クラウド図鑑 Vol.38

Microsoft は、2014年9月に、モバイル機器や組み込み機器のための新OS「Windows 10 IoT」を発表し、「UWP (Universal Windows Platform)」を提唱している。2015年3月に、AzureによるIoTの接続とデータ蓄積や分析などのバックエンドのサービス「Azure IoT Suite」を発表し、「Window 10 IoT」との組み合わせによるIoT戦略を打ち出している。現時点でAzure IoT Suiteはプレビューとされているが、構成要素は「Azure Event Hubs」、「Azure DocumentDB」、「Azure Stream Analytics」、「Azure Notification Hubs」、「Azure Machine Learning」、「Azure HDInsight」、「Microsoft Power BI」などの既存のサービスである。これらの多くは、「Azureのビッグデータサービス」の構成要素でもあり、既にAzureの東京リージョンで利用できる。さらにMicrosoftは、2015年9月に、数百万のIoT機器とバックエンドサービスを、HTTP、AMQP、MQTTなどの通信プロトコルで安全に接続するための「Azure IoT Hub」をプレビューとして提供し、している。2016年2月3日から正式提供を開始した。

マイクロソフトの IoTビジョン の動画 (日本マイクロソフト)


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https://www.microsoft.com/ja-jp/server-cloud/products-Microsoft-Azure-IoT-Service.aspx
2015年12月16日 2016年2月8日改訂 株式会社クラウディット 中井雅也
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機能

 現時点(2015年12月)のAzureの日本語の公式Webサイトの情報によれば、「Azure IoT Suite」を構成するのは、「Azure Event Hubs」、「Azure DocumentDB」、「Azure Stream Analytics」、「Azure Notification Hubs」、「Azure Machine Learning」、「Azure HDInsight」、「Microsoft Power BI」である。Azure Notification Hubsは、iOSやAndroid、Windowsなどのモバイル端末へのプッシュ通知のバックエンドサービスであるが、それ以外のサービスは、「Azureのビッグデータサービス」の構成要素であるため、リンクを参照していただきたい。概要としては、IoT機器から取り込んだデータを「Azure Stream Analytics」でリアルタイムに分析・処理を行い、NoSQLの「Azure DocumentDB」あるいは「Azure HDInsight」のHadoop環境に蓄積し、MapReduceやSparkによる処理・分析を行い、「Azure Machine Learning」による機械学習や予測分析、「Microsoft Power BI」によって、エンドユーザーによる分析を可能にする。
 2015年9月には、「Azure IoT Hub」をプレビューとして提供し、している。2016年2月3日から正式提供を開始した。これにより、数百万規模のデバイスとAzureバックエンドとの間で MQTT または HTTP、AMQP プロトコルを介して接続、認証しメッセージ交換ができるとしている。IoT Hubに接続するクライアントプログラムは、Visual Studioを使って、C、Node.js、Java などのプログラミング言語で開発できる。また、IoT機器を接続するための SDK、ライブラリ、ツールはすべて、オープン ソースとして GitHub で公開されており、IntelのEdisonやRasberry PI、Linux、TI RTOSなどに幅広く対応し、近年のMicrosoftらしいオープンなサービスとなっている。
 Azure IoT Suiteの枠組みの外になるが、「Windows 10 IoT」は、従来のWindows Embeddedの後継製品でもあり、POSやATMなど比較的大きいIoT機器のための「Enterprise」エディション、業務用のモバイル端末のための「Mobile Enterprise」エディション、ドローンやゲートウェイなど小型IoT機器のための「Core/Core Pro」エディションの3種類が用意されている。

使いやすさ

他のAzureのサービス同様に、日本語化されたグラフィカルなコンソールからの操作となり、簡単にサービスを利用開始できる。また、アプリの開発は、Visual Studioから、通常のWindowsアプリの開発をするのと同様の方法で行える。

マニュアルや書籍など

既存のサービスについては、Microsoftによって豊富なマニュアルやチュートリアル、リファレンスアーキテクチャなどのドキュメントが用意されている。新規のIoT Hubなどのサービスについては、まだ整備中の段階だと思われるが、既に相応の量の情報が提供されている。

拡張性

バックエンドの分析系のサービスについては、「Azureのビッグデータサービス」を、ストレージ系のサービスについては、「Azureのストレージサービス」をデータベース系のサービスについては、「Azureのデータベースサービス」を参照していただきたい。また、新規のIoT Hubのサービスは、現在プレビューであり、2016年2月に正式提供が始まったばかりであり、これから性能や拡張性が明らかにされると考えられる。

可用性

バックエンドの分析系のサービスについては、「Azureのビッグデータサービス」を、ストレージ系のサービスについては、「Azureのストレージサービス」をデータベース系のサービスについては、「Azureのデータベースサービス」を参照していただきたい。いずれにしても、Azureのサービスとして高いレベルの可用性を実現するように考慮されていると思われる

SLA

HDInsight、Stream AnalyticsのSLAは月間稼働率99.9%。IoT Hubは、2015年12月現在ではベータ版のサービスであり、SLAは明らかにされていない。複数インスタンスからの接続性をSLAで99.9%保証 (Guaranteed 99.9% connectivity for multiple instances)。

自動化機能

Azureの他サービスと同様にAPIによる自動化が可能。また、HDInsight、Stream Analyticsなどはマネージドサービスとして提供されており、管理はMicrosoftによって行われ運用タスクも自動化される。

セキュリティ

IoT Hubではデバイスごとの認証および保護された接続でセキュリティを高めている。各デバイスを独自のセキュリティ キーを使用してプロビジョニングして、IoT Hub に接続する。IoT Hub ID レジストリには、デバイスの ID とキーが保存される。ソリューション バック エンドで個々のデバイスのホワイト リストおよびブラックリストを保持し、デバイスへのアクセスを制御する。

データセンターの場所

Azure は、北米、南米、ヨーロッパ、日本と中国を含むアジアなど、グローバルの19  22リージョンにわたるデータセンターで稼働しており、場所を指定することができる。日本でも東日本と西日本にデータセンターがある。最新のサービスは北米から展開されることが多いので、使用したいリージョンでサービスが提供されているかチェックする必要がある。HDInsight、Stream Analytics、Event Hubsは日本でサービスを提供している。2015年12月時点でIoT Hubは、北米、ヨーロッパ、アジアでの提供となっており、日本のリージョンでは未提供である。

実績・シェアなど

2015年12月現在ではプレビューのサービスであったが、Azure IoTの国内導入事例は竹中工務店がある。

エコシステム

2015年12月現在ではプレビューのサービスであり、明確にはなっていないが、Azureのエコシステムを活用できると予想される。また、「Azure Certified for IoT」 のプログラムによりパートナーを拡大していく。

価格および支払い方法

従量課金で、日本円での支払いも可能、またクレジットカード以外にも請求書払いも可能。HDInsightは、1コア/1.75GBメモリー/70GBストレージの汎用ノードのエントリーレベルの価格が9.69円/時間(東日本リージョン)から。Streaming Analyticsは、処理データ1GBあたり0.11円と処理1時間あたり3.17円(東日本リージョン)。Event Hubsは、処理イベント100万あたり2.86円と処理1時間あたり1.53円〜(東日本リージョン)。IoT Hubはプレビューでは、最大 10 台までのデバイスに接続でき、1 日あたり合計 3,000 メッセージまでは無料(Freeエディション)、最大 500 台までのデバイスを接続するか、すべてのデバイスでの合計で 1 日に最大 50,000 メッセージまでは2550円(低頻度エディション)、最大 500 台までのデバイスを接続するか、1 日に最大 150 万メッセージまでは 25500円(高頻度エディション)となっていたが、正式提供に伴い価格変更され、2016年4月1日以降は、1日最大8000メッセージまで主にテスト用途で無料(Freeエディション)、1 日に最大 400,000 メッセージまでは5100円(S1エディション)、1 日に最大 600 万メッセージまでは 51000円(S2エディション)となる