クラウド図鑑 Vol.8

概要

CRM(顧客関係管理)およびSFA(営業支援)のSaaSのトップベンダーである米セールスフォース・ドットコムが提供するPlatform as a Service(PaaS)のサービスがSalesforce1 Platformである。SaaSほどに認知されてはいないが、セールスフォースは、PaaS市場もリードしている。IDC Japanの2014年11月10日の発表によれば、2013年の国内市PaaS場規模は前年同期比42.4%増の254億3800万円となり、ベンダーシェアは1位がセールスフォース、2位がアマゾン、3位がマイクロソフト、4位がグーグルだった。セールスフォースのCRMおよびSFAのSaaSである「Sales Cloud」などのアプリケーション基盤を、そのまま独自プログラミング言語APEXで利用できるようにしたPaaSサービスが、2007年に発表したForce.comである。そしてセールスフォースは2010年にRubyやJavaなどの一般的なプログラミング言語が利用できる汎用PaaSを提供していたHerokuを買収し、Force.comとあわせて、Salesforce1 Platformとして提供している。2015年6月の時点でForce.comとHerokuは連携は可能だが統合はされていない。Force.comはセールスフォースのデータセンターで運用されているが、HerokuはAWS上で運用されており、性質の異なる2つのPaaSとして使い分ける必要がある。セールスフォースによれば、Force.comは内部の社員向けアプリケーションの開発に最適化されており、Herokuは社外の顧客向けアプリケーションに向いているとのことであるが、実際にはプログラミング環境とプラットフォームの特性に応じて使い分けるべきで、Force.comはエンタープライズ、Herokuはクラウドアプリを得意とする。

Force.comの画面
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URL  http://www.salesforce.com/salesforce1/

2015年6月9日 株式会社クラウディット 中井雅也

機能

アプリケーションが利用するデータベースやフレームワークなどのミドルウェアのサービス(PaaS)と、利用者が意識することは少ないがバックグラウンドで仮想マシンやストレージなどのインフラのサービス(IaaS)と、これらを制御するリソース管理やアプリケーション実行管理の機能を提供する。プログラミング言語はHerokuでは、Rubyを中心にNode.js、Java, Pythonなど、Force.comではJavaによく似た独自言語APEXでの開発となる。データベースは、HerokuではPostgreSQLが標準で、Force.comでは抽象化されたOracleをSOQL(Salesforce Object Query Language)という独自のSQLでアクセスする。Herokuの特徴的な機能としてSNS連携があり、特にFacebookとの相性の良さには定評がある。また2015年には人気の高いコンテナー技術Dockerに対応した。ログの確認やパフォーマンスのモニタリング、データベースのバックアップといった運用をサポートする機能も含まれている。Force.comの特徴的な機能としては、マウス操作による開発や、ワークフロー、BIなどエンタープライズのビジネスアプリケーション機能が充実している。

使いやすさ

Force.comの画面はわかりやすく、開発部門以外のスタッフでも開発に参加できるよう設計されている。画面、マニュアル、チュートリアル、ビデオなどは日本語化されていて、習熟するために特に英語は必要ない。一方で、Herokuは2015年6月時点ではサイトもマニュアルも日本語化されていない。本来HerokuはRuby on Railsで開発したWebアプリケーションに対してスケーラブルな実行環境を提供するホスティングサービスであったため、エンタープライズを強く指向するForce.comとはコンセプトが異なることを理解する必要がある。HerokuではWebアプリケーションのために便利なアドオンが約140種類用意されていて開発者が開発に注力しやすい。

マニュアルや書籍など

Force.comでは豊富なマニュアルやチュートリアルなどのドキュメントやビデオが用意されている。日本語化されているものも多い。Herokuも豊富なドキュメントがあるが日本語化はされていない。

拡張性

Force.comはセールスフォースのインフラをそのまま使っており、数十万人以上に利用されているシステムのインフラは、「インスタンス」と呼ばれるリソースの集合体を分割したり負荷をバランスして処理能力を拡張している(ただし、これを利用者が意識することはない)。HerokuはAWSのインフラで稼働しており、全体として、2014年の時点では1日50億/1秒90000のリクエストを処理しているといわれていた。Herokuはスケールアウトを容易にできることが最大の特徴であり、独自のコンテナーであるDynoの数を増やすことでアプリケーションの処理能力を拡張する。

可用性

Force.comでは他のセールスフォースのサービス同様にOracle RACやRed Hat Enterprise Linuxなど、信頼性の高いインフラ上でアプリケーションを稼働させることができる。アプリケーションやシステム拡張やマイグレーションなどはデータセンター側で行っており、利用者が意識することはあまりないが、メンテナンスは定期的に実施されている。データはセンター内でミラーリングされ、グローバルの拠点間で複製される。Herokuはクラウド的なアーキテクチャを基本としており、設定で容易にスケールアウトできる。また、データベースに関してはAWSのRDSのような独立のPaaS(DB as a Service)であるHeroku Postgresを用意しており、高可用性のオプションで障害発生時にはスタンバイデータベースに自動的にフェールオーバーが行われる。

SLA

Force.comでは2015年5月時点でSLAはないが、稼働率は99.9%を達成しているという。HerokuにおいてもSLAはない。

自動化機能

Force.comはAPIにより外部プログラムからの操作や連携が可能。ただしAPIの使用が制限されることがあるのは注意する必要がある。HerokuもPlatform APIやコマンドを駆使することによってアプリケーションの開発や実行のプロセスを自動化可能。

セキュリティ

Force.comはセールスフォースによる毎年数十億円規模のセキュリティへの投資の恩恵を享受できる。高度な設備を持つデータセンターで稼働するシステムは複数社で共有する「テナント」で論理的に隔離されている。Web経由の通信はすべて暗号化される(HTTPS)。ISO27001を取得済みで、SSOE SOC1,2,3監査報告書の提出や総務省 asp・saasの安全・信頼性に係る情報開示指針に基づく情報公開も可能。Herokuでは、アプリケーションは、それぞれ専用の「コンテナー」で隔離され、プロセスやメモリー、ファイルシステムは他のアプリケーションから分離される。通信トラフィックは基本的に暗号化される(HTTPS)。またHeroku Postgresにおいてデータ暗号化のオプションを選択可能。

データセンターの場所

Force.comはセールスフォースの他サービス同様に、北米、ヨーロッパ、日本にデータセンターがある。HerokuはAWSの北米およびヨーロッパのリージョンを選択可能である。

実績・シェアなど

IDC Japanの2014年11月10日の発表によれば、2013年の国内PaaS市場規模は前年同期比42.4%増の254億3800万円となり、ベンダーシェアは1位がセールスフォース、2位がアマゾン、3位がマイクロソフト、4位がグーグルだった。Force.com上で開発されたアプリケーションは40万以上あり、Herokuも10万以上のアプリケーションをホストしているという。

エコシステム

セールスフォースはApp Exchangeで2000以上のソリューションを公開している。またコンサルティングや販売のパートナーも数百社以上ある。Herokuもアドオンを中心に独特のエコシステムを持っており、特にRubyの開発者コミュニティとは親和性が高い。

価格および支払い方法

Force.comはユーザーあたりの月額料金での課金となる。支払いは請求書、クレジットカードなど。エントリー価格で月額3000円から。
HerokuはメモリーやCPUなどリソースによる課金となり、稼働時間などの成約があるがエントリ用に無料という設定がある。支払いはクレジットカードかデビットカードを使用できる。