クラウド図鑑 Vol.23

概要

「IBM Bluemix」はIBMが提供するPaaS (Platform as a Service) のサービスである。同社のIaaSである SoftLayer のインフラ上に、VMware/Pivotalの提供するPaaSソフトウェア「CloudFoundry」を中心にIBMのWebsphereやDB2、さまざまなオープンソースソフトウェアなどを統合している。IBMが主張しているように、System of Record (SoR、定型業務処理システム、ガートナーがいうところのMode1の概念に近い) 、Systems of Engagement (SoE、協働のための情報活用システム、ガートナーのいうところのMode2の概念に近い) の両方を統合できるように考えられており、レガシーシステムとの接続から、Webアプリ、ビッグデータ、モバイル、IoTまで、さまざまなアプリケーションを迅速に開発することができる。人工知能サービスのWatsonも統合されており、IBMの先端的なテクノロジーを取り入れることもできる。

Bluemixの日本語コンソール

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URL  http://www.ibm.com/cloud-computing/jp/ja/bluemix/
2015年9月18日 株式会社クラウディット 中井雅也

機能

「IBM Bluemix」の中核となっている「Cloud Foundry」と同様のPaaS機能と、IBMが統合した多様なサービスを駆使してアプリケーションを開発できる。中心となる「Cloud Foundry アプリ」では、Webアプリとモバイルアプリを開発できる。WebアプリはJava、Node.js、Go、PHP、Python、Ruby、ASP.NETなどのプログラミング言語で開発できる。モバイルアプリもiPhone、Android端末のアプリを通知サービスなどのバックエンドのサービスと組みあわせて開発・提供できる。データベースはIBMのマネージドサービスであるDB2ベースのSQL DatabaseとNoSQLのCloudantを含めて、MongoDBやMySQLなど幅広く用意されている。今後有望なIT分野である「IoT (Internet of Things)」に対して、IBMはIoT用途の軽量高速な通信プロトコル「MQTT」の開発元として、BluemixにMQTTサーバー機能を提供している。ビッグデータ、データ分析関連では、Biginsights for Apache Hadoop、Apache Spark、dashDBなどが統合されている。IBMの先端的な技術であるWatsonも統合されており、自然言語を理解・学習し人間の意思決定を支援する「コグニティブ・コンピューティング・システム(Cognitive Computing System)」を提供できる。一方でオンプレミスのバックエンドの接続のためにWebsphere Cast Ironの技術を利用したCloud Integrationの機能で、既存のDB2やOracle、SAPやSalesforce、DominoなどにBluemix環境から連携することができる。アプリケーションの運用監視ツールも提供しており、稼働状況などをビジュアルに把握できる。また、開発者を中心に人気が高まっているDockerのコンテナーにも対応している。コンテナーの負荷分散や自動復旧などの運用機能や共有ディスクや脆弱性の検出など付加機能も提供している。現在はベータであるが、Bluemix環境からOpenStackの仮想マシンを生成するサービスを提供している。

使いやすさ

日本語コンソール画面からアプリケーション開発のためのリソースや環境の導入・設定などを行うことができる。開発言語やDBなどアプリケーションに必要な環境を一括で導入・設定するボイラープレートが多く用意されており、JavaやNode.jsなどの環境をマウスクリックだけで簡単に設定できる。プログラミングは、ローカル環境からコマンドライン使用(cfツール)、Git CLIでのデプロイ、Bluemix DevOps Serviceを使用するなどの方法に加えて、プラグインによって人気の高い統合開発環境のEclipseなどと連携が可能

マニュアルや書籍など

ドキュメントやチュートリアルがIBMから数多く提供されている。IBM developerWorksからも情報が多く発信されている。機能が広範に及ぶため日本語になっていないものもある。

拡張性

アプリケーションに対してメモリーやCPUコアを追加することができる。またAuto-Scalingアドオンにより、CPUやメモリーなどの状況により、アプリケーションを自動的にスケールアウトして処理能力を拡張できる。

可用性

アプリケーションのスケールアウトによる冗長化と、SQL DatabaseのHA機能、あるいは、NoSQLのCloudantのデータレプリケーション機能によって可用性を高めることができる。ただし、現時点ではデータセンターをまたがる冗長化のオプションは提供されていない。また、現時点でSQL Databaseの自動バックアップは1日に1回で細かなポイントインタイムのリカバリーはできず、データを外部に持ち出すこともできないため地理的な冗長性を確保することは難しい。ベースとなっているSoftLayerのインフラ自体は多数のデータセンター拠点を持ち、高速なグローバルネットワークによって地理的な分散がしやすいため今後の可用性関連の機能拡張に期待したい。

SLA

2016年1月時点でBluemix全体のSLAが定義されていない。
2016年11月の最新のSLAドキュメントでは、Bluemix Publicを複数リージョンで分散配置した場合かBluemix Dedicated、Bluemix Localを地理的に離れたデータセンターに分散配置した場合でPlatform Serviceに対して99.95%の可用性を、単一の環境にBluemix Dedicated、Bluemix Localを配置した場合で99.5%の可用性をサービスレベルとして規定し、これに達しない場合は使用料金が割り引かれる。ただしIBMはSLAをよく変更するので(2016年だけで3バージョンある)、最新のSLAを確認する必要がある。

自動化機能

アプリケーションに対するインフラのリソースは自動的に割り当てられ、管理もIBMによって行われる。IBM DevOps ServicesとBluemixを連携させることで、サービスを中断することなく新しいアプリケーションをデプロイするプロセスを自動化することができる。

セキュリティ

インフラを提供しているSoftLayerの高い物理セキュリティやコンプライアンス基準への準拠を踏襲する。Bluemix上のアプリケーションに独自ドメインを設定して証明書を導入してSSLを使用して通信を暗号化することができる。さらに共有のインフラに対するセキュリティの懸念を解消するのがBluemix Dedicatedで、SoftLayerの最大の特徴である物理サーバーに専有のシングルテナント環境を持つことができる。オンプレミスのプライベート環境のためのBluemix Localも発表しているが現時点では未提供である。(2015年11月19日改訂)Bluemixは、パブリックのマルチテナントのPaaSだけでなく、パブリックのシングルテナントのPaaS「Bluemix Dedicated」、さらにオンプレミスの「Bluemix Local」のオプションがあるため、セキュリティの要件にあわせて選択することができる。

 

データセンターの場所

基本的に米国とイギリスのデータセンターからの提供となる。シングルテナントの専有環境であるBluemix Dedicatedでは東京データセンターも選択できる。(2015年11月19日改訂)マルチテナントのパブリックPaaSとしてのBluemixは米国、イギリス、シドニーのデータセンターからの提供となる。ただし、利用できるサービスがリージョンによって異なるので、現時点では米国を選択するのが無難である。シングルテナントのBluemix DedicatedではSoftLayerの東京データセンターも選択できる。オンプレミスのBluemix Localは、当然だが任意のデータセンターで稼働させることができる。

実績・シェアなど

Bluemixとしてのシェアなどは公表されていないが、IBMの事例情報によれば、AnswerHub、ePersona、Bernhardt Funiture、BP3、BYTE、eyeQ、Jibes、Kiwi Wearables、ノルデア銀行などが利用している。

エコシステム

エコシステムを拡大中であり、IBM Cloud marketplace」を開設して同社やサードパーティのクラウドサービスをセルフサービスを購入できるようにしている。

価格および支払い方法

基本的に従量課金でクレジットカートによる支払いとなる。6ヶ月、12ヶ月、36ヶ月のサブスクリプションでは割引きが適用される。
クレジットカード登録なしで30日間のトライアルができる。トライアル期間の後も無料枠が用意されており、枠を超えると
主に使用メモリーと利用時間に応じて費用が発生する。例えば256MBメモリーの2インスタンスは無料だが、512MBの2インスタンスは月額$24.15となる。コンテナーの場合は、256MBメモリーの2インスタンスは無料だが、512MBの2インスタンスは月額$9.94となる。データベースのサービスなどは別途費用が発生するがSQL Databaseでも無料枠が用意されており、データ量が100MB/同時接続数10までなら無料で使える。シングルテナント専有型のBluemix Dedicatedは月額約400万円からとなる。