AWSで営業データ分析に挑戦!――IT初心者が陥りがちな”失敗あるある”に遭遇 解決策はシンプルだった!?

AWSで営業データ分析に挑戦!――IT初心者が陥りがちな”失敗あるある”に遭遇 解決策はシンプルだった!?

「AWSで商談データを視覚化して、営業活動に役立てよう!」――アマゾン ウェブ サービス(AWS)に触れてまだ1カ月ほどのITmedia・営業カワバタ。できることを増やそうとする中で、新たな使い道として営業データの分析に取り組みはじめた。

試行錯誤している途中、手持ちのデータを活用する際にIT初心者が陥りがちな“失敗あるある”に直面。それでもスムーズにデータを視覚化できた。今回チャレンジしたのはカワバタと編集部の若手記者ハラダだ。エンジニアではなくAWSの知識はほぼゼロの2人によるチャレンジを追ってみよう。

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営業データを分析したい! 「Amazon QuickSight」に期待大

カワバタとハラダの2人は、不定期で“AWS体験会”を実施している。ある日の体験会で、カワバタがうれしそうに口を開いた。

photoカワバタ

カワバタ AWSの紹介漫画「小さな会社のDX日記」を読んでいたら、BIツールで売り上げデータを視覚化するエピソードがあったんですよ。

photoハラダ

ハラダ AWSのBIツール「Amazon QuickSight」を使うと、データの集計や視覚化を楽にできるんですね。自動でグラフ化してくれるのは便利そうです!

カワバタ 私も普段から顧客管理ツールや表計算ソフトを使って、営業データの週次チェックや上司への報告をしています。でも、見るファイルが多くて追いきれなかったり、過去のデータを参照できなかったりと課題が多いんですよ。QuickSightを使って、売り上げデータを整理する時間を減らし、さらに分析して業務改善や売り上げの拡大につなげたいと思いました! まずは試してみませんか?

ハラダ 最初の30日間は無料でお試しできるようですし、使ってみましょう! 公式サイトを見たら、機能を図解しているページがありました。表計算ソフトとの違いなどとても分かりやすいですね。

アカウント作成 プランの選び方は?

早速QuickSightを使ってみることに。AWSのホーム画面「マネジメントコンソール」でサービス名を検索し、QuickSightにアクセスするとサインアップを求められる。

青色のボタン「Sign up for QuickSight」をクリックすると、プラン選択に進む。選べるのは「Enterprise」もしくは「Enterprise+Q」の2種類だ。

カワバタ どちらを選びましょうか。

ハラダ 比較表を見ると「Q」は自然言語処理をできるのが大きな違いのようです。調べたら、「昨年と比べて売り上げ状況はどう?」といった質問に、数値やグラフを使って自動で答えてくれるそうです!

カワバタ AIを使えるのいいですね! 気になりますが、今回は基本的な使い方を学びたいので、Enterpriseの方で進めましょうか。

Enterpriseにチェックを入れて次に進み、氏名とメールアドレス、電話番号の連絡先情報を入力。続くページではレポート出力のオプションを付けるか選べる。追加料金が必要なので、今回はオプションを付けないことにした。

そしてアカウントを作成する。認証方法はデフォルトで選択されている「IAM federaed identities & QuickSight-managedusers」とし、次にリージョンを選ぶ。今回は東京リージョンを選択した。

アカウント情報の欄では、英数字とハイフンを組み合わせてアカウント名を決め、IAMロールはデフォルトの設定のままで「完了」ボタンをクリック。約1分で「サインアップしました」と表示されるので、QuickSightのホーム画面に移動すればOKだ。

手持ちデータを活用 初心者が陥りがちな“失敗あるある”とは?

QuickSightのホーム画面には、データ分析ダッシュボードのサンプルがまとまっている。

ハラダ サンプルを見ましたが、想像以上に便利そうです!photoダッシュボードのサンプル(販売パイプライン分析)

カワバタ では、私の営業データで試してみましょう!

ホーム画面の右上「新しい分析」を押して、データセットを入力する。ファイルをアップロードする方法の他、「Salesforce」「Twitter」などとも連携できるようで対応サービスの広さにカワバタとハラダも驚きを隠せない様子だった。

今回はカワバタが用意した表計算ソフトのファイルをアップロードした。使うシートを選択してデータを確認のうえ「視覚化する」をクリック。QuickSightの新規シート「インタラクティブシート」を作成すると、ダッシュボードの編集画面が現れた。

左側のフィールド枠から、視覚化したい値を選んで右側のグラフ欄にドラッグ&ドロップすれば自動でグラフ化してくれる――はずが、カワバタのデータではうまくいかない。「社名」「案件番号」「商品名」などで分けた列名が表示されず、表示も崩れてしまった。

ハラダ あれ、うまくいかないですね。

カワバタ 本来なら列に付けた分類名がフィールドに表示されるはずが「Column」となってしまっています。視覚化できないのは何で……(泣)

ハラダ 私たちだけでは解決できそうにないですね。助っ人を呼びましょうか。

データと格闘すること十数分、解決策を聞くために呼んだのはITmedia NEWS編集部でクラウド領域を担当している編集記者のヨシカワだ。

photoヨシカワ

ヨシカワ お困りのようで! 表計算ソフトのファイルを確認しました。なるほど、これは手持ちのデータをアップロードするときに起きる “失敗あるある”ですね。

まず、1つのシートに実績額の集計やピボットテーブルなど複数種類の表を作っていますよね。人間は見やすいですが、機械には何のデータなのか判別しづらいんです。
また、金額に「¥」マークを付けていますが、これだと機械が数字と認識できないのでうまく集計できなくなってしまいます。

photoカワバタが用意した表計算ソフトのデータ例

QuickSightを活用 データ確認から分析まで

表計算ソフトのファイルを調整してデータを整えたので、改めてQuickSightで分析をしていく。データの入力は最初に試したときと同じだ。

ヨシカワ ファイルをアップロードしたら、視覚化に移る前に「設定の編集とデータの準備」に進みましょう。ここで列名を変えたり不要な列を削除したりと分析の準備をできます。

カワバタ 簡単な調整なら、元のファイルを編集せず手軽に直せるんですね。

ハラダ 今回は列名の表示が少し分かりづらくなっているので、そこを修正しましょう。

ヨシカワ 各列の先頭に「文字列」「整数」と表示されています。これはQuickSightが列のデータを文字と数字のどちらで読み取っているか表示しています。金額など数字のデータが文字として扱われていないか確認して、問題があれば直しましょう。

photo「設定の編集とデータの準備」の画面

データを視覚化する手順 フィルタリングの使い方

 データの準備が整ったところで、視覚化を進める。まずは全体の概要として、商品別の売り上げ状況をグラフ化する。ダッシュボードを開き、左下のビジュアルタイプ一覧から「ドーナツグラフ」を選択。右上にある三角形のマークを押してデータ追加欄(フィールドウェル)を広げ、左のフィールドリストから「商品名」を「グループ」に、「FY23Q1」を「値」にドラッグ&ドロップすれば、売り上げ状況を表示できる。photoグラフにデータを追加する

 グラフ名をクリックすれば、タイトも編集可能だ。さらに左の「フィルター」タブにある「フィルターの追加」から「ステータス」を選び、縦三点リーダーを押下して「シートに追加」を選択。すると、先ほどのドーナツグラフのデータを「受注」「提案中」など商談状況でフィルタリングできるようになる。

データ視覚化 もっと便利に使うには?

次に実際に何の商品が売れているか分かるよう、顧客ごとの売り上げ状況を視覚化する。新規グラフを追加したら「垂直棒グラフ」を選んで、「フィールドウェル」のX軸に「ステータス」、値にFY22Q1とFY23Q1のデータを、「Small Multiples」欄に社名を入れると、売り上げ状況を前年比較するグラフ化できる。

さらに具体的な商談情報をチェックするには、新規グラフ「テーブル」を選んで「フィールドウェル」のグループに社名と案件番号、ステータスを、値にFY22Q1とFY23Q1を追加すれば表形式で商談が一覧表示される。

ヨシカワ 現状でも見やすいですが、もっと便利にしたくないですか? 例えば、顧客別売り上げグラフでA社をクリックしたら、表にA社の商談だけ表示される――みたいな動きを付けることもできますよ。

カワバタ 本当ですか?

ヨシカワ もちろん。まず、顧客別売り上げグラフをクリックした状態で左の「アクション」タブを開き、「新規アクションを設定」から「カスタムアクションを定義」をクリック。アクション名を任意に決め、設定は「アクティベーション:選択」「アクションタイプ:フィルタアクション」「フィルタ範囲:すべてのフィールド」「ターゲットビジュアル:すべてのビジュアル」にセットします。そして保存すれば、設定完了です。photoアクションを追加する

カワバタ すごい、グラフをクリックしたら表の内容が変わりました!

ヨシカワ:日付データが入っていれば、期間でフィルタリングできますね。

初心者向けの“無料講座” 図表で説明 「分かりやすい」

作ったダッシュボードは外部に共有・公開できるので、視覚化したデータを社内でスムーズに共有できる。ダッシュボード右上の「共有」から、「分析の共有」を押してQuickSightアカウントを指定するだけだ。

カワバタ QuickSightを使いこなせれば、営業活動の分析や部署内での情報共有などがはかどりそうですね。

ハラダ 使い方講座とかあったら受けたい……!

ヨシカワ AWSが無料のハンズオンキットを公開しています! 日本語で図表も入っているので初心者でも分かりやすいと思います。「視覚化BASIC編」に今日話したことがまとまっているので、ぜひ読んでみてください。

カワバタ QuickSightを活用すれば、さまざまなデータを分析してビジネスに役立てられそうですね。いろいろな視点で分析したいです!

ヨシカワ グラフを読み解く分析は大切ですよね。例えば、データの見方を解説したAWS公式ブログの記事などが参考になると思います!

カワバタ ありがとうございます!

ハラダ ハンズオンを読んでいたら、データの自動更新などもできるようですね。次回はその内容も試してみたいですね!

今回は営業データを使って視覚化と分析の基礎を試した。このように社内にあるデータを適切に活用すれば、新たな気付きを共有できる。QuickSightは直感的に使えるので、まずは手元のデータで試してみるといいだろう。

ITmedia より

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