スマホ普及率65→80%に 高知県日高村でデジタル化が進むワケ

  • 2023.01.27
  • DX
スマホ普及率65→80%に 高知県日高村でデジタル化が進むワケ

スマホ普及率65→80%に 高知県日高村でデジタル化が進むワケ

人口約5000人、日本一の透明度を誇る仁淀川(によどがわ)をはじめ豊かな自然に恵まれ、フルーツトマトの栽培が盛んな高知県日高村。「村まるごとデジタル化」を掲げる同村では、「スマートフォン普及率100%」を目指し、2021年5月からさまざまな施策に取り組んでいる。

日高村では、スマホ普及事業とスマホを活用したデジタルサービスの提供を同時に開始した

行政のDXを本格化する前に、まずは住民がデジタルサービスを利用できる環境をつくろうと始まった同プロジェクト。開始前に64.5%だったスマホ普及率は、22年6月時点で79.7%まで向上している。

どのようにして普及率を上げたのか。住民の生活はどう変わったのか。高知県日高村役場 企画課 安岡周総氏に聞いた。

70代以上の高齢者がスマホを持たない理由

高齢化率が約43%の日高村では、村全体の活力の低下や人口減による税収減、住民同士のつながりの希薄化などが課題とされている。住民の暮らしの質向上にはDXの推進が急務だが、そもそも住民がデジタルデバイスを使えていない状態でのDXは無理がある。そんな背景があり、「スマートフォン普及率100%」を掲げたという。プロジェクト開始前の日高村における世代別スマートフォン普及率。70代以降は普及率が50%以下だ

プロジェクト開始前の普及率は64.5%。特に課題となるのが70代以降で、80~90代は10%前後だった。日高村が実施したアンケートによれば、スマホを持たない理由は、1位「必要ない」、2位「使い方が分からない」、3位「価格が高い」となる。

そうした層にスマホを普及させるアプローチとして、スマホ購入やランニングコストの支援、スマホ普及事業の説明会や体験会、スマホ教室や相談所の設置などを開始した。同時に、「健康」「防災」「情報」の3分野でスマホを活用した取り組みも始めた。

「スマホを持たない理由のうち、『使い方が分からない』と『価格が高い』は、比較的解決しやすい。しかし、『必要ない』と思う方々の考えを変えるには、自分の命に直結するような分野での利用法を示すことが重要ではないかと考えました」(安岡氏)

「スマホは必要ない」と考える高齢者に何をした?

今でこそ一定の成果をあげている本事業だが、最初から筋書き通りに進んだわけではない。スマホ普及事業においては、入り口として村の拠点となる数カ所で「スマホ普及事業の説明会」を開催したが、ほとんど誰も来なかった。

まず、いくつかの拠点で事業説明会をしたが、失敗に終わったという

「スマホが必要ない、よく分からないと思っている人に対して、こちら側の都合で決めた日時・場所に説明を聞きに来てくださいと言っても、『自分には必要ない』と思いますよね。住民の課題感を理解できていませんでした」(安岡氏)

そこで、全82の自治体に電話や手紙で連絡を取り、「説明会を開催したいので都合のいい日時を教えてください」と依頼し、職員が各自治体に出向いた。コロナ禍のため約50の自治体での実施にとどまったが、6カ月に1回ほど説明会を繰り返し、参加者が増えた。そこでは、こんな話をしたそうだ。

「人口減少に伴い、社会保障費制度の維持が困難になっている。デジタル化しなければ、行政サービスが受けられなくなる。だから、みなさんにスマホを持っていただき、自身で必要な情報を取得してもらえたら、このぐらいの予算が削減できる。いざというときに、すぐに必要な情報にリーチもできる。

また、最長でも26年3月には3Gサービスが終了し、多くのガラケーが使えなくなる。われわれはスマホの所持を強制しているのではなく、ガラケーがなくなるのだから今から練習したほうがいいだろうと。みなさんの選択肢として、この事業を進めていると訴えました」(安岡氏)

全員がすんなり受け入れることはなく、「スマホを持たせるなら費用はすべて村で負担してほしい」など、さまざまな反発があったという

同時に、スマホ購入や切り替えの手続きができるようKDDIのショップを出張所として村内に設けた。その取り組みが継続して、現在は出張販売も兼ねた「よろず相談所」として運営されている。

このほか、村唯一のスーパーマーケットにも代理店を置いて販売キャンペーンを展開するなど、住民の生活圏内に出向くようにした。こういった施策が、スマホの普及につながったようだ。

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