クラウド図鑑 Vol.50

SAPのクラウド事業が好調だ2015年の通年においてグローバルで目標を上回る業績を達成し、総売上は前年比10%増の208億1000万ユーロ(約2兆7000億円)となったが、特にクラウド事業が好調で、新規受注が103%増、売り上げが82%増と大きく成長した。クラウドサブスクリプションとサポートによる売上高は急成長し、2017年までにソフトウェアライセンスの売上高に近づき、2018年には追い抜く見込みだとした。国内においてもクラウド事業が急成長しており、新規受注は193%増で、「SAP HANA Enterprise Cloud」が218%、「Customer Engagement&Commerce」が396%、「Ariba」が150%増加したとのことである。そして、2016年は、SAP HANAのPaaS版で「SAP HANA Cloud Platform」を国内で本格展開するとしている。これはCloud FoundryをベースとしたPaaSのアプリ開発プラットフォームで、大企業からスタートアップ企業まで幅広い顧客が低コストで利用できる。Developersエディションは無償、Starterエディションが月額500ドル台と、高額な「HANA」のイメージを覆す戦略的価格で提供している。また、2016年には国内データセンターを開設する予定だとしている。

 

SAP HANA Cloud Platformのコックピット画面
SAP HANA Cloud Platform
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URL http://go.sap.com/japan/product/technology-platform/hana-cloud-platform.html

2016年3月9日 株式会社クラウディット 中井雅也

機能

 Cloud Foundryをベースとしたインメモリー方式のPaaSが提供する包括的な機能(モバイル、ソーシャル、統合、アナリティクス)により、クラウドネイティブなアプリや、既存のオンプレミスのエンタープライズシステムと連携したアプリを迅速に開発できる。SAP HANA Cloud Platform Cockpitと呼ばれるポータル画面からアプリの開発やデータベースなどのサービスの設定を行うことができる。
 アプリの開発は、一般的にはJava、HTML5を使い、HANAの分析モデルには、SAP HANA XS (SAP HANA Extended Application Services)というアプリケーションサーバ機能を使う。開発環境は、SAPによるWeb IDE、あるいは、人気の高いEclipseのようなIDEが使える。また、Gitリポジトリによるソースコード管理が可能。
 データベースはHANAもしくはASEが利用できる。
 モバイルサービスにより、複数の認証方法、オンプレミス型およびクラウド型システムへの安全なアクセス、オフライン同期、リモートログイン管理、データ取得、自動更新、プッシュ通知などの機能を提供。
 ポータルサービスにより、安全性と拡張性に優れた魅力的なビジネスサイトを素早く作成して公開が可能。モバイル対応のWebサイトを展開できるほか、既存のビジネスプロセスのカバー範囲を仕入先、卸売業者、顧客などの社外にまで容易に拡張することが可能。
 高度な分析ツール群により、データの調査とビジュアル化を実行できる。リアルタイムの予測分析を活用して地理空間情報の調査やテキスト分析などが可能。
 統合サービスにより、クラウドとオンプレミスのエンタープライズシステムをシームレスに連携させ、ビジネスプロセス、データソース、アプリケーションを横断するアプリを開発可能。Cloud Connector と Gateway により、クラウドアプリからオンプレミスのSAPアプリケーションに連携が可能。
 IDサービスにより、ユーザーが任意のデバイスで、どこからでも業務システムにログインできる。SAPのIDサービスは、最新の認証メカニズム、安全なシングルサインオン機能、オンプレミス統合を提供し、従業員、顧客、パートナーに対し、ユーザー登録やパスワードリセットなどのセルフサービス機能を提供することも可能。
 最新のユーザーインターフェース(UI)テクノロジーにより、デスクトップPC向けとモバイルデバイス向けのアプリ開発が可能。軽量なHTML5、Java、CSSベースのUIの開発を統合して、Webアプリケーションの構築・展開や既存のSAP Fioriアプリの拡張が短期間で行える。

使いやすさ

SAP HANA Cloud Platform Cockpitと呼ばれるポータル画面からアプリの開発やデータベースなどのサービスの設定を行うことができる。ただし2016年3月の時点では画面は英語である。オープンソースのPaaSソフトウェア「Cloud Foundry」をベースとしているが、同じくCloud FoundryベースのIBM Bluemixなどに比較してCloud Foundryを感じさせない操作性である。

マニュアルや書籍など

SAPによって、さまざまなWebページやドキュメントが提供されている。開発者ドキュメントは主に英語である。チュートリアルなどは日本語で提供されているものもある。

拡張性

データベースのサービスでは、HANAのCPUが最大80コア、メモリーが最大1TB、ディスクが最大10TB。ASEのCPUが最大16コア、メモリーが最大64GB、ディスクが最大640GB。アプリケーションのサービスでは、コンピュートユニットが最大6、ストレージが最大400GB。現時点で高可用性やスケーリングの機能についての詳細は明らかにされていない

可用性

現時点で高可用性やスケーリングの機能についての詳細は明らかにされていない

SLA

月間の稼働率(Availability)が99.9%というSLAが定められている。

自動化機能

基本的にマネージドサービスとして提供されている。しかしながら、バックアップなどはユーザーが設定する必要がある。

セキュリティ

アプリケーションサービスは、ISO 27001、SAS 70 Type II、ISAE 3402 などの各種セキュリティ基準を満たしている。HANAのデータは認証によって保護され、顧客ごとにVLANが割り当てられる。

データセンターの場所

米国東部と西部、および、ヨーロッパ、オーストラリアのデータセンターからサービスを提供している異様できる機能。2016年には国内のデータセンターを開設するという

実績・シェアなど

SAPのWebで、事例として、NFL、Danone、Timken Company、ハンブルグ港湾局、三菱ふそう社などを紹介している。

エコシステム

SAP HANA Cloud Platformにおいては、SAP PartnerEdgeプログラム、および、無償のDevelopersエディションによって開発者のエコシステムの強化を図っている。

価格および支払い方法

開発者用の「Developers」エディションは無償。本番環境用の「Extentions」エディションは月額1337ドル。エディションによって、使用できるリソースの量と機能が決まる。