「Developer Cloud Service」を使えば、開発から実行までエンドツーエンドのクラウド環境をクラウドで揃えることができる。

使いやすさ

Database Cloud、Java CloudともにCloudの日本語化されたコンソールからインスタンスの作成・設定・起動・終了などを行うことができる。Database Cloud、Java Cloudもオンプレミスと同一のソフトウェアであるため、開発者および管理者からは同じように扱える。ベースとなっているOracle Linux 6にログインして操作ができるのでLinux技術者が扱いやすい。ドキュメントはチュートリアルなどが日本語化されている。

マニュアルや書籍など

Oracleによって日本語のマニュアルやチュートリアルが用意されている。しかし日本語になっていないものも多いという状況である。

拡張性

Database Cloudは、CPUとメモリーのリソースは最大16CPUコア相当240GBメモリーまで必要なときにスケールアップが可能。また、2ノードのOracle RACの構成が可能だ。2015年9月時点ではOracle RACによるクラスタリングのオプションは提供予定となっており、スケールアウトはできない。巨大な処理能力を必要とする場合には、費用は高めだが、「Exadata Service」のクラウドサービスというオプションがある。Java Cloudは、ロードバランサーによるスケールアウトが可能。各インスタンスのCPUとメモリーのリソースは最大16CPUコア相当240GBメモリーまで必要なときにスケールアップが可能。またCoherenceのオプションでインメモリー処理も可能。Weblogic、Coherenceのキャッシュともにダウンタイムなしに自動的にノードを追加・縮小する自動スケールが可能。

可用性

Database Cloudは Oracle RACの構成が可能。構成の操作はプロビジョニング画面でRACのオプションを選択するだけだ。2015年9月時点ではOracle RACによるクラスタリングのオプションがなく、今後の提供予定となっている。またData Guardによるレプリケーションのオプションもなく、今後の提供予定となっている。したがって、現状ではデータベース障害においてはバックアップからデータベースを回復することになり、リカバリー時間を比較的長くとれるユースケースに向く。自動バックアップは1日1回で7日ぶんをローカルディスクに、30日ぶんをクラウドストレージに保持できる。Java Cloudではロードバランサーによる冗長化によって可用性を高めることができる。Database Cloud、Java Cloudともに複数データセンターを使う地理的な冗長性を持たせるようなオプションは標準では用意されていない。

SLA

Database Cloud、Java Cloudともに明確なSLAの規定はない

自動化機能

Database CloudもJava Cloudはマネージドサービスであるので、ハードウェアやOSのメンテナンス、バックアップなどの運用タスクは自動化される。パッチも自動的に配布され、マウスクリックで適用あるいはロールバックが可能。適用タイミングをスケジューリング、あるいは、ローリングによる無停止のパッチ適用や、不具合が起きた際のロールバックも自動化可能。両サービスともにベースのOracle Linux 6にsshログインして、シェルスクリプトなどで自動化することも可能。また、REST APIによってプログラムからインスタンスの作成や管理を行うこともできる。

セキュリティ

Database CloudのひとつのアドバンテージはOracle Database Enterprise Editionがオンデマンドで利用できることにあり、Enterprise Editionの高度なセキュリティ機能が利用できる(Oracle Databaseを使える他のクラウドではEnterprise Editionは利用できないか、あるいはオンプレミスのライセンスの持ち込みとなる)。データベースのユーザーとロール制御に加えてアクティビティの監査、データの暗号化、アクセス制御、行レベルのセキュリティ、機密データにマスクをかけるデータ・リダクション機能などが利用できる。通信に関してネイティブなOracle Net暗号化によってクライアントとOracle Databaseサーバー間のネットワーク・トラフィックを暗号化できる。Java Cloudでは、Weblogicに搭載されているJAAS(認証/許可サービス)、JSSE(SSL実装)などの標準技術ベースのセキュリティ機能が利用できる。なお、データセンターは様々な物理/論理セキュリティで守られており、ISO/IEC 27001:2005、ISO/IEC 27002:2005などの基準に準拠している

データセンターの場所

北米を中心に、グローバルで19のデータセンターでクラウドサービスを運用している。2015年内に日本にもデータセンターを開設すると発表されたが、9月の時点ではオープンしていない。

実績・シェアなど

導入社数やシェアなどは特に公開していない。

エコシステム

Database Cloud、Java Cloudともに通常のOracleデータベース、Weblogicと同一であるため、両製品に対応した数多くのソフトウェアやパートナーのエコシステムを踏襲できると思われるが、現時点ではサポートなどについて各社に確認が必要だと思われる。

価格および支払い方法

基本的に時間による従量課金となる。
Database Cloudは、Standard Editionで月額$600/1時間$1.008から、Enterprise Editionで月額$3000/1時間$5.040から。自動化機能なしで開発用途のVirtual ImageはStandard Editionで月額$400/1時間$0.672から、Enterprise Editionで月額$1500/1時間$2.520から。
Java CloudはStandard Editionで月額$450/1時間$0.75から、Enterprise Editionで月額$1200/1時間$2.02から。自動化機能なしで開発用途のVirtual ImageはStandard Editionで月額$300/1時間$0.50から、Enterprise Editionで月額$800/1時間$1.34から。
Database Cloud、Java Cloudともに、ベースとなるCompute Service、Storage Cloud Serviceを購入する必要がある。