クラウド図鑑 Vol.29

米Virtustream (バーチャストリーム) は2009年設立のベンチャー企業で、ホスティング型プライベートクラウド(Hosted Private Cloud)のIaaSサービスを提供する。これは、AWSのようなパブリッククラウドと異なり、SAPやOracleのようなエンタープライズアプリケーションのワークロードに的を絞ったクラウドである。VMwareの「vCloud Air」、CenturyLinkの「Private Cloud」、HPの「Helion Managed Cloud」、IBMが買収した「Blue Box」などが、このカテゴリーの主なプレイヤーであり、エンタープライズアプリケーションのクラウド化のために、いかにリソースを分離してSLAやセキュリティ、性能を保証できるか、そして既存システムからの移行性や互換性などがポイントとなる。VirtustreamはSAPの投資を受けていたが、2015年5月にEMCによって12億ドルで買収された。そして、2015年10月にDellによるEMCの買収が発表され、今後の展開が注目される。2015年10月21日にはEMCとVMwareによる合弁会社として「Virutustream」の設立を発表し、VirtuatreamのIaaS、VMware vCloud Air、EMCのストレージサービスなどを統合するとしている。
(2015年12月17日追記) しかし、その後の発表では、VMwareは、この合弁会社の設立から撤退する意向だと伝えられている
Virtustreamの顧客はThe Coca-Cola Company、Domino Sugar、Heinz、Hess Corporation、Lexmark、Scotts Miracle-Gro、Kawasaki Motors Corpなど200社以上とのことである。きめ細かいリソース管理を実現する「μVM(マイクロVM)」テクノロジーを提供する「xStream」という統合管理ソフトウェアがVirtustreamの強みであり、Forrester Wave Hosted Private Cloud, 4Q ‘14レポートでは、この分野のリーダーとされている。2015年2月に、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)がVirtustreamとの提携を発表し、2015年10月にCTC、SAPジャパン、Virtustreamの3社で、Virtustreamの技術をベースにして基幹系システムに特化したクラウドサービス「CUVICmc2(キュービックエムシーツー)」を2016年4月から提供することを発表した。

VirtustreamのxStreamポータル画面

(クリックで動画再生)

http://www.virtustream.com/cloud-iaas/enterprise-class-cloud
2015年10月23日 株式会社クラウディット 中井雅也

機能

VirtustreamのIaaSサービス「Virtustream Enterprise-Class Cloud」は、同社の統合管理ソフトウェア「xStream」を基盤として、データセンターからプライベートクラウドの仮想マシン、仮想ストレージ、仮想ネットワークのリソースプールを提供する。ターゲットとしているワークロードはSAP、Oracle、Microsoft Dynamics、Exchange、Sharepoint、Lotus Notesのようなエンタープライズアプリケーションである。特徴は、アプリケーションのレベルで最大99.999%のSLAを、性能も含めて保証することである。そして、「μVM(マイクロVM)」テクノロジーによって、従来のVM単位より細かい単位の実リソース消費に対して課金を行い費用を最大50%削減する。なお、μVMはいわゆるVMというよりもリソース管理の技術であり、VMware ESXiやKVMのようなハイパーバイザーと組み合わせて利用する。さらにセキュリティに関しても、アプリケーションやデータをゾーンで分離し、ファイアウォールやIDS/IPSの統合やストレージの暗号化などで強化している。仮想マシン、ストレージ、ネットワークはHA構成されており、バックアップやディザスタリカバリも統合されている。ポータル画面でオンデマンドでのリソースのプロビジョニングやモニタリングができる。AWSのEC2/S3互換のAPIでプログラムでリソースをコントロールすることもできる。なお、xStreamをオンプレミスやVirtustream以外のクラウドに導入してハイブリッドクラウドを構成することも可能である。

使いやすさ

ポータル画面でオンデマンドでのリソースのプロビジョニングやモニタリングができる。ただし画面は全て英語である。

マニュアルや書籍など

ドキュメントは多くなく、全て英語である。

拡張性

拡張性よりは性能にフォーカスしていると思われ、2013年のSpectator Reportによれば、600MB/秒以上のディスク性能、2600MB/秒以上のファイルシステム性能、7.5Gbps以上のネットワーク性能、300マイクロ秒以下のネットワーク遅延となっている。200社以上の顧客を有していて、SAPのエンタープライズアプリケーションを稼働させているユースケースが多いため、エンタープライズレベルの拡張性は問題ないと考えられる。アプリケーションインスタンスやメモリーを追加するBurstingという機能が提供されている。

可用性

VM、および、データセンターのフェールオーバーが可能。VMが同一リソースプール内でフェールオーバーできない場合は、別のデータセンターのリソースプールでフェールオーバーする。バックアップとディザスタリカバリが統合されており、オペレーションもマネージドサービスとして提供可能。

SLA

アプリケーションのレベルで最大99.999%のSLAを性能も含めて保証する。

自動化機能

xStreamの機能によって、管理のオペレーションをワークフローも含めて自動化できる。Amazon EC2/S3互換のAPIでプログラムからインフラをコントロールできる。デフォルトではハイパーバイザーまでのマネージドサービスだが、オプションでデータベースやアプリケーションもマネージドサービスとして提供可能。

セキュリティ

アプリケーションやデータをゾーンで分離し、ファイアウォールやIDS/IPSの統合やストレージの暗号化などで強化している。継続的なセキュリティ管理、イベントのモニタリング、監査が可能。インテルのTXT(Trusted Execution Technology)にも対応している。SSAE16, ISAE3402, PCI-DSS 2.0, FISMA, IS0 27001-2005, ISO 9001-2008, HIPAA/HITECなどに準拠している。

データセンターの場所

北米で3ヶ所、ヨーロッパで2ヶ所のデータセンターを有する。日本およびアジアにデータセンターはない。

実績・シェアなど

海外で200社の実績があるThe Coca-Cola Company、Domino Sugar、Heinz、Hess Corporation、Lexmark、Scotts Miracle-Gro、Kawasaki Motors Corpなど。

エコシステム

ターゲットとしているSAPやOracle、マイクロソフトと連携しているが、特にSAPとの関係が強い。

価格および支払い方法

料金は公表されていない。