クラウド図鑑 Vol.63

概要

Slack は、会社としては2009年に設立し、現在はサンフランシスコに拠点を置き、クラウド型の企業向けチャットを中心とするコミュニケーションサービスを提供するプロバイダーだ。2014年2月に現在のサービスを提供開始し、2016年5月時点で1日のアクティブユーザーは300万人、有料ユーザーは90万人を超え、2年数ヶ月ほどで急速に人気を集めた。初期にSlackを支持したユーザー層の中心はテクノロジー企業のエンジニアで、Airbnb、eBay、LinkedInなどが採用しており、日本でもIT系のスタートアップ企業を中心に急速に広まりつつある。人気の理由のひとつは、チャットの使いやすさやファイル共有のしやすさに加えて、プログラムのソースコードの共有やコマンドによる高度な機能の提供など、エンジニア好みの機能を備えていることだ。また、エンジニアだけでなく、投資家、ベンチャーキャピタルにも人気が高く、非上場で10億ドル以上の時価総額を有する「ユニコーン企業」であり、2016年4月には38億ドルの評価額となっている。Slackは戦略として「プラットフォーム化」を宣言しており、2015年12月に連携アプリのマーケットプレース「Slack App Directory」と対応Bot開発用の「Botkit」フレームワーク、8000万ドル(約80億円)のアプリ開発ファンドを準備したと発表した。このようなアプリ連携も含めた機能性と使いやすさで、「メールキラー」として、また日本でもLINEの使用を抑制するなど、企業でのコミュニケーションのメインのプラットフォームとして採用される事例が増えている。

Slackのモバイルアプリ画面
slack
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URL   http://slack.com
2016年6月29日 株式会社クラウディット 中井雅也

機能

企業内外のチームコミュニケーションのためのさまざまな機能を提供する。ブラウザだけでなく、Windows、Mac、iOS、Androidのアプリを提供する。
中心となるのはチャット機能で、特定のトピックをチームで共有する「チャンネル」、個々のメンバーに向けた「ダイレクトメッセージ」、特定メンバーだけで使用する「プライベートグループ」でコミュニケーションが可能
音声通話機能により、1対1の通話からチャンネルを利用した最大で15人までの同時通話が可能。
ファイル共有機能により、さまざまな形式のファイルの共有ができる。画像やURLにはプレビューが生成される。またDropboxやGoogle Drive、iCloud、Boxなどと連携が可能だ。
ひとつの検索窓からチャンネルをまたいだメッセージの検索が可能。
Pin機能でメッセージがタイムラインから流れることを防ぐことができる。
多くの絵文字が用意されているが、Custom Emoji機能で写真などから絵文字を作成できる。
エンジニア向けのSnippetsと呼ばれる機能により、プログラミング言語のソースコードやHTMLなどを見やすい形で共有できる。
やはりエンジニア受けのよい機能として、「/(スラッシュ)」で始まるコマンドによって、メッセージ送信やチャンネルの操作、リマインドなどが行える。
Integrationの機能によってさまざまな外部アプリとの連携が可能であり、例えばGoogleのメールの転送やカレンダーからの通知といったものから開発者向けにGitHubやHerokuとの連携などもできる。
Slackの使用方法の質問に応答するSlackbotを提供するが、Botkitによって独自のBotをnode.jsで開発することもできる。
Web APIによって外部のプログラムからSlackのメッセージ操作やチャンネル操作などを行える。

使いやすさ

ブラウザの画面、アプリの画面で一貫した優れたユーザインタフェースを提供しており直感的な操作が可能。GUIよりコマンド操作を好むエンジニア受けの良い「/(スラッシュ)」コマンド群を提供する。ただし、現在、基本的にインタフェースの言語は英語である。

マニュアルや書籍など

さまざまなドキュメントやSlashbotによるヘルプが提供される。ただし、現在、英語での提供となる。しかし、日本のユーザーによってネット上で数多くの情報が日本語で流通している。

拡張性

拡張性に関するアーキテクチャなどは公開されていないが、2016年5月現在で1日あたり300万ユーザーの利用をサポートしている。SlackはAWS上で構築されており、EC2やS3などを活用して急速なユーザー数の増加に対応し拡張を行っている。

可用性

可用性に関してもアーキテクチャなどは明らかでないが、SlackはAWS上で構築されており、AWSの可用性アーキテクチャを活用していると考えられ、サーバーやデータセンターレベルの障害でもサービスは継続するという。データは複数ロケーションで冗長化されており、オペレーションスタッフによりディザスタリカバリーができるようになっている。Slackは月間のアップタイムを公表しており、2016年4月〜6月では99.96%以上の可用性を実現している。

SLA

有償の「Plus」のプランでは 99.99%のアップタイムをSLAで規定。

自動化機能

Slackはマネージドサービスとして提供され、インフラの運用、ソフトウェアのメンテナンスなどを意識することはない。Web APIを駆使してSlackのさまざまな操作もプログラムで自動化できる。

セキュリティ

堅牢なAWSのデータセンターのセキュリティで物理セキュリティを高めている。自動的な脆弱性のスキャンを行い、また、外部のセキュリティ会社による監査も行っている。通信およびデータは暗号化される。二段階認証によってサーバーのアクセスを制限している。セキュリティやアクセスや各種数値のログを取得し分析をしている。利用者サイドの管理者(Team Admin)が、アクセスログをオンデマンドで閲覧できる。また管理者の設定によって、利用者に二段階認証を設定できる。チャンネルのメッセージデータを閲覧するためのStandard Exportに加え、「Plus」プランの管理者はダイレクトメッセージやプライベートチャンネルを含むCompliance Exportでデータ閲覧が可能。

データセンターの場所

AWSのデータセンターからサービスを提供しているが、場所などは明らかにされていない

実績・シェアなど

2016年5月時点で1日のアクティブユーザーは300万人、有料ユーザーは90万人を超え、Airbnb、eBay、LinkedInなどが採用しており、日本でもIT系のスタートアップ企業を中心に急速に広まりつつある。

エコシステム

同社はSlackをプラットフォームとするアプリエコシステムの構築を推進しており。2015年12月には連携アプリのマーケットプレース「App Directory」を公開した。App Directoryの登録アプリは500を超えBotだけでも30種類以上あり、Slackの有料ユーザーの9割がApp Directoryのアプリを活用しているという。また、Slackから他の外部アプリに対してMessage Buttonsでタスクの実行ができる。これによってトラベルサイトKayakで航空券を検索するといったことができる。

価格および支払い方法

無料枠では、10000までのメッセージ、10までのアプリの統合、2名の音声通話、5GBまでのストレージが使用可能。1アクティブユーザーあたり月額6.67USドルのStandardプランでは、無制限のメッセージ、無制限のアプリの統合、グループでの音声通話、10GBまでのストレージがなどが提供される。1アクティブユーザーあたり月額12.50USドルのPlusプランではStandardに加えて、SAMLによるシングルサインオン、99.99%のSLA、24時間365日のサポート、20GBまでのストレージなどが提供される。支払いはクレジットカード。