クラウド図鑑 Vol.42

Microsoftは、強みであるオンプレミスのWindowsのインストールベースとAzureのクラウドを連携させるハイブリッドなクラウドソリューションを展開している。災害や緊急事態が発生した時に、オンプレミスのITリソースをAzureのクラウドで復旧しサービスを継続するBCPおよびディザスターリカバリーのソリューションが、2014年10月に提供開始した「Azure Site Recovery」である。これは、オンプレミスのHyper-V仮想環境上の仮想マシンをAzureのクラウド上にレプリケーションする技術を基本としていたが、米国時間2016年1月11日の機能拡張の発表により、オンプレミスのVMware仮想環境上の仮想マシン、および、物理サーバーのディザスターリカバリーと移行が正式に可能になった。これにより、かつては、遠隔地のデータセンターに高価なハードウェアやソフトウェアを一式準備する必要があったディザスタリカバリー環境の敷居が格段に低いものになる。一方、オンプレミスのデータを、従来のテープのかわりにクラウドのストレージを使ってバックアップするソリューションが、2014年から提供している「Azure Backup」である。その後、機能拡張を重ねて、さまざまなWindowsサーバー/クライアントのファイル、アプリケーション、仮想マシンのイメージをバックアップを可能にして、最長99年最大54TBまでデータを保管できるという。Azure Site Recovery、Azure Backup、ともに、オンプレミスのデータセンターが使用不能になった場合でも、オフサイトでのシステム復旧、データ復旧を簡単かつ低価格で実現するソリューションであり、これまで大企業やミッションクリティカルなシステムなどに限定されていた遠隔地でのディザスターリカバリーの敷居を低くして事業継続性を高めることが可能である。

Azure Site Recoveryの操作ビデオ(英語)

(クリックで再生)

URL
https://azure.microsoft.com/ja-jp/services/backup/
https://azure.microsoft.com/ja-jp/services/site-recovery/
2016年1月13日 株式会社クラウディット 中井雅也

機能

 「Azure Site Recovery」は、オンプレミスに対するAzureのクラウドでの障害復旧、および、オンプレミス(主サイト)に対してオンプレミス(別サイト)での障害復旧と保護を可能にする
 障害復旧と保護の対象となるのは、Hyper-V上の仮想マシン、Vmware上の仮想マシン、Windows または Linux を実行する物理サーバーで、Azure上の仮想マシンへのデータレプリケーションを自動的に行う。レプリケーションの頻度はHyper-Vでは30秒、5分、15分で、VMwareと物理サーバーでは継続的に行われる。
 レプリケートするデータは、Azureのストレージに直接転送および保存される。したがってレプリケートのための仮想マシンは必要ない。Azureのストレージサービスによる、地理冗長の可用性オプションを利用できる。
 ゲストオペレーティングシステムは、オンプレミスからAzureの場合は、 Azure でサポートされているすべてのゲスト オペレーティング システムをサポート、オンプレミスからオンプレミスの場合は、Hyper-V でサポートされるゲスト オペレーティング システムをサポートする。 
 フェールオーバーとフェールバックは自動ではないが、ポータルから簡単な操作で行える。テストのためのフェールオーバー、計画されたフェールオーバー、計画されていないフェールオーバーが可能。
 Active Directory、DNS、SharePoint、Exchange、SAP、Dynamics AXなどのアプリケーションの保護が可能である。現在はプレビューの機能になるが、今後期待されるのはSQL ServerのAlwaysOn機能とAzure Site Recoveryの統合である。これにより、SQL Serverを Azure またはセカンダリ データセンターで保護し、Azure またはセカンダリ データセンターにレプリケートおよびフェールオーバーすることが可能になる。
 Azure Site Recoveryは、障害復旧を主な目的としているが、予期しないトラフィック増加に対してオンプレミスからクラウドにリソースを拡張する、あるいは、オンプレミスとクラウド間での開発環境と本番環境の切り替え、VMwareからAzureへのマイグレーションなど様々な用途で利用できる。なお、保護する仮想マシンには制約もあるのでドキュメントやサポートに確認が必要である。
 「Azure Backup」は、従来の磁気テープを用いたバックアップのかわりに、Azure上のストレージサービスにデータを転送し、最長で99年間、最大で54TBのデータ保存を行う。
 バックアップ データは、Geo レプリケーションされたストレージに格納。このストレージでは、2 つの Azure データセンター全体で 6 つのデータのコピーを保持する。
 バックアップの対象は、Windows Server 2012/2008などのサーバーOSとWindows 10/8などのクライアントOSで、詳しくはこちらを参照
 Windowsのファイル/フォルダ、および、System Center Data Protection Manager (SCDPM)と連携して、Hyper-V仮想マシンのイメージ、SQL Server、Exchange、SharePointのデータのバックアップが可能。初期バックアップ以降は差分データだけをバックアップする。
 バックアップの頻度は、Windows Server/Client で 1 日に 3 回、SCDPM で 1 日に 2 回、IaaS VM で 1 日 1 回のバックアップ コピーが可能。
 バックアップされるすべてのデータは、転送前に圧縮され、暗号化される。バックアップされるデータの種類によっては、30 ~ 40% 圧縮されることが期待できるという。
 バックアップからの復旧の回数に制限はなく、復旧のための送信トラフィックに対しても課金はない。

使いやすさ

Azure Site Recovery、Azure Backup、ともに、日本語化されたAzureポータルのグラフィカルなインタフェースによって導入・設定ができる。バックアップするクライアントの設定も、Windowsアプリのインタフェースによってグラフィカルに操作できる。

マニュアルや書籍など

Microsoftによって主要な情報、設定などのドキュメントの多くは日本語で提供されている。ただし、頻繁に行われる最新の拡張機能の部分は日本語化されるまで少し時間がかかる。

拡張性

Azure Site Recovery では、データ ディスク (VHD) のサイズは最大1TB 。Azure Backupのデータバックアップのデータ量は最大54TB。

可用性

Azure Site Recovery、Azure Backup、ともにAzureのストレージサービスを基盤とすることで高い可用性を実現する 。Geo冗長のストレージによって、地理的に離れた2 つの Azure データセンターを使用して、6 つのデータのコピーを保持し、高いレベルのデータ可用性を実現する。

SLA

Azure Site Recovery サービスの保護された各インスタンスについて、99.9% の可用性を保証。Azure Backupのサービスは99.9%の可用性を保証。

自動化機能

Azure Site Recovery、Azure Backup、ともに初期設定を済ませれば、データの転送やバックアップ作業などは自動的に行われる。Site Recoveryは、REST API、Powershell、Azure SDKなどでカスタマイズが可能で、自動化ライブラリによって、運用環境で使えるアプリケーション固有のスクリプトを提供している。また、両サービスともにマネージドサービスとして提供され、サービスの管理や運用はMicrosoftによって行われ、利用者が意識することはない。

セキュリティ

Azure Site Recoveryでは、オンプレミスのサイト間で仮想マシンと物理サーバーをレプリケートする場合には、転送中の暗号化をサポートし、オンプレミスのサイトと Azure 間で仮想マシンと物理サーバーをレプリケートする場合には、転送中の暗号化と Azure での暗号化の両方をサポートする。Azure Backupでは、Azure に送信されるデータは、暗号化された状態で保存される。

データセンターの場所

Azure Site Recovery、Azure Backup、ともに、東日本、西日本を含む、米国、ヨーロッパ、アジアの主要リージョンからサービスが提供されている

実績・シェアなど

MicrosoftのWebサイトで、Azure Site Recoveryの実績として、United Airlines、Paul Smith株式会社フタバなどが紹介されている。

エコシステム

Azure Site Recovery、Azure Backup、ともにAzureのエコシステムのSIパートナーによって構築などのサービスが提供されている。

価格および支払い方法

日本のリージョンの場合で、オンプレミスからAzure への Site Recovery は最初の31日間は無料で、以降は保護する仮想マシンにつき 5,508円/月。オンプレミスからオンプレミス への Site Recovery は最初の31日間は無料で、以降は保護する仮想マシンにつき 1,632円/月。Azureでは、上記料金の他にStorageストレージ トランザクション送信データ転送に対する料金が発生する。 vSphere で実行中のインスタンスでは、これらの料金に加え、マスター ターゲットと構成サーバのセットアップについて、追加の Azure コンピューティングの料金が発生する。
Azure Backupは保護するインスタンスのデータ量に応じた課金体系で、最大 50GB までのデータを持つインスタンスの場合で、保護するインスタンスごとに 510円/月 + 使用したストレージの料金、50GB から 500GB の場合で、保護するインスタンスごとに ¥1,020 + 使用したストレージの料金、以降500GB ごとに ¥1,020 ずつ増加 + 使用したストレージ料金が必要になる。