クラウド図鑑 Vol.46

SORACOMは、元AWSの玉川憲氏が2015年3月に設立した日本のスタートアップ企業である。2015年9月30日に、IoTおよびモバイルに特化したSIMを含む通信プラットフォーム「SORACOM Air」を発表して話題を呼んでいる。物理的に目に見えるSIMカード「Air SIM」はAmazonで購入できることもあって、ひときわ注目されてしまうが、「SORACOM Air」全体は、通信の管理/監視、課金などの機能を含むクラウドベースの通信プラットフォームでもある。Webの管理コンソール、あるいは、APIによって、SIMの通信の停止、再開、速度のコントロールや、日次/月次などの通信量のコントロールと監視が可能である。これらのコントロール機能と従量課金(最小で1MBあたり0.2円+基本料1日10円+契約事務手数料580円)によって、通信量の少ないIoT用途では通信料金を削減可能だ。SIMからの通信はNTTドコモのLTE/3Gの回線基地局/通信網を使うが、送受信するデータはAWS上にSORACOMが実装したクラウドサービスを経由することで、このような管理/監視機能を利用者/事業者に提供する。利用者の多くはIoTのようなシステム全体のサービスを提供する事業者だと思われるが、SIMカードからキャリアの通信回線/インフラと、そのコントロールのプラットフォームまでを必要なときに小さい初期投資で手に入れることができる。現在、SORACOMは新機能・新サービスを続々と追加中であるが、これらは「機能」の欄で紹介する。

SORACOMの管理コンソール
SORACOM
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URL  https://soracom.jp/
2016年2月10日 株式会社クラウディット 中井雅也

機能

 SIMカードの「Air SIM」はナノ/マイクロ/標準の3サイズのラインアップで、データ通信(SNSあり)とデータ通信(SNSなし)の2タイプがある。同じSIMでLTEと3Gに対応する。このSIMカードはSORACOMから直販、およびAmazonでもオンラインで販売している。
 「SORACOM Air」は、このSIMカードも含めた管理/監視機能を含むプラットフォームを提供し、Webコンソール、またはAPIを通じてプログラムから通信サービスをコントロールすることができる。「SIM管理」の画面から、使用開始、停止、状態の確認、速度クラスや有効期限の変更などを複数SIMに一括で設定できる。「監視」の画面から、通信量などのしきい値が越えたときのメール通知の設定やす通信料の制限、「課金情報」から請求予定額や過去の請求履歴の確認、「セキュリティ」からユーザーやロール、認証情報の設定などができる。APIを使えば、使用方法にあわせて、料金の安い夜間は通信速度を上げる、あるいは、昼間にはSIMを一時停止させるといった、きめ細かいコントロールによって通信費用を最適化できる。
 現在ベータのサービスであるが、IoTのような非力なデバイスでは負担が重い暗号化処理を、SORACOMのサーバーリソースで肩代わりするのが「SORACOM Beam」だ。これにより、SIMからSORACOMのサービスを経由して、その先にあるサーバーなどとのインターネット経由の通信の暗号化によってセキュリティを高めやすくなる。HTTPからHTTPS、MQTTからMQTTS、TCPからTCPSなどのプロトコル変換に対応している。
 現在、限定プレビューのサービスであるが、SORACOMのプラットフォームと、AWS上にある利用者/事業者のシステムの直接通信をするのが「SORACOM Canal」だ。AWSの仮想プライベートクラウド(Amazon Virtual Private Cloud)上のSORACOMのシステムと、AWS仮想プライベートクラウド(Amazon Virtual Private Cloud)上の利用者/事業者のシステムを「VPCピアリング」という機能で閉域接続し、インターネットを介するセキュリティのリスクを軽減できる。
 現在、限定プレビューのサービスであるが、SORACOMのプラットフォームと、利用者/事業者のシステムを専用線で接続するのが「SORACOM Direct」だ。これは、AWSの「Direct Connect」という専用線接続サービスを利用し、東京または大阪にある接続ポイントからAWSクラウドに接続する。
 現在ベータのサービスであるが、SORACOMが認証プロバイダーとしてサービスを提供し、SIMを使用したデバイス認証をWi-Fiなどの通信に用いることができるようにするのが「SORACOM Endorse」だ。
 現在ベータのサービスであるが、SIMからSORACOMのサービスを経由して、特定のクラウドサービスの「アダプタ」を経由して接続するのが「SORACOM Funnel」だ。2016年2月時点では、「Amazon Kinesis」「Amazon Kinesis Firehose」「Microsoft Azure Event Hubs」の3つのサービスに対応し、プロトコルはHTTP、TCP、UDPに対応している。

使いやすさ

日本語化されたWebコンソールから、グラフィカルに設定・操作が可能

マニュアルや書籍など

スタートアップ企業ながら開発者サイトのコンテンツは豊富で、チュートリアルやAPIリファレンス、主要なIoTクラウド(AWS IoT/IBM IoT Foundation/Azure Event Hubs)などとの接続方法などのドキュメントが用意されている。もちろん基本的に日本語である。

拡張性

SORACOMはAWSを熟知しており、詳細は公開されていないが、インフラであるAWSのクラウドの利点を活用した拡張性を考慮して、サービスが実装されていると思われる。

可用性

SORACOMはAWSを熟知しており、詳細は公開されていないが、インフラであるAWSのクラウドの利点を活用した可用性を考慮して、サービスが実装されていると思われる。

SLA

2016年2月時点でSLAは定義されていない。

自動化機能

SORACOMのサービスはAPIでプログラムからの利用と自動化が可能。サービス全体もマネージドサービスとして提供されており、インフラの管理を意識することはない

セキュリティ

「機能」の欄で紹介したように、暗号化や、AWS内部での直接接続、専用線での接続など、IoTのセキュリティをエンドトゥエンドで強化するためのオプションサービスを開発している

データセンターの場所

AWSの東京リージョンからサービスを提供している。

 

実績・シェアなど

SORACOMのサイトで、インフォミックスの太陽光発電遠隔監視システム「てるてるモニタ」、内田洋行の「百葉箱システム」、キヤノンの事務器での実証実験、東急ハンズの業務システムのバックアップ回線としての検証、フォトシンスのスマートロックシステム「Akerun Remote」、Global Mobility Serviceの遠隔通信制御装置、WHILLのパーソナルモビリティなどの事例が紹介されている。

エコシステム

2015年10月にパートナープログラム「SORACOMパートナースペース」を発表し、デバイス、ソリューション、システムインテグレータのエコシステムを拡大している。

価格および支払い方法

基本的に従量課金でクレジットカードでの決済となる。データ通信の料金が最小で1MBあたり0.2円〜、基本料1日10円〜、契約事務手数料580円〜となる。1年間の無料枠が用意されている。