クラウド図鑑 Vol.9

概要

Amazon Web Services ( AWS ) は、さまざまな ストレージサービス を提供している。Amazon EC2の仮想マシンの内蔵ディスク的な位置づけの「Instance Store」は無料だが、インスタンスを停止するとデータが消去されるため、データの永続性を持たせるためには、有償のストレージサービスを利用する必要がある。EC2からマウントして利用する外部ストレージが「Elastic Block Storage ( EBS )」で、性能と永続性が必要なデータベースなどのデータ格納に使用する。アプリケーションからhttpプロトコルでアクセスするオブジェクトストレージ「Simple Storage Service ( S3 )」は低価格ながら高いデータ耐久性を備え、大量・大容量のファイルの格納やバックアップによく使われる。さらにアーカイブ用途に絞った「 Glacier 」は、 S3 よりさらに低価格で、従来のテープ代わりのデータの長期保存に適している。(2015年11月6日追記) 2015年9月には、 S3 標準サービスとGlacierの中間にあたる「 S3 – 標準 – 低頻度アクセス」を発表した。また本稿では詳細を割愛するが「Storage Gateway (SGW)」という、EC2あるいはオンプレミスのVMware/Hyper-V仮想マシンから、S3にデータをバックアップする仮想アプライアンスを提供している。

EBSの設定画面

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URL   http://aws.amazon.com/jp/

2015年6月26日 株式会社クラウディット 中井雅也

機能

EBSはEC2の仮想マシンインスタンスからマウントして使用し、データ暗号化とスナップショット、および、スナップショットのコピーによるリージョンを跨いだボリュームの複製が可能。ボリュームタイプは、「汎用(SSD)」「プロビジョンド IOPS(SSD)」「マグネティック」の 3 種類があり、それぞれパフォーマンス特性と価格の点で異なり、ニーズにあわせて選択できる。最大ボリュームサイズは16TB。オブジェクトストレージのS3は、httpプロトコルでアプリケーションからファイル単位で保存や取り出しができる。あまり知られていないが、S3のストレージにhtmlファイルを配備すればWebサーバーとして機能する(ただし静的htmlコンテンツに限定される)。データは自動的に3つのAZにレプリケートされるため99.999999999%という高いデータ耐久性を実現している。暗号化およびリージョン間のレプリケーションができる上に、後述するようにセキュリティ関連の機能も豊富である。Glacierは、S3同様の機能をバックアップやアーカイブ用途に限定してS3のおよそ1/3の低価格で提供している。S3との最大の違いはGladierではデータの取り出しに3-5時間かかる点である。AWSでは、S3とGlacier間でルールに基づいてデータを移動させるデータライフサイクル管理の機能を提供しており、従来は高額だった階層ストレージのソリューションが仮想的に低価格で実現できる。(2015年11月6日追記)また、 2015年9月には、S3標準サービスとGlacierの中間にあたる「S3 – 標準 – 低頻度アクセス」を発表した。これはS3の機能や99.999999999%のデータ耐久性はそのままに、SLAを(S3標準の99.9%から)99%に下げることで低価格化したもので、オブジェクトストレージの選択肢を広げた。

使いやすさ

いずれのストレージサービスも日本語化されたAWSコンソールから各種リソースの作成・設定・起動・終了などを行うことができる。ドキュメントも豊富に用意されている。しかしながら、AWSの高機能なサービスを使いこなすには独自の設計思想や用語の習得を含めて、相応のIT知識が必要である点はAWS全体に共通する。

マニュアルや書籍など

AWSによって豊富なマニュアルやチュートリアル、リファレンスアーキテクチャなどのドキュメントが用意されている。また、書籍も多く出版されている。

拡張性

EBSにおいては最高性能のProvisioned IOPS(SSD)タイプでは最大容量が16TB、IOPSが20,000IOPS、ボリュームあたりのスループットが320MB/sまで拡張ができる。EC2インスタンスに複数のEBSボリュームを容量に応じてアタッチできる。S3とGlacierにおいて、格納可能なデータの総量とオブジェクトの数には制限は特にない。

可用性

EBS ボリュームのデータは、追加料金なしで、同じAZ(アベイラビリティーゾーン)内の複数のサーバーにレプリケートされ、ハードウェア障害によるデータ損失を防ぐ。スナップショット機能によるバックアップ・リストアが可能。スナップショットのデータはS3に保存され、スナップショットをコピーすることでリージョンを跨いだボリュームの複製が可能。EBSは99.999%の可用性を実現する設計になっているが、SLAとしては99.95%をコミットする。EBSで注意すべき点は、ボリュームを複数のEC2インスタンスからアタッチができないことで、AWS上で高可用性クラスターを設計するときのポイントとなる。オブジェクトストレージサービスのS3はデフォルトで3つのAZにデータを分散して保存し99.999999999%という高いデータ耐久性を実現している。バージョン管理の機能もあり、ユーザーによるデータ誤操作による消失を防げる。リージョンを跨いだレプリケーションも画面から簡単に設定が可能で、レプリケーション先ではライフサイクルルールに基づきデータ削除やGlacierへのマイグレーションを自動化できる。Glacierはバックアップ・アーカイブに用途を絞り、アクセスに時間はかかるが(通常3-5時間)、S3同様に99.999999999%という高いデータ耐久性を実現している。AWSではEBS, S3, Glacierという3種類の性質の異なるストレージとリージョンとAZを駆使して堅牢なデータの保護と継続性の向上を実現できる。

SLA

サービスによってSLAがあるものとないものがあり、規定も異なる。

EBSのSLAはEC2に含まれ、月間使用可能時間が99.95%未満になると請求金額が割り引かれる。

S3 標準のサービスは月間使用可能時間が99.9%未満になると請求金額が割り引かれる。(2015年11月6日追記) S3 – 標準 – 低頻度アクセスでは月間使用可能時間が99%未満になると請求金額が割り引かれる。

自動化機能

APIによってプログラムからさまざまなコントロールと自動化が可能。

セキュリティ

EBSは標準で暗号化の機能が提供され、ボリューム作成時にコンソールで簡単に設定が可能。S3においてもサーバーサイドの暗号化機能が標準提供される。またアクセス権限のないユーザーからのアクセスを制御することもできる。またオプションでアクセスのログを記録し、監査に使用することができる。GlacierにおいてもS3同様に暗号化機能やアクセス制御が可能。

データセンターの場所

リージョンという形でデータセンターの場所を指定することができる。2011年に開設された東京リージョンをはじめとして、US(バージニア、オレゴンなど)、EU(アイルランド、フランクフルト)、アジア(シンガポール、シドニー)など1112リージョンから任意のリージョンを選択することができる。AWSはデータセンターの拡張を続けており、2016年1月には韓国リージョンが利用できるようになった。

実績・シェアなど

EBSは、EC2の仮想マシンを使用しているユーザーが高い割合で利用していると考えられる。S3も人気の高いサービスであり、ファイルを扱うサービスで数多く利用されている。dropboxやtumblrといったネット系サービスのバックエンドとしてよく利用される。

エコシステム

かつてのAWSまたAWS専業のクラウドインテグレーターも数多く、大手ITベンダーやシステムインテグレーターも多くがAWSに対応している。また、S3をバックエンドとして、Dropboxやtumblrといったネット系サービスやHerokuのようなPaaSのサービスなど新興企業のエコシステムが存在する。

価格および支払い方法

従量課金で時間単位の課金が可能となっている。価格はサービスごと、またリージョンによっても異なるが、基本的にUSドルでのクレジットカード決済となる。
参考価格としては、東京リージョンのエントリーレベルのEBSが月額で$0.08/GB、S3が月額で$0.033/GB、Glacierが月額で$0.0114 /GB。(2015年11月6日追記) S3 – 標準 – 低頻度アクセスが、$0.019/GB。EBSのスナップショットやS3のデータ操作リクエスト、データ転送などは別途費用が発生する。