クラウド図鑑 Vol.7

概要

IBM SoftLayerはIBMが提供するIaaSのサービスで、仮想サーバー、ストレージ、ネットワーク、さらに最大の特徴といえる物理サーバー(ベアメタル)などを従量課金で提供する。IBM全体としては、SoftLayer上のPaaSとしてBlueMix、さらにコグノスのようなアプリケーションをSaaSとして提供するなど幅広いクラウドサービスのメニューを持っている。2013年のIBMによる買収以前は、SoftLayer Technologyとしてホスティングサービスを中心に2005年に創業しており、米国では「AWS、RackSpace、SoftLayer」が3大クラウドプロバイダとして認知されていた。これを2013年7月に、IBMがCAMSと表現する“Cloud、Analytics、Mobile、Social、Security”といった新たな注力分野に取り組む一環として、20億ドル規模の大型買収を行った。ベアメタルと呼ばれる物理サーバーの提供や、標準料金に含まれるテクニカルサポートなど他クラウドと比較してエンタープライズ指向の強いクラウドサービスとなっている。

SoftLayerのコンソール

Screenshot 2015-06-05 at 12.36.42(クリックで拡大)

URL  http://www.ibm.com/cloud-computing/jp/ja/softlayer.html
2015年6月7日 株式会社クラウディット 中井雅也

機能

SoftLayerはサーバーを中心として、それに付随するネットワーク、ストレージなどのインフラを提供するIaaSのサービスである。仮想サーバーだけでなく、物理サーバーを専有して利用できるベアメタルサーバーを提供する。ストレージもオブジェクトストレージだけでなく、SAN(iSCSI)やNASも提供している。ネットワークでもロードバランサーの専有が可能であり、パフォーマンスやセキュリティの要件から仮想リソースの共有を避けたい場合でも専有リソースで対応できる。これにより、VMwareの仮想化環境やOpenStackによるクラウド環境をSoftLayer上に構築することも可能である。また、ネットワークの無料枠がサーバー料金に含まれており、SoftLayer内部での通信は無料、外部との通信もインバウンド(インターネットからSoftLayer)は無料、アウトバウンド(SoftLayerからインターネット)は有料だが、ベアメタル1台あたり20テラバイト、仮想サーバー1台あたり5テラバイトまでは、あらかじめ含まれており通常の企業での利用ではネットワーク費用がかからないことが多いと思われる。また10Gbpsのグローバルネットワークで接続されたデータセンターを跨いだ通信も無料であるため、災害対策やバックアップのような使い方の敷居を低くしている。

使いやすさ

コンソール画面から各種リソースの作成・設定・起動・終了などを行うことができる。しかしながら2015年6月時点ではコンソールは日本語化されていない。これを補うであろう日本語によるテクニカルサポートがSoftLayerの料金に含まれており、管理ポータルからチャットで担当者に問い合わせたり、電話で相談したりできる。問い合わせ件数に制限はない。サポート対応は24時間だが、日本語による対応は午前9時から午後5時までとなる。また、SoftLayerで利用するための「業界業務プロファイル」が用意されており、30種類以上の業界別・業務別にアプリケーションを構築・運用に必要なサーバ要件、ネットワーク設定、セキュリティ対応などの構成パターンと、サーバ運用やバックアップ運用、監視体制などの運用パターンを標準化・モデル化しており、短期間での構築と運用、保守コストの低減を支援する。

マニュアルや書籍など

デザインパターンやコンフィグレーションガイド、ユースケースなどのドキュメントが多数用意されている。ただし2015年6月時点では日本語化されてないものも多い。しかし上述したように料金の中に日本語対応可能なテクニカルサポートが標準で組み込まれており、通常の構築や設定には英語力は必須ではないと思われる。

拡張性

2014年12月の東京のデータセンター開設時にサーバー15000台を準備していると発表しているように日本だけでも大きなリソースを保有していると考えられる。さらにグローバルのデータセンターを40拠点にまで拡大中で、しかも上述したようにグローバルの10Gbpsのネットワークが無料枠で使えることから拠点を跨いだ拡張がしやすい。自動スケールはルールなども含めてコンソールから設定が可能。なお、SoftLayerの特徴であるベアメタルサーバーのプロビジョニングには数時間を要するので、瞬時の拡張が必要なケースでは仮想サーバーを選択すべきである。

可用性

上述したようにグローバルのデータセンター拠点間を接続する10Gbpsのネットワークを無料枠で利用できるため、グローバルな冗長構成やデータ複製を利用して可用性や業務継続性を高めることができる。Linuxのクラスタリングソフトの構成ガイドなどが提供されておりHAクラスターを構成することができる。SoftLayerでは物理サーバーやSAN/NASのストレージが選べるため、オンプレミス環境での冗長構成をクラウド上に持ち込みやすい。

SLA

SoftLayerは、パブリックネットワーク、プライベートネットワーク、カスタマーポータル、データセンターの空調設備について、サービスレベル契約(SLA)で100%の稼働時間を保証しており、30分以上連続してダウンした場合は使用料金が割り引かれる。インスタンスの稼働時間に関しては保証していない。
ハードウェアのアップグレードに必要な時間を2時間以内と規定しており、これを超えると使用料金が割り引かれる。

自動化機能

SoftLayer 環境のすべての機能は、SoftLayer Customer Portal を通して利用可能である上に API からもアクセスすることができる。SoftLayer API は広範にわたっており、呼び出し可能な API の数は 3,400 を超えPerl、PHP、Python、Rubyなどのプログラミング言語によって処理の自動化が可能。

セキュリティ

全データセンターがSSAE16による内部統制の認証基準を満たしており、高い物理セキュリティで運用されている。ネットワークセキュリティに関しても、VLANによる隔離や VPNに加え、脆弱性のスキャンやウィルス対策用のソフトウェアの提供、ファイアウォールやIPSによる外部からの攻撃への対策などを講じている。ISO 27001、FISMA、HIPAA、Safe Harbor、SOC 1、SOC 2、CSA などのコンプライアンス基準を満たしている。また、仮想リソースの共用に対してセキュリティの懸念が払拭できない場合には、専有の物理サーバーに加えて、専有のSANストレージなどを選択できる。

データセンターの場所

IBMは12億ドルを投入して、SoftLayerのデータセンター拠点を、グローバルで40箇所に拡張することを2014年に発表し、北米、ヨーロッパ、アジアの主要拠点にデータセンターを展開し、現在も拡張を続けている。この一環で2014年12月に東京データセンターを開設した。

実績・シェアなど

グローバルで25000以上、日本でも1000社以上がSoftLayerを利用しているとのことである。

エコシステム

現在エコシステムを拡大中であり、日本IBMによればパートナーは160社。米IBMはポータルページ「IBM Cloud marketplace」を開設して同社やサードパーティのクラウドサービスをセルフサービスを購入できるようにしている。

価格および支払い方法

基本的に従量課金だが、ネットワークの無料枠が大きいため、通常の企業での使用では費用を固定化しやすい。
物理サーバー  Xeon 3460 2GB RAMの場合で月額$149~
仮想サーバー  1Core + 1GB RAM + 25GB Local Storageの場合 $0.040〜/時間、$27.60~/月
データ転送料金は、インターネットからのInboundデータ転送は無料。インターネットへのOutboundデータ転送は、物理専有サーバーの場合、月間20TBまで無料。仮想サーバーの場合は5TBまで無料。
それを越えた場合、1GBあたり$0.10の料金。
SoftLayerの各データセンター間のデータ転送(プライベートネットワークを利用)は無料。
支払い方法は、クレジットカード、請求書払いが選べる。