クラウド図鑑 Vol.75

概要

Googleは、米国時間9月29日、クラウド事業を再編し、「Google Cloud」という新しいブランドに統一することを発表した。新ブランド「Google Cloud」に含まれるのは、Google Cloud Platform (GCP) , G Suite (旧 Google Apps) , Google Maps / Google Machine Learning のAPI , Chrome, Android だ。つまり、Google のクラウド事業のトップである Diane Greene 氏のもとに、Googleが持つエンタープライズ向けのクラウドサービスとソフトウェアを集約したということだ。これは、モバイルOSとして70%以上のシェアを持つAndroidと、500万社以上に利用されているG Suite (旧 Google Apps)の上位に Google Cloud Platform (GCP) を位置づけることで、エンタープライズ分野でのクラウドのシェアを拡大する戦略だと考えられる。google cloud本稿では、Google Cloud の中の  Google Cloud Platform (GCP) と AWS を比較するが、次項の「機能」の比較表の上では、意外に機能差は少ない。Google Cloudに、機能的な課題があるとすれば、エンタープライズで要求されるきめ細かいアクセス制御や複雑なネットワーク構成への対応、マネージドデータベースの種類、すなわち、AWSはOracle/SQL Server/MySQL/PostgreSQL/Auroraを提供するが Google Cloud はMySQLのみ、といった点だ。また対応ソフトウェアやSIなどのエコシステムは現時点でAWSが他社を圧倒する。これまで Google Cloud で課題とされてきた日本のデータセンターは、2016年11月8日に東京リージョンの正式運用が発表された。おそらく Google Cloud を敬遠する大きな理由としては、現時点で日本にデータセンターがないことだが(現在ベータ)、年内に正式オープンするという。 一方でGoogleならではの強みがあるのは、BigQueryを初めとするビッグデータ関連のサービスや、コンテナーのサービス、AIの分野だ。また、ピーク性の高い大量アクセスの処理を得意とする Google App Engine に代表されるように、 大規模な処理には総じて強い。話題のポケモンGOがGoogleのクラウド上で動いているのは、Google Cloud の強みを象徴する事例だといえる。また、あまり目立たないが、ライブマイグレーションの技術により、メンテナンス時間を極力少なくしていることは、もっと評価されるべきだろう。

URL
https://cloud.google.com
https://aws.amazon.com/jp/

2016年10月6日 株式会社クラウディット 中井雅也
関連記事 AWSとMicrosoft Azureの比較

機能

AWS, Google, Azureの主要機能のマトリックスを作成して対比してみた。このレベルの比較では、Google Cloud は、AWSとほぼ同等の機能を提供しているといえる。

 

カテゴリー サービス Google AWS Azure コメント
コンピュート 仮想マシン Compute Engine EC2 Virtual Machines 仮想マシンのデプロイとコントロール
コンテナー Container Engine EC2 Container Service Container Service コンテナーのデプロイ、オーケストレーション
ストレージ ブロックストレージ Persistent Disk EBS Blob Storage (ページ) 仮想マシンから利用するブロックストレージ
オブジェクトストレージ Cloud Storage S3 Blob Storage (ブロック) アプリから利用するオブジェクトストレージ
ファイルサーバー/NAS ZFS / Avere Elastic File System File Storage ファイル共有のサービス/NASのサービス
アーカイブストレージ Cloud Storage Nearline Glacier アーカイブ用の低価格ストレージ
バックアップ/DR Backup/Site Recovery 仮想マシンのバックアップとディザスタリカバリー
ネットワーク プライベートネットワーク Cloud Virtual Network VPC Virtual Network オンプレミス接続の仮想プライベートネットワーク
専用線接続 Cloud Interconnect Direct Connect ExpressRoute データセンターへの専用線接続
ロードバランサー Cloud Load Balancing Elastic Load Balancing Load Balancer 負荷分散/可用性向上のための負荷分散
データベース RDB Cloud SQL RDS SQL Database RDBのマネージドサービス
NoSQL Cloud Bigtable / Datastore DynamoDB DocumentDB NoSQLのマネージドサービス
DWH BigQuery Redshift SQL Data Warehouse 大規模並列処理’MPP)データベース
データ収集/変換 Cloud Dataflow Data Pipeline Data Factory データを収集・変換し統合する処理
PaaS アプリ開発/実行 App Engine Elastic Beanstalk App Service アプリケーション開発と実行(PaaS)
関数処理 Cloud Functions Lambda Functions サーバーサイドの関数処理
API管理 Cloud Endpoints API Gateway API Management APIの登録、公開、モニタリングなど
モバイルアプリ Cloud Mobile App Mobile Hub Mobile Apps モバイルアプリの開発
データ分析 Hadoop Cloud Dataproc Elastic Map Reduce HDInsight Hadoopのマネージドサービス
機械学習 TensorFlow, Vison API等 Machine Learning Machine Learning 機械学習のマネージドサービス
リアルタイム分析 Cloud Dataflow Kinesis Stream Analytics 大規模データのストリーム処理
IoT IoTサービス IoT Solutions AWS IoT IoT Suite IoTデバイスの接続/管理など
コンテンツ CDN Cloud CDN Cloud Front CDN コンテンツ配信ネットワーク
メディア配信 Media Solution Elastic Transcoder Media Service ビデオ、オーディオのオンデマンド配信

各種機能の詳細は過去の記事を参考にしていただきたい。

使いやすさ

AWS, Google ともに、日本語のコンソール/ポータルから各種サービスの設定や構成を行うことができる。またAPIによって、プログラムからの操作ができる。総じてAWS、Google ともに、さまざまなクラウドの中ではコンソールが使いやすいと思われる。Google Cloud は、特にGoogle アカウントと統合されているためGoogleの各種サービスのユーザーが入りやすい。

マニュアルや書籍など

AWS、Google ともに、主要なドキュメントは日本語化されており、日本語の書籍なども出版されており、ネットでの情報も多い。しかしながら、詳細なドキュメントに関しては、AWSと比較して、Googleは英語のみの提供になることが多いという印象を受ける。

拡張性

AWS、Google ともに、仮想マシン単体で、32以上のvCPU、200GB以上のメモリーの巨大なインスタンスが用意されており垂直なスケールができる。もちろん、ロードバランサーとオートスケールの機能によって、クラウドらしい水平なスケーリングが可能。総じてAWS、Googleともに豊富なリソースと高い拡張性を持っている。特に、Googleは、突発性の高いアクセスに強い PaaS の Google App Engine や NoSQL の BigTable 、大量データの検索に強い BigQuery など、Google が実際に自社のサービスで使っている仕組みをクラウドサービスで従量課金で使えることは強みだといえるだろう。

可用性

ストレージ:
AWSでは、仮想マシンのストレージのデータは、同じデータセンター内の複数のサーバーに複製される。スナップショットをコピーすることでデータセンターをまたいだボリューム複製が可能。オブジェクトストレージサービスのS3は、デフォルトで
3つのデータセンターにデータを分散して保存し99.999999999%というデータ耐久性を実現。
Googleの「Compute Engine Persistent Disk」はAWSのAZ相当の「ゾーン」内での冗長性が組み込まれており、読み書きするデータは暗号化され、複数ゾーンに自動複製されるスナップショットにより、災害などによるゾーン障害時にも別なゾーンで復旧が可能。オブジェクトストレージサービスのGoogle Cloud Storage は複数の地域に複数のデータコピーを配置し99.999999999% のデータ耐久性を実現。
仮想マシン:
Googleは、独自のライブマイグレーション技術により、メンテナンス時間を最小化する。Googleの仮想マシンのインスタンスにはローカル ストレージが不要なため、Google Live Migration を使用して新しいハードウェアに自動的に移行される。これはAWSでは提供されてない機能である。
データベース:
AWS、Azureともに、RDBのマネージドサービスでは、別データセンターへのフェールオーバーが可能で、
自動バックアップ機能を提供する。
AWSのAuroraデータベースエンジンでは、可用性をさらに強化しており、インスタンスに障害が発生した場合、3つのデータセンター群に配置した最大 15 個のレプリカのうちの 1 つから通常1分以内に自動でフェイルオーバーし、データは3つのAZごとに2つのデータのコピーを持ち、合計6ヶ所のSSDストレージにデータコピーを保持する。
Google Cloud SQLのデータは複数の地理的に異なる場所(ゾーン)に複製され、フェイルオーバー処理を自動的に行いデータを保護し、障害が発生しても地理的に離れた別なゾーンでフェイルオーバーが行われサービスが継続される。バックアップは7日分が料金に含まれている。自動バックアップとバイナリーのロギングを有効に設定することでポイントインタイムのリカバリーが可能になる。

SLA

AWS、Googleともに、仮想マシンのSLAは99.95%、オブジェクトストレージのSLAは99.9%、RDBのマネージドサービスのSLAは99.95%。

自動化機能

AWS、Googleともに、各種サービスをAPIでコントロールできる。両社ともにAPIによるITインフラの抽象化を推進しており、この分野におけるリーダーであるといえる。

セキュリティ

AWS、Google ともに、コンプライアンス基準、セキュリティ基準、規制対応に関しては、ISO27001、HIPPA、FedRAMP、PCIDSSに対応している。また、AWS、Google ともに、SOC 2, 3 および ISO27017、ISO27018に対応している。

データセンターの場所

AWSは、グローバルで12リージョン、日本で1リージョン。Googleは、グローバルで6リージョン、これまで Google Cloud で課題とされてきた日本のデータセンターは、2016年11月8日に東京リージョンの正式運用が発表された。日本のリージョンは現在ベータとなっており、年内に正式オープン予定。さらにインドのムンバイ、シンガポール、オーストラリアのシドニー、米国の北バージニア、ブラジルのサンパウロ、英国のロンドン、フィンランド、ドイツのフランクフルトの8つのリージョンにデータセンターを新設し、2017年にもさらにリージョンの追加が発表される予定だという。

実績・シェアなど

AWSの最新の業績発表(2016年7月28日)では、四半期の売上が約29億ドル。年間売上は日本円で1兆円を超えることが確実視されている。AWSのアクティブカスタマーの数はグローバルで100万とのことである。MM総研が2015年9月24日に発表した「国内クラウドサービス市場規模の2014年度実績と2019年度までの予測」によれば、AWSのシェアは41.4%で、Googleのシェアは12.7%である。AWSの国内事例は、さまざまなメディアで報じられているように多くあるが、Google Cloudも、全日空、サイバーエージェントなど、着実に国内での事例を増やしている。

エコシステム

AWSの国内パートナー社数は300とのことであるが、個人レベルの開発者やユーザー企業を取り込み、クラウドに限らず、IT業界でも有数の強大なエコシステムを形成している。

価格および支払い方法

個別の価格はここでは割愛する。支払い方法に関してはAWSもGoogleも基本的にUSドルでのクレジットカード決済となり、日本円やクレジッカード以外の支払いはパートナーが対応する。