クラウド図鑑 Vol.16

概要

ERP (Enterprise Resource Planning、統合基幹業務システム)の世界トップベンダーである独SAP社が中堅・中小企業に向けて提供するアプリケーションサービス(SaaS)が、「Business ByDesign」と「Business One」である。この他にも、SAPは、人材管理(HCM)や財務業務、購買など特定分野のアプリケーションや、インメモリーデータベース「HANA」など、さまざまなクラウドサービスを提供している。2014年10月に行われた第3四半期の決算発表によれば、SAPのクラウドアプリケーションの総利用者数は4,400万人を突破しているとのことである。また、2015年7月に発表された第2四半期の決算発表でも、クラウドサブスクリプションおよびサポートによるIFRSベースの売上高は5億5200万ユーロで、前年同期の2億4100万ユーロから129%増加し、全体の成長率(前年同期比21%)を大きく上回っている。

SAPのクラウドアプリケーションの一覧
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URL  http://www.sap.com/japan/pc/tech/cloud/software/cloud-applications/index.html

2015年8月3日 株式会社クラウディット 中井雅也

機能

「SAP Business ByDesign」は財務、人事、販売、調達、顧客サービス、サプライチェーンまで、多岐に渡る統合型アプリケーションをSAPのクラウドから提供するSaaSである。企業規模の想定は、100人から500人程度の中堅・中小企業、および、大企業の子会社・海外現地法人など。全社規模エンドツーエンドの業務プロセスを統合し、分析とレポーティングを統合し、モバイルデバイスでビジネス機能や分析機能にアクセス可能である。
「SAP Business One Cloud」は、財務、販売、在庫など主要な業務プロセスをカバーする統合アプリケーションをSAPのパートナーのクラウドから提供するSaaSである。企業規模の想定は100人程度までの中小企業。必要な機能に絞って小規模に導入し、ビジネスの成長やニーズの変化に合わせて段階的にスムーズに拡張可能で、サブスクリプション方式(月額料金制)の費用体系で、総所有コスト(TCO)を大幅に低減できる。

使いやすさ

画面は日本語を含む各国語にローカライズされている。多機能・高機能な統合業務アプリケーションであるがゆえに利用者には業務の用語や知識が必要となる。

マニュアルや書籍など

SAP Business ByDesignのマニュアルは日本語化されたものがSAPから公開されている。Sap Business Oneの日本語マニュアルはパートナー(株式会社ソルパックなど)が提供している。研修はSAPやパートナー各社が提供する。一般的な書籍やネット上の第三者による公開情報は少ない。

拡張性

SAPのアプリケーションは、ほぼ社内利用に限定されユーザー数も多くなく、構造化データを中心とする処理でデータ量も大きくないため、特に中堅・中小企業が利用するBusines By Design や Business One のパフォーマンスや拡張性が、あらかじめ用意されたクラウドの処理能力を超えて問題になることは少ないと思われる。現在、SAPは日本を含め、好調なクラウドビジネスに支えられてデータセンターを拡張している。またBusiness Oneのパートナーのクラウドを利用する場合でも、IBM SoftLayerやCenturyLinkなどグローバルに機能・スケールの大きいデータセンターが用意されている。

可用性

オンプレミスのSAPアプリケーションでは、可用性を確保するために、高額なハードウェアやクラスターソフトウェが必要であった。しかしながら、SAPのクラウドサービスにおいては高可用性やバックアップはサービスに組み込まれており、中堅・中小企業のSAPアプリケーション導入の敷居を低くしている。2014年4月の、東京および大阪のデータセンター開設時のコメントより「日本の特有の地震や津波などの対策も講じている。日本の2つの拠点のデータセンターを通じて、ひとつのエリアで災害復旧(DR)を可能としており、ネットワークの遅延も少なくなる。」とのことである。ただし、実際の可用性デザインは、明らかにされていないため、SAPやパートナー各社に確認しておく必要があると思われる。

SLA

2015年7月時点で明確なSLAはない。

自動化機能

Business ByDesign、Business Oneともに運用タスクはクラウドサービスの一環として行われるため、ユーザーが基盤やミドルウェアの運用をカスタマイズ・自動化する必要性は少ないと思われる。また、ユーザー自身で開発するというよりは実績とスキルのあるパートナーに依頼する形になると思われる。一方で、当然ながらアプリケーションレベルのカスタマイズのAPIも用意されている。

セキュリティ

データは、SAPが管理する安全な環境で保護される。複数の電源と複数のネットワーク、複数の物理環境コントロール、火災や洪水対策などの物理的な安全対策、24時間耐性のサポートによる人的対策、多重のファイアウォーつや侵入検知などのネットワークセキュリティ対策など、高い基準を満たしたセキュリティおよびデータセンターでデータやシステムの安全性を高めている。また、Business ByDesignにおいては、第三者機関による様々な認定を受けており、ISAE No. 3402(International Standard on Assurance Engagements: 国際保証業務基準)や、サービス組織の統制に関する報告を規定した、2010年発行のSSAE16(Statement on Standards for Attestation Engagements No. 16: 保証業務基準書第16号)に基づく監査に合格、内部プロセスのセキュリティを確保する情報セキュリティ管理システムによってサポートされていることに関する認定ISO 27001認定などを取得している。

データセンターの場所

SAPのデータセンターは、東京、大阪、ドイツ、オランダ、米国で運用されている。また、Business Oneではパートナーのデータセンターとして、世界60拠点以上にデータセンターを有する米CenturyLinkや、IBM SoftLayerが用意されている。

実績・シェアなど

SAPのクラウドアプリケーションの総利用者数は4,400万人を突破しているとのことである。また、Business ByDesignの場合は、世界17ヶ国に出荷され約1,100社の導入実績があるとのこと。またBusiness Oneの国内企業の導入事例として、日立システムズが株式会社ユーグレナの事例を公開している。

エコシステム

SAPのパートナーのすべてがクラウドに対応しているわけではないが、日立システムズ、ロータスビジネスコンサルティング、ソルパック、NECなどのパートナーがサービスを提供している。

価格および支払い方法

月額使用料で課金されるが、ERP特有の初期費用が発生する。日立システムズ提供のSAP Buiness Oneの場合で、月額費用:11,000円(税抜)/1ユーザー(最低3ユーザーから)で、別途ホスティング費用(50,000円~)が必要。