クラウド図鑑 Vol.1

概要
Amazon Web Services(AWS)は、Amazon.com により提供されるクラウドコンピューティングサービスである。現在のエンタープライズ向けのクラウドコンピューティングの市場のリーダーであり、デファクト標準といっても過言ではない。AWSの歴史は長く2006年からサービスを提供開始しており、シェアも現在トップだと考えられる。
米Amazon.comが発表した2015年4月の第1四半期(1~3月)の決算では、同四半期のAWSの売上高は前年同期比49%増の15億7000万ドルで、純利益は8%増の2億6500万ドルで、ジェフ・ベゾスCEOは発表文で、「AWSは50億ドル規模の事業であり、急成長中だ」と語った。ちなみに米Microsoftの決算発表によれば、同社のAzureやOffice 365などを含むクラウド事業の規模を63億ドルとしている。

AWSの日本語コンソール
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URL   http://aws.amazon.com/jp/
2015年5月20日 株式会社クラウディット 中井雅也

機能
AWS全体では仮想マシン、ネットワーク、ストレージなどのインフラのサービス(IaaS)と、データベースなどのミドルウェアのサービス(PaaS)を提供する。これらの各種サービスはHTTPを通じ、REST および SOAP プロトコルを使用してアクセスされ、費用は実際の使用量に応じて決定される。AWSは2015年5月の時点で40種類以上のサービスを提供している。仮想サーバーのサービス「EC2」をはじめとして、ブロックストレージのサービス「EBS」、オブジェクトストレージのサービス「S3」リレーショナルデータベースの「RDS」、データウェアハウスのサービス「Redshift」など多彩なサービスを必要に応じて組み合わせて即座に利用できる。

使いやすさ
日本語化されたAWSコンソールから各種リソースの作成・設定・起動・終了などを行うことができる。ドキュメントも豊富に用意されている。しかしながら、AWSの高機能なサービスを使いこなすには独自の設計思想や用語の習得を含めて、相応のIT知識が必要である。各種の導入や設定を軽減する仕組みとしては、あらかじめOSやアプリケーションを事前導入・設定したイメージファイル「AMI(Amazon Machine Image)」を使用する方法、あるいはプログラムで各種設定や操作を自動化する方法などがある。

マニュアルや書籍など
AWSによって豊富なマニュアルやチュートリアル、リファレンスアーキテクチャなどのドキュメントが用意されている。また、書籍も多く出版されている。

拡張性
巨大なリソースを保有しているため大規模なWebサイトやビッグデータ処理などを必要に応じた規模で構成することができる。メモリーやCPUなどリソースの拡張によるスケールアップが可能。不足リソースをスケールアウト的に追加することは容易。負荷状況にあわせてロードバランサーでスケールアウトを自動化するAuto Scalingの機能がある。

可用性
AWSは世界の11拠点(リージョン)で運用されているが、各リージョンは複数のデータセンター群で構成される。このデータセンターをAvailability Zone(AZ)という考え方によって複数組み合わせることで、可用性が向上し、災害対策時のバックアップサイトなども比較的低価格で実現できる。AZは地理的、電源的、ネットワーク的に分離され、地震や洪水なども考慮されている。AZ間は高速な専用線で相互接続されている。例えばストレージサービスのS3はデフォルトで3つのAZを使うように設計されており、データは3拠点に分散して保持される。2015年5月現在では世界で28のAZを展開している。しかしながらライブマイグレーションの機能は提供されておらず、高可用性が求められるシステムでは複数のAZ間で冗長構成をするか、AWSに対応したクラスターソフトウェアを組み合わせる必要がある。単一障害点となりやすいデータベースではAWSのRDSで複数AZ間でフェイルオーバーの機能が利用できる。

SLA
サービスによってSLAがあるものとないものがあり、規定も異なる。
EC2およびRDSは月間使用可能時間が99.95%未満になると請求金額が割り引かれる。
S3およびCloudfrontは月間使用可能時間が99.9%未満になると請求金額が割り引かれる。

自動化機能
APIによってプログラムからインフラをコントロールすることが可能であり、さまざまな処理の自動化が可能。

セキュリティ
「共有責任モデル」により、AWSと利用者の2者でセキュリティを確保するという考え方をとっている。AWSはファシリティ、ネットワーク、物理セキュリティ、仮想インフラ、物理インフラに責任を持ち、OSから上は利用者の責任となる。AWSのインフラは、最新の電子監視システムや多要素アクセス制御システムを搭載し、訓練を受けた監視スタッフが24時間体制で配備されたデータセンター内にある。ISO 27001、SOC、PCI Data Security Standard、Australian Signals Directorate (ASD) Information Security Manual、および Singapore Multi-Tier Cloud Security Standard (MTCS SS 584) を含む、さまざまなグローバルセキュリティ基準へのコンプライアンスを達成。第三者の監査人が作成したレポートおよび認定書をリクエストすることができる。日本の金融機関のシステム構築の指針となるFISC安全対策基準への取り組み状況も公開している。

データセンターの場所
リージョンという形でデータセンターの場所を指定することができる。2011年に東京リージョンが開設されて日本のユーザーの利用が拡大した。東京以外ではUS(バージニア、オレゴンなど)、EU(アイルランド、フランクフルト)、アジア(シンガポール、シドニー)な1112リージョンから任意のリージョンを選択することができる。AWSはデータセンターの拡張を続けており、2016年1月には韓国リージョンが利用できるようになった。

実績・シェアなど
AWS自体がアマゾンのシステムの基盤となっており、ネット企業やエンターテイメント関連の利用が多いが、上述したような可用性やセキュリティを理由にエンタープライズでの利用も進んでいる。国内企業もNTTドコモなど20000社以上が導入しているという。
米Synergy Research Groupによる2016年第3四半期におけるワールドワイドのクラウドのシェアの調査結果では、IaaSではAWSが首位でシェアは45%で、2位はMicrosoft、3位Google、4位IBM、また、PaaSにおいてもAWSはシェアトップで、2位はSalesforce.com、3位Microsoft、4位IBMとなっている。

エコシステム
現時点でクラウド業界で随一のエコシステムを構築しているといえるだろう。特にオラクルやSAPなど著名なエンタープライズ向けのソフトウェアを始めとして、AWS上で正式にサポートされる商用ソフトウェアは数多い。このような商用ソフトウェアをクラウド上で利用する場合は、AWSは安全な選択肢となる。またAWS専業のクラウドインテグレーターも数多く、大手ITベンダーやシステムインテグレーターも多くがAWSに対応している。

価格および支払い方法
従量課金で時間単位の課金が可能となっている。またデータ転送でも課金が発生する。このため料金体系は複雑で事前の予測が難しい。1年または3年間の契約「リザーブドインスタンス」による割引がある。価格はサービスごと、またリージョンによっても異なるが、基本的にUSドルでのクレジットカード決済となる。過去に十数回の値下げを行っており、クラウド市場のプライスリーダーでもある。1年間使える無料利用枠が用意されておりトライアルの敷居を低くしている。
参考価格としては、エントリーレベルのEC2 t2.microインスタンス (1VCPU/1GBメモリー)で東京リージョンの場合$0.020/1 時間。