クラウド図鑑 Vol.41

PayPalは、ITと金融を融合する「FinTech」の先駆的な企業である。設立は1998年で、現在テスラモーターズのCEOであるイーロン・マスクが共同設立者の一人だった。PayPalは、2002年に米国のネット通販/オークションサイト大手の「eBay」に買収され、同社の決済機能を担う子会社として事業を拡大し、現在は世界で200以上の国/地域と20以上の通貨に対応し、アカウント数が2億を越えるオンライン決済で最大級のサービスとなった。PayPalは2015年7月に米ナスダック市場に上場し、2016年1月時点での時価総額は424億ドル(約5兆1000億円)で、eBayの時価総額317億ドル(約3兆8000億円)を上回っている。PayPalのサービスの利点は、ビジネス面では、取引者間でクレジットカード番号を知らせる必要がなく、決済コストが割安といったことがあるが、技術面でも、APIやモバイルSDKによって柔軟なシステム連携が容易に実現できるため、世界の多くの通販サイトやアプリケーションがPayPalに対応している。見方を変えると、PayPalは決済サービスをAPIから利用できるクラウドであり、特にスタートアップ企業やグローバルビジネスのためによく考えられたサービスになっている。なお、PayPalは2011年から「OpenStack」によるITインフラストラクチャを導入しており、アジャイル開発を取り入れるなど、技術面でも業界をリードする存在といえるだろう。

PayPalの画面
paypal
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URL https://www.paypal.com
2016年1月6日 株式会社クラウディット 中井雅也

機能

 PayPalの中心となる機能は決済サービスである。PayPalにアカウントを開設し、クレジットカードを登録すると、個人用の「パーソナルアカウント」であれば即座に支払いができるようになる。支払いを受けるには、個人用の「プレミアアカウント」にアップグレード、または、法人用の「ビジネスアカウント」を開設する必要があり、本人確認と、ビジネスの場合は会社の確認を行う。
 支払いは、PayPalのサイトの画面から対話式に行うこともできるが、通販サイトなどの画面と連動するための「今すぐ購入ボタン」や「ショッピングカート」を提供する「ウェブペイメントスタンダード」機能や、プログラムから連携するためのAPIによる「エクスプレスチェックアウト」機能、またモバイルSDKなども用意されている。またサイトがなくても「メール決済」の機能で顧客に支払い請求を送れば、顧客はクリックするだけで支払いができる。このメール決済による「請求書」の作成機能を提供している。
 支払いにおいては、PayPalにカードと住所情報が事前に登録されているので、初めて訪れるサイトでも、繰り返しカード情報や住所を入力する必要がなく、PayPal IDとパスワードの入力のみで済む。20以上の複数の通貨に対応しており、売り手も買い手も任意の通貨を選択できる。
 バイヤープロテクション(買い手保護プログラム)により、商品が届かない、または説明と著しく異なる場合は、購入代金全額が返金される。また、セラープロテクション(売り手保護プログラム)により、買い手からの不当なクレーム、返金、キャンセルなどに対して、保護対象となる取引を保護する。「問題解決センター」により、問題のある取引をPayPalが多国語で対応する。
 取引履歴の検索とダウンロード、税務書類や損益などのレポートが作成できる。また消費税や配送料を設定することができる
 開発者が決済サービスの動作確認ができるテスト環境として、「Sandbox」を提供する。 テスト用の「Buyer(買い手)」アカウントと、「Seller(売り手)」アカウントを作成し、サービスの導入から、決済の流れまで、自由にシミュレーションすることができる。APIに関しては、従来から提供していたNVP/SOAP APIとREST APIがあるが、REST APIでは日本で使えない機能があるため、現時点ではNVP/SOAP APIが基本となる。
 スマートフォンやタブレット端末に接続することでクレジットカード決済を行える「PayPal Here」のサービスを提供していたが、2016年1月31日で終了すると発表した。

使いやすさ

PayPalの画面や機能は日本語に対応しており簡単に支払いや各種の設定ができる。「今すぐ購入ボタン」や「ショッピングカート」の機能は、サイトのHTMLに埋め込むだけで利用が可能

マニュアルや書籍など

PayPalによって主要な情報は日本語で提供されている。ただし開発者用ドキュメントは英語のものが多い。開発ツールを公開しているサイトからサンプルコードをダウンロードすることもできる

拡張性

年間で取引金額2350億ドル、40億の取引件数を処理するプラットフォームを提供しており、拡張性や処理能力をユーザーが意識することはない。

可用性

高可用性のためのデザインなどをユーザーが意識することはないが、ネット通販/オークションサイト大手の「eBay」で要求される高いレベルの可用性を実現している。

SLA

特にSLAはない。

自動化機能

APIによりサービスを自動化できる。

セキュリティ

PayPalは不正防止のために様々な取り組みを行っている。全ての取引データを蓄積し、いわゆるビッグデータ分析でパターン検知を行い不正取引を予測し、発見する。最先端技術に加えて、1,000人を超えるスタッフが、取引を精査し安全確保に尽力している。重要な情報は全て暗号化する。クライアントとの通信はキー長168ビットのSSLで暗号化し、個人情報は漏洩のないように物理的にも電子的にも強固に守られたPayPalのデータセンターのサーバーに保管している。運用環境およびステージング環境で Web サービスを呼び出すには、アクセス キーによる認証を行う

データセンターの場所

2013年に4番目のデータセンター開設を発表したが、場所は公表されていない。

実績・シェアなど

2014年度に、年間で取引金額2350億ドル、40億の取引件数。

エコシステム

PayPalのサイトで紹介されているだけでも150以上のECサービスプロバイダーやアプリケーションがPayPalに対応している。モバイルSDKによってスマートフォンのアプリなども拡大している。

価格および支払い方法

取引あたり2.9%-3.6%+40円の手数料がショップなどの売り手に課金される。手数料のレートは月間取引額に応じて決定される。初期費用や会員費などはない。